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たのしいにじかいだいさんじ:急

よくよく考えたらジンジャーエールと生姜スティック(生)で生姜が被ってるじゃねーか!


「ナイスファイト、口直しにガリ食べる?」


「本気で言ってるならグーでビンタする……」


レモンとジンジャーとワサービとマスタードがクアッドボルテックスしてビッグバン……あれおかしいな、焼き鳥の味が薄く感じるぞ?


「まぁ冗談だけど、もしやったら天音 永遠を殴った男として拡散、かなぁ」


「おいバカやめろ、妹に殺される」


天音 永遠は邪神でありそのフォロワーは即ち邪教徒である、つまり悲しきかなうちの妹は邪神を信奉する邪教徒なのだ。


「妹? へぇ、サンラク君の妹さん私のフォロワーなんだ。うれしいねぇ」


「写真は喋らないからな、うちの妹が騙されるのもしゃーない」


「おっと想像以上に鋭い罵倒(パンチ)を貰ったよ?」


立てば芍薬座れば牡丹、口を開けば外道節だからなぁ。あ、そうだ忘れてた。


「まぁ読モやってるし憧れなんだろ……そういや持ってきたまま忘れてた、妹宛にサインくれ」


「私プライベートなんだけどなぁ……名前は?」


「そう言うノリのいい所嫌いじゃないぜ……名前は瑠美、王を留めて美しい、で瑠美だ」


「つまりヒヅトメルミ、ね……へぇ、この子かぁ」


あっこいつしれっと特定作業始めやがった! というか仮にも個人の名前をホイホイ調べるんじゃないよ!


「ふぅん……このアクセ、いつだったか撮影で使ったっけ……成る程、熱心なフォロワーちゃんだね」


サラサラと手慣れた手つきでサインを書いていたペンシルゴンであったが、ふと何かを思いついたのか悪い笑顔を浮かべて俺の方へと振り向く。


「ノー」


「まだ何も言ってないんですけどー!?」


いや、ロクなことが起こらなさそうだったからつい。


「いやぁ、どうせなら直接お話ししちゃおうかなーって」


「うちの妹と?」


「うん、というわけでお電話の方をだね」


「えぇ……」


いやしかし、どうせサインだけ渡したとしてもどこで手に入れたのかを聞かれるわけだし、大差ないのか?


「ま、いいか。ちょっと電話してみる」


俺がこんにゃく芋(生)のエグ味と激闘を繰り広げている中、ペンシルゴンの口車に乗せられて「ポテトをあーんさせる」という簡単な行為を西部劇の決闘並の緊張感で繰り広げてる夏目氏とバカを他所に俺は妹へと電話を試みる。





『もしもし、お兄ちゃん?』


「瑠美、今時間空いてるか?」


『んー? うん、バイトも終わってメイク落とそうかなって』


「そりゃ良かった、メイクは落とさずにとりあえず椅子に座れ。あと映像通話開け」


『……? ぶふっ! なにそのカボチャっぽい覆面、ハロウィン先取りしすぎでしょ!』


「俺は二ヶ月先を行く兄……じゃねぇ、えーと……その、なんだ。椅子には座ったか?」


『はぁ? どうしたのお兄ちゃん、変なことばっかり言って……』


瞬間、携帯端末を持つ俺の手が横から伸びた手に掴まれてスライドさせられる、カメラのレンズは新たに映り込んだ存在を余す事なく高画質で瑠美の端末へと映し出す。


「ハロー瑠美ちゃん、天音 永遠でーす」


『!!?!?!!?』


ガッシャーン! と凄まじい音が携帯端末のスピーカーから響く、どうやら椅子ごとひっくり返ったらしい。


「おぉ……狙ってもないのに面白さを引き寄せるあたりサンラク君と血の繋がりを感じるよ」


「義理の妹だぞ」


「えっ」


「嘘だよバーカ」


ぷしゅっ


「レモァ!!?」


や、野郎! メットの隙間から鼻にレモン汁吹きかけやがった! てかなんでレモンの切れ端持参してるんだよ!


