楽しいダンジョン攻略
ちょうど今からダンジョンに下ろうというパーティーを見つけ、それに同行させて貰うことにした。
編成は、前衛に俺と戦士職の男、後衛に魔術師の女。それと狩人の男の4人。
負傷者に備えてサポート役の神官がいれば攻略が断然楽になるのだが、まず冒険者になろうという神官などいない。いても真似事の神官くずれが関の山だ。
本職ならば治癒術の精度も良いのだが、教会の聖務に忙しいらしく今までお目に掛かったことはない。
最後に、装備のチェックを済ませる。
動きやすさ重視の軽装。アイテムポーチに薬とマッピングの為の製図道具。武器は小回りの効く短剣と、投げナイフ3本。
心許ないだろうが、武器はダンジョン内にある遺品を調達すればなんとかなる。経費削減と余計な荷物を持ち込まない方が探索に集中出来ると判断してのことだ。
そしてやってきたダンジョン内部。
じめじめと湿り気を帯びた空気は、死人どもには好条件な環境らしい。数歩進むたびにスケルトンやグールが暗闇から飛び出してくる。
適当にいなしながら依頼分の討伐をこなすと、そこからはダンジョン内のマッピングに集中する。
地形の急激な変化はないが、たまに横穴が増えていたりと迷いやすい構造になっているから、正確な地図はあった方が格段に探索の難易度は下がる。
「君らは、今日はどこまで潜るつもりだ?」
「3階でグールを数匹狩ったら戻るつもりだけど」
「この人数でたったそれだけか?」
「仕方ねえだろ。受けられる依頼がこれくらいしか残ってねえんだから。もっと稼げるなら俺らも稼ぎてえっての」
マッピングをしながら歩を進める俺の隣で、前衛を務めている男は面白くなさそうに愚痴をこぼした。
どうやらこいつらも、そこらの有象無象と同じく金目当てか。だったら利用できるかもしれない。
「提案があるんだが」
「……提案?」
「稼げる話だ。好きなんだろう、そういうのは」
「そうだけど、なんだよ」
「今から俺はこのパーティーを抜ける」
「はあ?」
足を止めて、開口一番。俺の発言に、男は素っ頓狂な声を上げた。自分でもおかしな提案だと思うが、目的を果たすには今はこれが最善だ。
「俺が君らを雇う。そして、いけるところまで護衛してもらう。報酬は金貨100枚。それと俺の依頼受注書も渡す。依頼報酬と合わせて金貨110枚。安くはない筈だ」
金貨の入った袋を取り出して、3人の前で交渉する。
彼らは顔を見合わせて少し相談したあと、パーティーリーダーを務める戦士の男がゴーサインを出した。
上手くいったようだ。
戦闘は極力彼らに任せて、俺は体力を温存。これ以上は進めないと言われたらそこで契約解消。
そこからはソロでの攻略となる。
3階に着くと、グールを数体狩ってそこからは最下層を目指して進んでいく。
俺がソロで足を踏み入れたのは、この3階までだ。これ以降は慎重に進まなくてはいけない。
丁寧にマッピングをしながら綽々と歩を進めて行くと、4階まで繋がる階段前まで辿り着いた。