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いつか日本人(ぼく)が地球を救う  〜亜宙戦記デミリアン 〜  [オルタナティブ版]  作者: 多比良栄一
第一章 第二節 非純血の少年たち
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第22話 虫の標本みたいに人間が地面にピン留めされている!

十三じゅうぞう、あの三人勝てると思うか?」

 ヤマトは食堂でコーヒーを口に含みながら訊いた。食堂の正面にある絵の前には、司令室から直結され、様々な角度から中継されている現場の映像が空中に映し出されている。

映像はちょうど、三人が各ポジションへ散開しようとしているところだった。

「さぁ、戦いのことはわたしにはとんとわかりかねます」

「作らなくていい。十三、ここにはふたりしかいない」

 そのことばを聞いた十三の顔から心ゆかしい表情がふっと消え、たちまち険しさが顔に浮かんできた。

「ひさしぶりに食堂が華やいで、わたくしも給仕のしがいがあったのですが……」

「やはり、そう思うか」

「けっしてあの三人が負けるとかそういうわけではないですが……」

「でも、おまえはそう感じたんだろ、十三」

 十三は押し黙ったままだった。これ以上は執事の本分ではないと、わきまえた行動だとヤマトは理解した。

「エル様、このタイミングで誠に申し訳ないのですが……」

「なんだ、十三?」

「依頼をいただいておりました例の人物の正体が判明しました」

 ヤマトの手元がびくっと震え、思わずコーヒーカップを落としそうになった。が、その動揺を気取られまいと、つとめて平静を装って言った。

「そいつは、ご苦労だった。すぐに開示してくれ」

 十三が指で中空にサインを描くと、目の前の空間に入手したデータが並び始めた。

 目を通しはじめたヤマトの口元にいつのまにか笑みが浮かんでいた。自分でも自覚できるほど邪悪なたくらみに満ちた笑みだった。


  ------------------------------------------------------------

 

 いつもの戦いさえできれば間違いなく亜獣は仕留められる。リョウマは自分にいい聞かせるように心のなかで呟いた。飽きるほど繰り返してきたシミュレーション戦闘は、この時のためにあったのだ。手抜かりなどあるはずもない。

 リョウマは正面側に投影されている各場所のモニタ画面を確認した。すでにアスカとレイは各々のモニタには、亜獣の近くに進んでいく各機の様子が映し出されていた。プラン通り、アスカはわずかでも高いビルを選んでその陰に身を潜めながら、レイは見つからないことを優先してビルの合間をほふく前進しながら亜獣へにじり寄っていた。

 エドからの映像が目の前のモニタを占拠した。

「今回の99番目の亜獣を『アトン』と命名しました」

 この緊迫感のある状況では、どうでもいい情報だとリョウマは思ったが、エドにはエドの仕事があるのだ、と思い直した。

 リョウマはビルの屋上に設置したライフルの各部分を再度チェックすることにした。ふたりが予定したヒットポイントにうまく亜獣を引き寄せてくれれば、自分の一撃で決着がつく。ちらりと正面頭上のカウンターに視線を走らせた。

 亜獣があちら側に消えるまで、残り10分を切っていた。

 まだ、充分に時間はある。


  ------------------------------------------------------------

 

「なに?」

 レイは目の前にみえてきた光景に目を奪われた。地面をすれすれを這うように進んでいたからこそ発見できた特異な光景だった。

 交差点に人々が突き刺さっていた。

 レイには一瞬、そう見えた。よく見ると虫の標本のように、人間が地面にピン留めされていることがわかった。視界に入っている数だけでも、数十人はカウントできた。誰もが逃げまどっている最中に、亜獣が放った針に刺し貫かれて絶命したのは、容易に想像できた。だが、レイにはどうにも拭えない違和感があった。これだけ緊迫した場面にもかかわらず、死んでいる人々は、まるで死ぬ寸前までそこでくつろいでいたかのように、座り込んでいたり、屈みこんでいたるように見えた。だが、ここは今まさに亜獣が襲いかかろうとしていた現場だ。そんなことはありえない。

 レイはふと、跪いた格好の男性が、笑みを浮かべて死んでいるのに気づいた。すくなくとも自分には満足げな表情を浮かべたまま、胸から背中を刺し貫かれて地面に突き刺さっているようにしか見えなかった。

「なに?」

 レイはもう一度、呟いた。


 この亜獣は、この人たちになにをしたのだ。


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