「くぁぁぁあ……!?」


柑橘系の清涼な香りが鼻から脳へとアッパーカットとでも形容できる刺激にもんどりうっている俺を他所に、アメリカのバラエティ企画みたいな本人ドッキリが直撃した我が妹へとペンシルゴンはとても、とても楽しそうに話しかける。


「大丈夫? 派手に転んだケド」


『なん……っ、へぇえ……っ!? だ、大丈夫ですっ! 今なら総理大臣にもテンカウント取れそうですっ!』


何故健康をアピールするために総理大臣へ喧嘩を売るんだ妹よ。わぁ、世界がレモンの匂いだぁ……


「それなら良かった。君のお兄さんから聞いたよ、私のフォロワーなんだっけ?」


『は、ひゃい! 公式アカウントもフォローしてるし、雑誌も買ってるし……その、いつも応援しています!』


「ふふふ、嬉しいなぁ。あ、そうだ瑠美ちゃんメルアド交換する?」


『ばっ』


再びガッシャーン! と派手にすっ転ぶ音。遠くから母の声が聞こえるくらいには派手に転んだらしい。


『わ、私なんかがっ! メッ、メメメメッ、メルアド交換なんて……っ!』


「んー、本当はこういうのは良くないんだけどねー……」


おい外道、何故こっちを見て笑った。おい待て何故俺から距離を取った?


「お前なにを言うつも」


「サン……じゃなくて、君のお兄さんとはとぉーっても、仲良くさせて貰ってるから……ね」


『』


「ちょっ」


いや間違いではないがこのシチュエーションでそのセリフはどう考えても分かってて言ったな!?

ええいこれ以上奴に喋らせるのは危険だ!


ガッ


「……(ニッ)」


「カッツォ、お前………」


「何も、何も言わなくていいよ。分かってるさ……この方が面白そうだってことくらいねぇ!!」


なにニヒルに笑ってんだこの野郎! ええい離せ!はーなーせーよー!


『あ、兄とはど、どど、どう言う関係で……』


「なんだろうねぇ……ふふふ、どんな関係だと思う?」


「ええい離せ! あれは放置するとゲームオーバーするタイプの敵だろ!」


「ほら、バッドエンド回収はゲーマーの嗜みだろ?」


「人生はセーブデータ分けられねぇんだよなぁ!?」


バッドエンドに辿り着いたらお終いなんですけどーっ!!











「それじゃ、これからも宜しくねー」


『は、はいっ!』


プツッ、と電話が切られる。

とっても清々しい笑顔で端末を返すペンシルゴンをどうぶん殴ってやろうかと脳内で数パターンのシミュレートが行われるが、どのルートでも最終的に妹にフルボッコにされるエンドに収束したので諦める。


「貴様、覚えとけよ……」


「んふふふふ、まぁこれくらいで勘弁してあげよう」


くそぅ、ぜってぇ許さねえクターニッド……このフラストレーションをモチベーションに変えてギッタギタにしてやるからな……!


「ま、シャンフロのそこら辺は追い追い考えて行くとして……とりあえずはいコレサイン」


「おっサンキュー」


やだなぁ、帰りたくないなぁ……うちの家系は「やる時はやる」だから絶対家に帰っても尋問されるよなぁ……


「こうなったらトコトン飲み食いしてカッツォの財布に致命傷を与えるしかないな……!」


「いいねぇ、私この「超蟹鍋」っての気になってるんだ」


「じゃあ俺この「唐揚げギガ盛り」で……」


「せめて完食できるものでお願いできますかね!?」


「じゃあ私、この「タイタン盛りポテト」を……」


スッと差し出されたメニューを表示したタブレットに映るアホみたいに盛られたフライドポテトの写真。

この流れはボケかと提示した夏目氏を三人で見ればどうも本気のご様子。

というか結構な量あったはずの大盛りポテトが無くなってるんだけど、誰か夏目氏と一緒に食べたんですかね?


