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マイ・ドレスアップ・コンキスタドール


「改めて気になったんだが、サイナって服の好みとかあんの?」


ふとそんなことを思って聞いてみれば、サイナは何を言っているんだこいつはという顔をする。なんスか、半裸が服の好みについて語るのがそんなにおかしいってのか? 俺もそう思う。


「返答:原則的に征服人形は共通規格衣装や各タイプに応じた衣装を保有していますが……契約者(マスター)の疑問は当機わたしという個を参照したものと捉えても?」


「いやまぁ、そうだな」


我が妹は陽務家の例に漏れず、ファッションに夢中だ。

欲しい服が今しか買えない、必ず返すから五千円貸してくれ。なんて頭を下げにきたことすらある……ご丁寧に俺がクソゲーを買ってないから財布に余裕がある時を狙って、だ。

まぁ二ヶ月後に俺も三千円借りたから人のこと言えないんだが。


今日もログインする前に浮かれポンチな顔で、配達で届いた服を抱きしめながら踊っていたが……そういえば征服人形はどうなんだろう、と気になった。

アンドリューの奴が強火のドルオタである以上、征服人形と「服」は割と密接な関係があるはず。シャンフロにおいて服といえば防具、防具ということは作ることができる。

エリュシオン・オートクチュールによってメイド服を製作、そしてサイナが装備したことで俺の中でサイナ・カスタマイズへのモチベが湧いているのだ。

エムルが人に変身するのは時間制限付きだし、戦闘中にやるメリットはほぼ無いからな。つまり人間規格の防具を作る必要がなかった。


思案(そうですね):これまでの契約者(マスター)との活動ログを精査した結果、当機(わたし)という「個」が必要とする装備傾向を好み(・・)と形容することは可能かと」


「というと?」


「回答:防御力です」


ぼうぎょりょく。


「補足:契約者(マスター)の戦闘傾向は極めて攻撃的かつ、高速の機動を長時間要求する傾向が極めて高いです」


「まぁ機動力に振りまくってるわけだから、自然とそうなるだろうな」


当たらずに当て続ける。それが(サンラク)の基本コンセプトだ。


「ですが当機(わたし)が行使可能なモジュールでは契約者(マスター)の戦闘機動に追随するのは困難であると言わざるを得ません。常時飛行可能な性質を利用してのサポートであれば、問題なく実行可能ですが」


言われてみれば……というよりも言われたことで改めて提起された問題。俺の速度にサイナが追いつけない、ということ。

由々しき、と言うほどではないが無視できない問題ではある。


「同等の機動力を、という構築方針(プラン)も提示可能ですが、当機(わたし)は別のプランを提案します」


「それが防御力、と」


なるほど確かに一理ある。

そもそも俺がこんな速度と回避、弾きに特化したのはソロであっても被弾ができない以上、アタッカーであると同時に死なない壁役……回避タンクとして振る舞う必要性があったからだ。そう言う意味ではパーティプレイをした際の俺の役目はアタッカーよりもタンクの方が適性があると言ってもいい。

であるならばサイナに求めるべきは回避役を増やすのではなく俺に向けられたヘイトを奪ってしまった(・・・・・・・)際に俺がヘイトを奪い返すまで戦闘不能にならない生存力だろう。


「総括すると……重装甲、とはいかないまでも直撃しても脱落しない程度には頑丈な防御力か」


肯定(そうなります):ですのでこの衣装は斬撃に対しての優位性を鑑みても非常に優れたものかと」


わざとらしくスカートを風で膨らませての一回転(ターン)。うーん、見せ方をわかってる振る舞いだ、風の噂で聞いた征服人形という最強のモデル達が登場したことで鍛治師ジョブの生産職プレイヤーがお祭り状態というのも納得というか。


「とはいえ、ある程度のでかいモンスター相手だと斬撃より打撃が怖いんだよなぁ」


トマホークみたいなのは例外カウントでいいだろう。あんなのがそこら中にいてたまるかってんだ。基本的に爪や牙も怖いがモンスターの攻撃で一番恐ろしいのは体格差のアドバンテージを、文字通り押し付ける質量攻撃だ。

そもそも噛みつきは牙による点の攻撃であるのと同時に、顎による面の攻撃とも言える。如何にエリュシオン製メイド服が高性能と言っても、無敵と過信(あんしん)できるものではない。


