夢の世界のルール
「ありがとうございます。あっ!他の部屋には、入っていないですよ。玄関を通って、趣味の部屋に入って、転生の部屋に入りましたから」
悪魔的にかわいい笑顔だけど、あっ!これを小悪魔って言うのか。しかし、やってることは、どうなんだろう。分からん。
「信じるよ。しかし、なぜ、転生の部屋に?」
「タカさんの心に占める割合が一番大きかったからです。すべてのドアを見比べてください」
言われて見てみると、確かに転生の部屋のドアが1番大きく、次にマンガの部屋が大きい。そして、人生啓発、歴史と続く。
「大きさが、その人の心の比重を示しているのかい?」
「はい。つまり、タカさんの場合、玄関を入って、すぐに趣味の部屋のドアが目に留まりました。そして、それを開けると、次は、読書の部屋のドアが目についたんです。そして、ここに来ると、転生の部屋が1番大きかったので」
「なるほど。確かに、そうかもしれない」
1日のほとんどを仕事に費やしてはいる。だが、俺の人生は、趣味が主体かもしれない。
「だいぶ、分かってきた。さらに、色々教えてもらえるかな?」
「ええ、そのために来ましたから。では、続けます。夢の世界には、全人類が、いえ、全生物がいます。しかし、渡り人になる条件というか、状況は、いくつか判明しています」
「まず、夢の中だと自覚していること。そして、ある日突然なるということ。あっ!支部長の声は、違いますよ。支部長さんに、渡り人にする能力はありません。あれは、毎日この辺りに住んでいる人、全員に流しているんです。その中で、渡り人になった人だけが、その声を覚えています。覚えているという反応があるので、渡り人になった人が判明するんです。ここまでは、いいですか」
「うん。聞きたいこともあるけど、分かります」
「何が聞きたいんですか?」
「反応しただけで、なぜ、リカさんは、俺の世界に来ることができたの?まぁ、現実世界で面識があったみたいだけど、ない人だっているだろうし、どうやっているのか?」
「それは、家の外に出れば分かりますし、説明もしやすいです。ので、今は、ごめんなさい」
「あぁ、後で説明してもらえるなら、いいよ。ごめんね。話の腰を折って。続けて」
「はい。ありがとうございます」
ええ子や、この子。今の所で、感謝を伝えるのがいい。卑屈になって、謝られるのは、こっちも辛いんだよね。
「顔や体型ですが、基本は、現実世界と同じです。でも、訓練によって変えることも可能です」
「ええ!マジ?」
それは、夢が膨らむ。
「はい。例えば、私は、鳥になれます」
「やってみて!見たい」
「はい」
リカさんは、1歩下がると、軽く地面を蹴ってバク宙のような動きをすると、途中で、尾羽が美しい鳥になった。白が主体で、ピンクが入っている。鳥になってもかわいいな、このやろ~。
「すごい」
陳腐な感想しか出てこないが、本当に人が変身する姿を見ると、感動する。鳥になったリカさんは、頭上を2、3回飛び回ると、元の姿に戻った。元に戻る時は、鳥の体が光って、人間になった。
「すごいね。本当に、夢の世界であることが感じられる。それにしても、キレイな鳥だったけど、何て鳥なの?」
「ありがとうございます。あの鳥は、現実世界にはいません。と思います。なんせ、私の想像ですから」
微笑みながら答える彼女のほっぺたに目がいく。
う~ん。ここ5年くらい、仕事に追われて、家と職場の往復で、女の子に触れていないから、女子の笑顔が心に刺さってくる。
それだけで、気持ちが動くわけではないけれど、ちょっとまぶしいな。
「ちなみに、私は、自分の姿を加工していませんよ」
その可能性があったか。この世界ならば、自分が憧れの俳優にだって、なりすますことができるのだ。
「変身のための訓練は、どれくらいかかるの?」
「どうでしょうね?人によるので、何とも言えません。明日には、訓練学校に案内しますので、そこで、学んでください」
「へー、訓練学校なんてあるの?」
「ええ、でも、今日は、私が先生になって、タカさんに教えます」
不思議なことを言う。今、まさに教えてもらっている最中だが、、
「どういうこと?」
「知識ではなく、力です。この夢の世界は、あくまで夢の世界なのです。だから、想像することさえできれば、どんなことだってできます。だから、最初にしなければならないことは、自分の心を守ることです。ここが、攻撃されないように、誰かに盗み見られたり、聞かれたりしないように、ガードします。防御と言ってもいいです。なんせ、タカさんの思う守りで、守りましょう。ただ、その時、私が消滅したり、外にはじき出されないように、お願いしますね」
「えっ?いきなり、難易度高くないかい?」
「大丈夫ですよ。自分と私以外、あっ!今は、ってことですよ。自分と私以外は、俺の心に入れないって思ってもらえれば、最低限の守りは完成します。なんせ、ここはタカさんの世界ですからね。マスターは強いんです。それを、自分の島以外で実践しようとすると、なかなか難しいんですが」
「了解」
では、いっちょ、驚くような防犯システムを稼働させてみようか。