火曜日とか
1番、イヤな曜日は?
月曜日。
では、2番目は?
もちろん火曜日。
火曜日ですよ。まだまだ1週間続きますよ。あ~キツイ。寝たけど、寝た気がしない。でも、仕事は始まる。行かないと。サボりたい。有給使いたい。有給ってシステムは、稼働してりゃステキだろうな。稼働してたら。
飯食って、家を出る。相変わらず、街灯がついてる。てか、信号は点滅。
あ~、点滅してますよ。
信号機だって、お休みの時間帯ですよ。
俺は、働きに行くけど。
この生活、おかしいよな。でも、早朝出勤する方が、午前様になるよりマシ。それに、満員電車を避けられるのは大きい。やっぱ始発でGOだな。
〈帰宅〉
意外といけた。もっとキツイかと思ったけど、普段とそこまで変わらなかった。火曜日というしんどさはあったけど、睡眠不足による頭の重さとかはなかった。でも、寝るのがちょっと怖い。
まさか、今日も見るのか?あの女神さん、出てくるのか?
彼女の話を整理すると、あの子も社会人として働いている。
そして、寝たら夢の世界にいくようだ。
よく仕事を頑張っているよな。今日は、大丈夫だった。でも、これが毎日続くとなると厳しい気がしている。あの子は、こんな生活をしてるのか。
すごいな。
でも、俺は、ごめんこうむりたい。
ホットミルクに、はちみつをたらす。これが、旨い。あぁ、現代って幸せだわ。転生もんは、面白いし、行ってみたいけど、インフラはない。
ネットもない。
飯は改良。
って、プチ潔癖の俺には無理。
やっぱ、今の生活は有り難いね。さて、だらだらしても、明日は来る。てか、寝れば、体は休めることができる。もし、昨日のようになっても!
心と頭は無理だけど。
寝よう。お休みなさい。
「今晩は」
女神がいた。
「やっぱり?」
「ええ」
「昨日、また明日とか言うから、怖かったけど」
「女の子に言われると嬉しい言葉じゃないですか?」
笑顔で聞くな。今日もかわいいよ。かんべんしてくれ。
「嬉しいですね。こんな状況でなければ」
まさか、本当に夢の世界に来るとは。
「信じられないですか?」
「まぁ、ね」
「でも、事実ですから。受け入れちゃった方が、気が楽になりますよ」
女神さんなのに、なんか後輩に励まされているみたい。
「ありがとう。で、こうなったら聞くけど、君は、俺を知っているね?現実世界で」
女神は、少し驚いたような顔をして、
「ええ」
と、微笑む。
「やっぱりか。どこで会ったんだろう?俺の方には、記憶がないんだけど」
「私は、リカって言いますよ」
手を後ろに組んで、可愛い仕草で言ってくるが、会った時や場所は、言う気がないようだ。
「分かった。まぁいいや。で、リカさん、俺も夢の世界が何となく分かってきた。みんな、寝ると夢の世界に来る。つまり、この世界に。でも、大抵の人は、起きる時には忘れている。ここまでは、合ってる?」
「ええ」
「で、君は昨日、多くの人は島に行く?と言った。島って何?」
「はい。今日は、そこからですね。島は、その人の精神世界です。よく、あの人は、器が大きいとか、小さいとか言いますよね。心が広いとか、狭いとか。それが、島のように見えるので、私たちは、そう呼んでいます」
「私たち?」
「ええ。私たち、渡り人です」
「やっぱ、あの時の声は、本当だったのか」
俺は、日曜日の夢の声を思い出す。
「あぁ、支部長さんですね。新しい渡り人に、声をかけて、誘導するのがあの人の仕事ですから。そして、説明をするのが、私の仕事です」
「あの声、支部長さんなの?てか、支部長って、まるで会社みたいだね」
「まぁ、似ているかもしれませんね」
「それにしても、神様のような、悪魔のような、怖い感じだったんだけど」
「ははは。そうですね。実は、あの声が道しるべになっていて、私は、タカさんの島に来たんです」
「ええ?ここは、俺の島?てか、俺の精神世界?」
「そうですよ。私は、勝手にお邪魔しています」
「真っ白な空間だけど?俺の精神、てか、心ヤバくない?みんなこんなもんなの?」
「ははは。安心してください。実は、こっそり、タカさんの転生欲望を後押ししただけです。ほら、私の椅子の後ろには、ドアがありますよ。実は、ここは、タカさんの島で、家の中です」
ちょっと、待とうか。
俺は、心の中で、仕事辞めたいだの。
転職したいだの。
転生したいだの、ほざいている。
それは、認める。転職は、口に出したこともある。
人にも相談したことがある。
でも、転生はない。絶対ない!30代で、それは言えない。恥ずかしい。
なのに、なんで知ってるの?辞めてくれないかな。勝手に人の心を覗くの。いや、カマかけてるだけ?いや、ないな。あの子は、知ってるわ。
「タカさんって、結構ガチで、転生望んでいるんですね。カワイイですね」
火照った。顔から火が出るとは、このことか。これは、本当に恥ずかしい。
「ごめん。ちょっと待って。何で俺が転生したいと?」
リカさんは、微笑むと、
「ついてきてください」
と、ドアの方へ歩き出した。