「サイナ自身の機動力を上げる必要自体はないが、下げ過ぎない程度には機動力を確保しつつ防御力の向上………そうなると………」


機動力と防御力の両立。ふと頭に思い浮かぶのは………リュカオーンの影をブッ飛ばしたあの日の夜。いや、厳密にはその前座でボウリングのピンみたいな惨状で全滅したSF-Zooの…………


「なぁサイナ」


応答(はい):」


「上半身だけ鎧付けて下は特に何もつけないとか───」


「警告:セクハラですか?」


「何もつけないって別に脱げって意味じゃねえよ!!?」


「冗談:インテリジェンスジョークです。ビターテイストですが」


艱難辛苦をビターと形容するのはやめろ。そしてそんなピンポイントで俺の社会的HPを0にする即死攻撃を飛ばしてくるな!!

嫌だよ俺「いやーサイナにセクハラかましたらペナルティ喰らってさぁ!」とか言うの。マジでシャレにならん、末代まで馬鹿にされるだろそんなの。


「上半身だけ武装して下半身は機動力優先にしてあまり重い装備をつけないやり方はどうだ、って話だ」


話に聞いただけだが、あのタンク衆は上半身のみを重装甲にして下半身を軽装備に……その状態で機動力を確保して動く壁として立ち回る戦術があるらしい。

なんというかかなり面白い見た目なんだろうな……と思いつつも、その有用性自体は俺も他人事ながら理解はできる。

「堅牢で大型の盾」と聞くと自然と即死級のダメージを防御する、という想定になりがちだがタンクの本領はそこそこ痛い(・・・・・・)を微ダメにまで抑えることにこそある。

であるならば、下半身の装備を取り払って機動力を確保するのはメリットデメリットで言えばメリットの方が遥かに大きい。さらに言えばシャンフロなら咄嗟にステータスを操作すれば装備の着用し直しも可能だしな。


「具申:一考の価値はありますが、程度(・・)によっては征服人形のコスチューム規定に抵触する可能性があるかと」


「なにそれ……いや、言わなくていい。大体予想はつく」


多分変な服とか着せられないんだろうな………あのアンドリューなら仕込みそうなことだ。


「そうなると防御力……防御力かぁ……………なんかすごい厚手のコートみたいなのとかどうだ?宝石織の布を使ってさ」


思い浮かべるのは黒曜纏の(アムルシディウス・)石外套(ユニフォーム)

あれはAGIに下降補正をかけてしまうからあんまり使わないのだが、それを差し引いても素材がアムルシディアン・クォーツを繊維として織った布を用いているからな……テキスト性能を加味せずともかなり頑丈な服と言える筈。

ああいう感じで、コートを作るというのは悪くないのではなかろうか。


「うーん……ちょっと本気で考えるか、お前もなんか案出せよサイナ」


「疑問:当機(わたし)契約者(マスター)の命令であれば規定に抵触しない範囲の如何なる装備も装着しますが」


「俺にファッションセンスを求めるなよ………自分の服くらい自分で決めるんだよ、そういう自由意志もせっかく自他共に(・・・)認めたんだからよ」


「…………肯定(そうです、ね):」


なにやら神妙な表情で頷くサイナ。一体何を躊躇っていたのかは知らないが、自分で服を選んでくれるというならそれに越したことはない。

俺に聞かれても正解を導き出せるだけのファッションへの造詣を持ち合わせていないからな。こういうのに詳しい本業の知り合いは二人ほどいるが……身内と身内だからなぁ。

特に身内ゲームの方はまたなんか金儲けに使われそうだから無し、さらに言うと身内けつえんの方も最終的に前者に情報が行きそうなので無し。


「……契約者(マスター)。」


「なんだよ?」


俺を呼び止めたサイナはメカ分類とは思えない実に人間臭い笑みを浮かべ……


「では、存分に着飾らせていただきます」


「一応、俺の自腹(ポケットマネー)なのは考慮しろよ?」


ウチの妹みたいにダースで服要求してこないよな………?


え?


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― 新着の感想 ―
尊すぎて溶けそうなので完全に消滅する前に続きをください 何卒……!何卒!
続きが、続きが気になる…… スレ民にお任せ依頼して狂喜乱舞させるのか、はたまたサイナ自身のセンスで凄いのがくるのか デザイン中、作る工程、着飾った後とこれからの展開が見どころすぎるの
はじめまして硬梨菜さん 最近アカウントを作ったので、送るのが遅れてしまったのですが、ウィンプのわたしのイメージ像です。良ければ使ってください。 file:///home/chronos/u-b9d5c…
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