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第82話 これは地球存亡の危機なのだ。口を出させるわけにはいかない 

 ヤマトたちが、未知の侵入者に襲撃されている、という緊急事態を聞いたブライトは、怒りにたぎっていた。

「君たちは何をやっていたんだ」

 第一報を入れてきた草薙大佐を怒鳴りつけた。

「申し訳ありません」

「君は命を賭してもヤマトを守るのが仕事のはずだ」

 ヤシナミライはブライトの怒りももっともだと思ったが、今やるべきことはヤマトたちの救出だと考え、口をはさんだ。

「ブライト司令。ヤマト君たちへ援軍を」

 ブライトは怒りのたぎった目を、無言のままミライのほうにむけてきた。余計な口出しは許さない、という、ふだんのブライトらしからぬ、強烈なメッセージだった。

『怒りに我を忘れてる……』

 ミライはひとりごちた。だが、ミライにはブライトの怒りがどこまでも根深いものから来ていることを理解していた。出撃のたびに国連事務総長と一緒に草薙大佐に嫌な思いをさせられていることを、日頃から愚知で聞かされているのだ。積年の恨みが吹きだして、自分でも感情をコントロールできないのだろう。

 助けを求めるように、司令室内を見渡してみる。

 リン、エド、アルはブライトのかんしゃくを熟知しているせいか、我感せずとばかり自分の用事を優先していた。いやそういうふりをして逃げていた。ミライもできるならかかわりたくはなかった。

 だが、ゾッとすることに、これは地球存亡がかかった事態だった。殴ってでも目を覚まさせねばならない。あれほど隙をみせない草薙という女が、だしぬかれてしまうほどの敵がこの基地内を跋扈しているのだ。全力を注いで彼らを助けにいかぬばならない。

「草薙大佐、今タケル君たちはどこに?」

 ミライがブライトを無視するように、事務的な口調で訊いた。

「今、まだパイロットエリアのラウンジに。バトーには三人とも集めて、非常脱出路から脱出させるように指示しました」

「で、あなたは今どこ?」

「今、富士山麓の樹海から、エアーバイクでそちらへ向かっています」

 その返事を聞いたところで、ミライはちらりとブライトのほうをみた。なにか指示を出したがるのではないか、と思ったが、ブライトはてのひらで目頭を押さえて、どうすればいいのか悩んでいるように見えた。

 試行錯誤している余裕はないというのに!。

 ミライはブライトを無視して続けた。

「草薙大佐。わたしたちはどうすれば?」

「このままエアーバイクで別館と本館のなかを突っ切っていきたい、と思っています。そのあいだのすべての隔壁扉をオープンしてください・それから……」

 そのことばに、ブライトがハッとして声をあげた。

「なにを言っている。そんなことしたらセキュリティもへったくれもないではないか」

 だが、ミライはそのブライトのことばを、手をつきだして制すると、草薙大佐のことばの続きを促した。

「続けて」

「それから、本館は食堂室の横の通路を突っ切ります。これから30分、いえ、20分間は食堂への入場を禁止し、さらに食堂から誰も通路にでないよう通達してください」

「わかりました」

「それからできるだけ多くの兵士をラウンジのほうへむかわせてください。もちろん、武器を装備して」

「了解しました」

 通信が切れるやいなや、ミライは各部署へ通達するため、中空に投影されたコンソールを操りはじめた。ブライトがなにかをぶちまけそうな顔をむけていたが、ミライは無視して作業に集中した。

 

 これは地球存亡の危機なのだ。口を出させるわけにはいかない。


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