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第49回 時間をかせぐのはかまわないけど、別にアレを倒してしまっても構わないんでしょ?

「君たちが見たものはおそらく……レイの母親の幻影だ」

 女性クルーたちを部屋の隅に集めると、ブライトがためらいがちに口をひらいた。亜獣との戦いの最中ではあったが、このままでは女性クルーが集中を欠くと判断した。なによりも取り乱したリンの訴えが、放置できない事態の深刻さを物語っている。

「みな、レイが自分の母親を殺したと信じてること、報告書で知ってると思う……」

 ブライトは全員がそれを把握している体で話しをはじめた。時間が惜しい。細かな説明をしている暇はない。

「えぇ、みな知っているわ。たぶん……」

 リンがみんなを代表するように、ブライトに言った。

「だが、そう信じているだけで、実際は、母親はみずからの手で命を絶っている」

「自殺……したっていうんですか?……」

 ミライの口調はまるでブライトに詰め寄るような強さがあった。

「あぁ。彼女のヴァイタルデータやニューロンストリーマーの思考波ログから、それは間違いない」

「どうやって?」

 ブライトは一瞬言いよどんだ。だが無駄な時間はかけてられない。

「『テロ・ブレイカー』を使った……」

 女性クルーたちがみな、ザワッと色めきたった。ブライトはすぐさま片手をあげてそれを制した。

「だから、母親が血まみれの姿で現われているのもそのせいだ」

「それって、レイはその姿を見たってこと……なの?」

 リンのその声はいくぶん震えているような気がした。

「あぁ、見た。君たちに見えている姿は、レイが見た母親の最後の姿なのかもしれない」

 それを聞いて気分が悪くなったのか、ミライはまた喉元をおさえて呼吸を整えた。リンがブライトに進言した。

「だったら、レイに母親を殺していないことを教えてあげれば、母親の幻影は消える……」

「それはダメだ!」

 ブライトがリンのことばをひときわ大きな声で一喝した。怒鳴りつけたと思うほど強い口調に、リンだけでなく、ミライをはじめ他のクルーたちもビクリとからだを震わせた。

「絶対に真相を告げないでくれ!」

「な、なぜ……よ?」

「先日更新されてきたレイの履歴データにあった……。レイのなかにはいくつかの人格が存在するそうだ」

「いくつかのって……、まさか『解離性同一症かいりせいどういつしょう』?」

「そのなかには危険な人格がある、と報告にあった。もしかしたら、真相を知ったことでさらにやっかいな幻影を呼びだす可能性がある。それは避けたい」

「そんな……」

 ミライが声を震わせた。

「レイの母親も、違う人格を受け入れられず、ずっと混乱していたそうだ」

「そんな時、自分の子供を『レイ』とは呼べず、別の名前で呼んでいたらしい」

 リンが訊いた。

「なんて、なんて呼ばれてたの?」


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「あなた、なにしに来たの?。わたしの邪魔?」

 レイは足元に這いつくばっている、血まみれの母親をみすえた。母親は見下ろされているにもかかわらず、レイを侮蔑するような目をむけて睨みつけていた。

「おまえは私を殺した……」

「だからなに?」

「おまえはそれを償わせなければならない」

 母親は男とも女ともつかないひび割れた声をふるわせた。

「償ったから、どうなる?」

「親殺しは大罪だよ」

「そう、大罪ね」

「まぁ、なんて子だ。開き直るのか……」 

「あなたのことなど、どうでもいい」

 レイは母親のことばを一喝すると、司令部にむけて指示を仰いだ。

「司令部、わたしは今から亜獣を追います」

 ブライトかリンが返事をするかと思ったが、予想外なことに、エドが慌てた様子でモニタ画面に現れた。

「ま、あ、いや、ちょっと待ってくれないか?」

「ブライトさんはどうしたの?」

「あ、いや、今、ブライト司令官は女性クルーと席をはずしてるんだ」

「どうして?」

 エドはことばに詰まり、周りにクルーに助けを求めるように、せわしなく辺りを見回しはじめた。

 レイは嘆息して、エドに言った。


「時間をかせぐのはかまわないけど、別にアレを倒してしまっても構わないんでしょ?」


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