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45-3

 窺う様な菫の眼差しに、ランティスの灰青のそれが重なる。面白そうに三日月に細められた双眸で、小首を傾げた。



「当たり前だろう」


「じゃ、ちゃんと守る気はあるのね」


「俺はそのつもり…だが」



 言葉尻を濁した相手に、怪訝な表情を浮かべる。



「だが?」


「そう素直に守らせてくれる女じゃないからな」



 何かを思い出したのか、またくっくと喉を鳴らした。隣に立つアーデルは、紅茶が入ったポットを手に、未だ困惑顔だ。

 どういうことだと無言で続きを促すと、二杯目が残るカップを、書類が積み上げられた卓上の隅へ無造作に置いてから、ランティスが言った。



「あいつな、毎朝窓から抜け出して、庭で武術の訓練してるんだわ」


「はぁ?」


「しかも、部屋、二階だぜ。目の前の木を伝って登ったり下りたりしてる。すげぇだろ」



 さも楽し気に話すランティスだったが、聞いている二人は唖然である。流石に目を丸くしたアンリは、同じく青の双眸を真ん丸に見開いたアーデルを見やった。彼は口もぽかんと丸く開いている。


 それは、と呟いた。



「…凄いわね…」



 脳裏に、先日会った少女の姿を思い出す。


 黒髪に赤茶の瞳。物静かと言うよりは、目の前に広がるあれこれに興味なさげな様子だった彼女。似合わない色のドレスを着せられ、それすらもどうでもよさそうに、黙って座っていた。

 気難しいのかと思ったが、話してみれば、存外素直で。

 きっと彼女も、汚れた嘘を口にする性質ではないと、好感を持った。言葉を振られれば、きちんと考え、丁寧に返事をくれた少女。

 真っすぐに、目を見て話す娘だった。



(大人しそう…とは思わなかったが)



 まさか武術訓練とは…。



「その…武芸を嗜まれる女性なのですか?」



 おずおずとアーデルが問う。椅子に深く腰掛けなおした王弟殿下は、おう、と明るく答えた。

 目を白黒させている補佐官に同情した。見たこともない相手の情報過多で頭の中は酷く混乱していることだろう。可哀想に、と亜麻色の前髪をかき上げた。



「そういえば」と思いだして呟く。



「ユリウスの誕生パーティーは、出席するのよね」



 同じく学生時代からの友人の名を上げ尋ねた。


 楽し気に部下をからかって遊ぶ男は、視線を友人へ投げると、一度灰青の眼を瞬かせた。一瞬震えた瞳。けれど、その変化にアンリが気づくことはなかった。


 にんまりと、満面にランティスが笑う。



「当たり前だろ。ちなみに、そこでルーヴァベルトは社交界デビューだ」


「やっぱり」


「あ、気付いてた?」


「あんたがやりそうなことだもの」


「はっは」


「はっは、じゃないわよ」



 何度目かわからぬため息をついた。

 そうして、もう一人の友を思う。彼もまた、アンリにとって、大切な友人。



(さぁて)



 額を押さえるふりをして、表情を伏せた。眉を顰め、菫の双眸を閉じる。

 どうなるかしら…と、心の内で独りごちた。


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