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いつか日本人(ぼく)が地球を救う  〜亜宙戦記デミリアン 〜  [オルタナティブ版]  作者: 多比良栄一
第一章 第二節 非純血の少年たち
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第21話 君たちの任務は、人を救うことじゃない。生きて帰ってくることだ

 激高しているヤマトを目の前にして、この子とは対立以外で話し合いができたことがあるだろうか、とブライトは思い返していた。いさかい以外で口をきいた時がいつだったか思いだせないほど、ヤマトとの会話はいつも険悪だった。いまも出撃のことで、あわただしい貴重な時間を浪費している。それでなくても、リンと言い争いを繰り広げ、そのあとに草薙少佐に冷ややかな目をむけられながら、国際連盟の事務総長に舌鋒でなぶられてきたというのに、今またこれだ。

「ヤマト、何度もいうように、マーズでの出撃は許可しない。おまえは待機だ」

 ヤマトが口を開きかけたので、さらに大声で制した。

「これは命令だ。反問は許さん!」

 ヤマトは恨みがましい目をむけていたが、やがて諦めたのか、出撃準備にはいった三人のパイロットのモニタ映像のほうへ目をむけた。三人は両腕を機材に挟み込まれていて、『血液循環チューブ』の左側のチューブ、通称『動脈チューブ』のほうから血を吸いあげられているところだった。

 ヤマトが先ほどの激高ぶりからは想像できないほど、静かな声で言った。

「ブライトさんは、あの三人が『勝てる』というのにベットしたんですか?」

「いや、彼らが『負けない』に賭けた。最初から勝てるなどと楽観視するほど、近視眼的な生き方をしてきてはいない」

「じゃあ……」

「あの時、神名朱門かみなあやとの時はなににベットしたんです?。あれは絶対に勝てない勝負でしたよ」

 たったいま、リンとの会話で耳にした名前を、今またヤマトにもちだされてブライトはことばに詰まった。

『出撃準備完了です』

 その時、出撃レーンから聞こえてきた報告に、ブライトはホッとした。目の前に三人のパイロットがシートに座って待機している姿が浮かびあがった。ブライトは大げさに咳払いをした。ヤマトへの牽制をふくんだしぐさだった。

「いよいよ、君たちの初陣だ」

「時間はたっぷりある。いつも通りの戦いかたができれば、必ずいい結果がついてくるはずだ」

「健闘を祈る!」

「リョウマ、アスカ、レイ……」

 突然、脇からヤマトが発言した。せっかくの手向けのことばを台無しにされて、ブライトはむっとした。

「残念ながらボクは待機にまわされて、君たちと一緒に出撃できない」

「初戦だからって倒そうと気負わなくてもいい……」

 ヤマトはモニタ越しとは思えないほど、真剣なまなざしを三人にむけた。

「君たちの任務は、人を救うことでも、街を守ることでも、ましてや亜獣を倒すことでもない……」

「生きて帰ってくることだ!」

 モニタに映る三人の表情にとまどっている色がみえたが、かまわずヤマトは続けた。

「頼むから、それだけは守ってほしい」

 それだけ言うと、ヤマトは踵をかえし司令室の出口にむかった。

「ヤマト、どこへ行く?」

「ブライトさん、自分の部屋でモニタしているよ」

「ここにいたら、ブライトさんの賭けを邪魔してしまいそうだからね」


  ------------------------------------------------------------

 

「速い」

 軍事用の電磁誘導パルスレーンの高速移動のスピードに、レイは思わず声をもらした。これだけの巨体がマッハを超えるスピードで、空中をすべるように移動しているのは驚きだった。

「なに言ってんのよ、レイ。軍用よ、軍用。200キロ程度で『だらたら』走っている民生用とは比べモンになるわけないでしょ」

「これなら基地から神戸までアッという間だ」

 リョウマもはじめて体験するその速度に、少々興奮気味なのが画面からも伝わってきた。

「ほら、もう見えてきたわよ」

 アスカの声はわずかだけだが跳ねるようにうわずっていた。

 レイがモニタに目をやると、もうもうとした煙が各所にあがっているのが、かなたに見えた。まだずいぶん遠いとはいえ、このスピードならものの数分で到達するだろう。レイは自分の腕につながれた『血液循環チューブ』を交互に確認した。左の『動脈チューブ』にも右の『静脈チューブ』にも特に変化は見られない。

「こんなに興奮しているのに、血、全然変わんないんだ」

「レイ、あったり前でしょう。気分で色とか変わったら、そっちのほうが怖いわよ」

「だって、ヤマトが血の力で操るって言っていたから……」

「はーん、このあいだの密会の時ね」

「密会?」

「しらばっくれるんだぁ。戦いから帰ってきたら、たっぷり聞かせてもらうからね」

 レイには意味がよくわからなかったが、リョウマがふたりに割って入ってきた。


「さあ、もうすぐ着くよ」


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