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「元気出して下さい、ルーヴァベルト様! 旦那様がどんだけ女癖悪くても、正式に婚約者になってしまえばルーヴァベルト様の勝ちですから! 他のご令嬢が横槍入れてきたって、蹴散らしてやりましょう!」

 

 

 突然頓珍漢な励ましをしてきたマリーウェザーを、ちらと見上げため息をついた。

 

 

「あー…あの人がどこで女と遊んできても、どうでもいいっす…」

 

「え? そこで凹んでたわけじゃないんですか?」

 

「いや、いっそ性欲は全部外で発散してきてくれって気持ち…」

 

 

 ついでに跡継ぎも作ってきてくれ、と半ば本気で考えた。

 

 

 仮にこの結婚話が制式に進んで、正真正銘ルーヴァベルトがランの妻になったとしても、大丈夫、余所でこさえてきた子供をいびるなんて狭量なことはしない。

 息子であれば跡継ぎとして育てるし、娘であればどこに出しても問題ないご令嬢として育てるだろう。多分、ジーニアス辺りが。

 

 ルーヴァベルトの肩は、兄とばあやと三人の衣食住がかかっている。子供をいじめてそれがおじゃんになるなど、もっての他だ。

 

 今後、あの男の寵愛を巡って、他の女とやり合う未来もとうてい想像ができない。愛人同士がやり合うことは考えられるので、そこはきっちりしておいて欲しいけれど。

 

 

(そうだ、さりげなくかつ早々に何人でも外に愛人囲ってくれて構わないと伝えてしまおう)

 

 

 それが妙案だと感じてしまう程度には、ルーヴァベルトの頭は疲れていた。

 

 

 ぼんやり視線を宙で彷徨わせている姿に、メイド二人は顔を見合わせる。ミモザの隣に並んだマリーウェザーは、そっと耳打ちした。

 

 

「え、何、旦那様、そんなに嫌われてるの?」

 

「さぁ」

 

「だって、何なのこの反応。旦那様、どんなアプローチしたのよ」

 

「私の口からは何とも」

 

 

 先程彼女が言った通り、主人であるランが「勝手に見初めて、素性調べて、手に入れるために罠を張って、逃げられないように追い込む」をそのままやってのけたことを、マリーウェザーは知らない。やりかねない、とわかっていても、普段女とは綺麗に遊ぶ主人が、まさかそんなやり方でルーヴァベルトを手に入れたとは思っていないだろう。

 知れば、好奇心旺盛な彼女の事だ。わけのわからないおせっかいを焼きかねない。

 気のいい同僚だが、思い込んで突っ走る所があるのは悪い癖だ。ルーヴァベルトのことを考えると、しばらくはそっとしておいてやりたいと思う。

 

 不服そうに唇を尖らせた同僚を無視し、一歩前に出た。

 

 

「ルーヴァベルト様」名前を呼ぶと、虚ろな視線がミモザに向けられる。

 

 

「落ち着かれましたら、エヴァラント様がお会いになりたいと仰られていました」

 

 

 途端、黒髪の少女が跳ね起きた。先程までの無気力さはどうしたのだと言う程に、赤茶の瞳に感情が浮かぶ。

 

 

「兄貴が?」

 

 

 眉を顰め、唇を引き結んだ。「帰ってたんですか」

 

 唸るような口調に、きわめて平坦な声で返した。

 

 

「先程、こちらにご案内する前に言付かりました。ルーヴァベルト様のご用事が済んでからで構わない、とのことでしたので」

 

「連れてってください」

 

 

 颯爽と立ち上がると、ぐいとミモザの顔を覗き込む。強い口調に、マリーウェザーが息を飲むのがわかった。

 

 

 くるりとした猫目の中に、自分が映り込んでいるのを見とめると、ミモザは綺麗に微笑み、是と頷いた。


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