視線の動きで俺の言わんとしたことを理解したのか、首を横に振る外道二人。

そして遅れて俺達がなにを考えているのか理解したらしく、ボンと顔を赤くしながら夏目氏はワタワタと弁明を始めた。


「ち、違うの。これは……そう、皆で分け合うとかそういう感じなの」


「四人で挑む量じゃないと思うんだけど……」


「そこは私が頑張るから……」


ぽん、と夏目氏の肩にペンシルゴンの手が置かれる。


「夏目ちゃん、素直に「ポテトが食べ足りない」って言えばいいんだよ……」


「違っ、いや違わないけど……私がポテト大好き過ぎるみたいじゃない!」


「「「え、違うの?」」」


ハモったわ、夏目氏の言い訳が下手すぎて全員の感情が一致してしまったわ。


「わた、その、いや別にポテトが凄い好きってわけじゃなくて……ええと……そう! 芋って主食みたいなものだし!」


「揚げた芋が主食……」


「コレステロールがカンストして死ぬんじゃ」


「メグ、もう少し健康的な食生活を心掛けるべきでは……」


エナドリを三食常飲するのと同じかそれ以上に危険な主張をする夏目氏に流石の俺達も若干引く。


「ち、違うからぁーっ!!」


















楽しい時間というものはあっという間に経過するもので、気づけば俺は自宅の前まで戻ってきていた。

時刻は夜十一時、正直高校生が外に出ていていい時間ではないのだが、そこはご愛嬌。

実際こっちには十時くらいに戻ってきていたがコンビニで一時間ほど時間を潰して時間稼ぎもした。


「大丈夫、奴はバイト後で疲れているからもう寝てる筈だ……とりあえず体勢を整えて明日の朝に釈明を……」


カチャン


「っ!?」


俺は、まだ、扉の鍵を開けてない。

灯りは……消えている。少なくともリビングで灯りをつけて起きている者はいない、筈だ。


「ま、待て、現実でホラー展開なんて早々ある筈ないし……」


ギィィィ……


あ、これあかん奴だ。

この際朝帰りの叱責を受けても構わない、今ここにいる危険性に比べればネカフェで夜を明かす方が数倍安全だ!

こ、こんな危険な場所に居られるか! 俺はネカフェに避難させてもらうぜ!


「───オカエリナサイ」


「ひぇっ」


う、後ろを取られている!? 馬鹿な、うちの妹にそんな暗殺者的技能がある筈が……まさかうちの家系には代々受け継がれてきた忍者的なあれそれが……!


「積もる話もあるし、ゆぅー……っくり、じぃー……っくり、話そうね……お兄ちゃん?」


ヒヤリ、と妙に冷たく感じる手が俺の首を這う。あれおかしいな、いつの間にホラーゲームにフルダイブしてたんだろう。


「……本当に、話すだけだよな?」


「大丈夫……ライオットなんとかはいっぱい買ったから」


「待て、本当に待って瑠美、日に三本以上は割とやばめだか……っ、ええい離せ! ちょ、力超強い!? 引き摺られ……っ!?」


「トワ様との関係……洗いざらい自白(はな)してもらうから、ね?」


た、助けて夏目氏!


助けの声が首都まで届く事はなく、俺は暗闇の中へと引きずりこまれていった…………


















キーアイテム「直筆サイン」でなんとか生還できました。

書きたい番外編と本編の書き溜めがブッキングしてつらい、カイリキーになりたい


次の番外編の予定は「GGC二日目実況掲示板」ですが、真理書も書きたい……世界観設定のネタバレしたい……クターニッドは実は大先輩ってこととか……アリスとは何者なのかとか……

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― 新着の感想 ―
[一言] うおーっコミカライズでもたのしいにじかいだいさんじ!
[一言] 妹と「お話」したサンラクサン....誤解は解けたのか...?
[良い点] 誰に何を言われるでもなく、自然に映像通話に切り替えているサンラク。 何だかんだ言っても妹想いなのが伝わってきますね。
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