呪いの仮面
ダンジョンマスターの転移魔法で地上に降り立った俺は、早速街へと向かった。
ミルを保護するにしても居場所が分からない状態ではどうしようもない。情報が集まりそうな場所へ出向いて聞き込みをしなければ。
魔物の情報を得るなら冒険者ギルドだ。
向かうと、ロビーは人で溢れかえっていた。ドラゴンの目撃情報はそれほど冒険者を焚き付けるらしい。
それもそうだ。ドラゴンスレイヤーなんて肩書きを手に入れればそれは英雄と同義。討伐できれば知名度も実力も一度に手に入ってしまう。
思っていたよりも状況は悪いみたいだ。幸い、冒険者も依頼がなければ討伐しようとは思わないようで、今のところドラゴンが何かしらの被害を出したという報告はない。人間に害があると判断されれば討伐依頼にも上がるのだろうが、それがないので行き場のない冒険者どもがこうしてギルドに入り浸っている、という状況みたいだ。
多少なりとも猶予があるのは、俺にとっても好都合。
冒険者ギルドを後にして、武具の新調に向かう。
武器屋で軽鎧一式と、武器にショートソードを調達する。
装備については些か心許ないが、俺が正面からやり合ったところでどんな上物を使っても勝算は薄い。だったら初めから奇襲一択で仕掛けるべきだ。そのための動きやすい軽鎧と使い勝手の良いショートソードを選択した。
武器屋を出てすぐの大通りの路地裏に露店が開いていた。興味本位でふらっと立ち寄ってみる。
どうやら古くさい骨董品やら、年代物のアンティーク等を扱う店のようだ。金持ちなら欲しがりそうだが、余裕のない下流階級の人間どもには見向きもされないだろう。
適当に流し見していると、ふとあるものが気になった。
「オヤジ、これは?」
「お客さん、それに目を付けるとは奇特な方だねえ」
奇抜な文様をした仮面だとは思う。おどろおどろしいというか、人前で被るには向いていないことは一目で分かるくらいには趣味が悪い。
「何か曰く付きの代物なのか?」
「魔術師連中が言うには、なんでも呪われているらしい」
「呪いの仮面か」
「詳しくは知らないが、魔法を使うには向かないだとかなんとか言うとったなあ」
なるほど、デバフ効果のある呪物なのか。
幸い、俺は魔法を使わない。というよりは向いていないのだろう。素養がないのだ。備えあれば憂いなしと言うし一通りの基礎的な魔法は昔に覚えたのだが、威力がないので子供のお遊びみたいなものだ。とても実戦で使えるような代物ではなかった。
だから、呪いの仮面といっても俺にとっては効果なんて無いに等しい。
ちょうど素性を隠したいと思っていたところだ。
ミルを保護するに当たって、冒険者どもの妨害はあるとみて良いだろう。あの子に手を出すというのなら一切の容赦はしない。危害を加えるのなら慈悲の欠片なく殺すつもりだ。
けれどそうなった場合、顔を見られたら非常にまずい。ダンジョン内ならいざ知らず、地上で殺人を犯すとなると牢獄に放り込まれかねない。
というわけで、見繕った武器防具の他に曰く付きの仮面を露天商から購入した。外套を纏い、仮面を嵌めてフードを被る。ここまですれば、素性がバレることはないだろう。逆に目立ってしまう気もするが、街を出てしまえば誰も気にしない。
大方の準備は済んだ。後はミルの居場所だが、これについては聞き回らなくても自然と耳に入ってきた。
目的地は東の森だ。




