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第87話 タケル、アスカ、レイ!!。今すぐそこから逃げて!!

 その時、室内に緊張がはりつめるのをヤマトは感じた。

 先ほどまで入口をじっと見つめていた兵士たちは、テラス側に投影されているカメラ映像に目を奪われていた。ヤマトははっとして彼らの視線の先にある物を見た。

 そこには今まさに、この部屋へのドアを開けようとしている侵入者の姿だった。

 ヤマトはその姿を認めるなり、キリッと歯噛みした。体中の毛穴から汗がどっと吹き出す。まったく予想していなかったわけではない。だが、それは次の瞬間に、一笑にふせるほどバカバカしい可能性だ、と思っていた。


 だが今、目の前にそのありえないものが『死』を(たずさ)えて、入口のドアをこじあけようとしていた。



 シャワールームから出たアスカは、下着を身に着けると、薄いベール風の服を上から羽織った。窮屈なコンバットスーツを着るぎりぎりまで、ゆったりとした服装でリラックスしていたかった。

 アスカは鏡を見ながら、自分の髪の毛の上に手を這わせた、指にはめたリングがチカチカと光ったかと思うと、広がった髪の毛をすーっとうしろにまとめ、引っ詰めていく。ものの数秒で髪の毛は、ポニーテールのように束ねられていた。

 続けて、耳に会話用デバイスのイヤリング型の『リングフォン』を、カチッという音ともに耳たぶに装着した。

 続けて、テーブルの上のインフォグラシズに手を伸ばした。

 が、その時、部屋がぐらっと揺れた。

 油断すると、その場に座り込んでしまいそうなほどの振動。

 また揺れた?。

 揺れはすぐさまに収まったが、アスカはとるものもとりあえず、部屋から飛び出すと階下のラウンジへむかった。

 だが、階段を降りている途中で、アスカはラウンジがただならない状況になっていることに気づいた。柱や壁の各所は穴があき、ヒビがはいっており、カーテンは破れ、窓ガラスはいたるところが割れていた。

 だが、階下まで降りる頃には、これは地震が原因ではないことに気づいていた。壁の穴やヒビは、銃弾によるけずれ傷や弾痕だった。だが、それだけではない。床や壁に血とおぼしき赤い点が飛び散っており、床には赤く染まってみえる場所もあった。


 ただごとではない。

 まごうことなき戦場の光景が目の前にあった。アスカはぼう然とした。いったい何があったのだ。自分が二階の自室にいる間に、ここで何があったのだ。

 ラウンジには誰もいなかった。沖田十三は勤務外なのはわかっている。もしかしたら、ヤマトやレイはまだ部屋にいるのかもしれない。だが、今日は屈強な護衛の兵士たちが、この場所に数人待機していたはずだ。しかも、草薙大佐の右腕と呼ばれるバットー副隊長の姿もみえない。彼らが何の連絡もなしに勝手に持ち場を離れるわけがない。

 彼らはどこに消えたの?。

 その時、ラウンジの中空から突然、いくつもの映像モニタの映像が同時にふりそそいできた。それらは監視カメラの映像だった。このパイロットエリアの周辺や、内部を様々な角度で映しだしていた。

 突然、アスカの頭の中に草薙大佐のひっ迫した声が飛びこんできた。

「タケル、アスカ、レイ!!。バットーと連絡が取れなくなった」


「今すぐそこから逃げて!!」


 アスカは瞬時に今自分が命の危機が迫っていることを理解した。ラウンジ内のいたるところから吊りさがるように投影されているカメラ映像に目を走らせる。

「どこ?。敵はどこなの」

 アスカのすばやく走らせる視線がとらえた最初の異常は、パイロットエリアのゲート前の光景だった。

 四人の兵士が血だまりの中に倒れていた。

 モニタの下部に表示された彼らのヴァイタルデータは、横真一文字になっており、すでに彼らの命がなくなっていることを示唆していた。アスカは一瞬、ほんの一瞬だけ。彼らのことを思い、胸が痛みそうな感じを覚えたが、今生きている自分に、モニタのむこう側の兵士と同じ末路が迫っていることを思いだし、すぐに我にかえった。


『敵はどこ!』

 集中しろ。アスカ!

 アスカは心の中でおのれを叱咤した。

 次に見つけた異常は自分がいるこの部屋。ラウンジの内部の映像だった。部屋の隅にある暖炉の周りに血溜まりがあり、中から脚だけがでていた。そこは、すこし身体をずらせば、直接自分の目で確認できる位置だったが、アスカは動けなかった。

 あの暖炉はダミーだ、なかにひとひとりの上半身がはいるスペースなどない。

 あそこに見えている下半身は……。

 下半身だけ……。上半身はどこか別なところにある。


 だが、あとふたりか三人はいたはず。どこに消えたの?。

 アスカは慎重に周りを見回した。おそらくここから先は監視カメラの映像に頼らなくても肉眼で見れるはずだ。足が震えてもおかしくない状況の中でも、アスカは冷静に今の自分を分祈した。

『アスカ——』

 耳元でリングフォンを通じてヤマトの囁くような声がした。

 アスカはほっと胸をなでおろした。

 少なくともタケルはまだ生きている。

 アスカは自分を鼓舞するように、声を発して言った。

『タケル、どこにいる……』

「静かに」

 アスカは安堵のあまり、集中を切らせかけたことに自分でも驚いた。

 素直に口をつぐんだ。

 ヤマトは静かに、的確に、そして残酷なことを伝えてきた。

「アスカ、よく聞いて。敵は君の真上にいる」

「真上……って」


「天井に張りついている」


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