表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/47

第13話 ~Sな同級生とドSな先輩~

 生徒会室のドアを開けると、小さな先輩こと氷室先輩がチョロチョロと動き回っていた。おそらく散らかってる場所がないか確認しているのだろう。

 他のメンバーはまだ来ていない。

 秋本と無駄に会話してしまったのでてっきり最後かと思っていたんだがな。


「よぅキリタニ」

「どうも、今日もまた突然振り向いて睨んできましたね」

「今日はドアを開いた音がしたんだから別に突然じゃねぇだろ。それに睨むのは癖みたいなもんだから気にすんな」


 あれれ?

 何か先週と言ってることが少し違いません? 先週は確か、睨むのは癖とか言ってませんでしたよね。

 先週のことを思い出しながら生徒会室に入ると、すぐに


「もう置いて行くとかひどいよ桐谷。あっ、先輩ちーす」


 秋本が俺に文句を言いながら軽いノリで生徒会室に入ってきた。

 秋本、お前先輩に対してそんな挨拶よくできるな。部活動とかならまだ分かるけど……そういや生徒会の正式名称って『生徒会執行部』だったっけ? 部ってついてるから部活動と見ることも可能? 可能なら秋本の挨拶も理解できるってことになる。


「……その声と挨拶の仕方からしてアキモトか」

「あのー先輩、最初あたしのこと誰だって思いましたよね?」

「……んなわけねぇだろ」


 先輩、否定するなら間を空けちゃダメでしょ。

 でも……口は悪くても心は善い人だから嘘つこうとすると間が空いちゃうんだろうな。秋本は……落ち込んではいないみたいだな。あたしって髪下ろすだけでそんなに変わるのかなーとか言いながら髪の毛を弄っているだけみたいだし。


「……そういうことだったか」

「なに納得してるんですか?」

「さっき廊下が騒がしいなって思ってたんだよ。声からして大声出してたのアキモトだろ。何ひとりでバカ騒ぎしてんだ? って思ってたんだよ」

「先輩の中でのあたしはひとりで騒ぐような人なんですかね?」

「……まぁキリタニと一緒にいたんなら騒がしくなっても仕方がねぇか」


 少なからず思ってるからスルーしたよ先輩。秋本もそれを理解してるようだ。先ほどとは違って軽く落ち込んでる。小声で「さすがにひとりでは騒がないよあたし……」って呟いてるし。

 まあ秋本のことは秋本の問題なので置いといて


「氷室先輩」

「なんだキリタニ?」

「さっきの俺と一緒だったら騒がしくなっても仕方がないってのはおかしくないですか? まるで俺が騒動のきっかけみたいに聞こえるんですけど」


 生徒会の中で一番平凡で常識人である俺が騒動のきっかけのわけがない。

 騒動の原因は非常識な部分がある生徒会の役員達なんだから。氷室先輩は常識人だけど、見た目が非常識だから月森先輩に弄られる。なので騒動の原因と言えるだろう。


「自覚してねぇのかテメェ」

「何で急に口調が荒くなるんですか?」

「そんなこといちいち気にすんな。お前らが騒いでるときに1回イラっとして、お前がここに来てから妙にイラつくだけだ」


 うん、それって俺が先輩に対して何か思うたびにイラってしてるってことですよね。

 先輩ってその可愛らしい見た目以外にも非常識な部分があるんですねー。はぁ……つまり生徒会は非常識の集まりってことか。

 ……まあ先輩はそのへんを除けば非常識じゃないし、会話する分には特に問題ないのが救いだな。

 それと……今からできるだけ氷室先輩に対して失礼なことは考えないようにしよう。


「そうですか……それで俺が何を自覚してないって言うんですか?」

「お前が一番騒動の中心にいるってことだよ。はっきり言っておくがお前だけだかんな。わたしら全員と騒動起こしたの。わたしはチナツと、アキモトはマコトとくらいしか基本的に騒がしくならねぇんだから」


 ……ちょっと思い出してみよう。

 会長は、最初ここに来たときと会長挨拶の後で騒動があった。

 月森先輩は、背後から捕獲されたときの件がある。氷室先輩とも自己紹介のとき。先週も騒がしかったから入るかも知れない。

 誠は初対面から倉庫の片付けのときまで。秋本は……もう考えなくていいや。さっき騒がしくなったわけだし。

 うん、俺って全員とやっちゃってるね。これなら騒動の中心って言っても間違いじゃないや。


「キリ、そう落ち込むなって。中心ってことはキリがハーレムの主って――あぅッ!」


 あっやべ、反射的に秋本のでこに一発入れちまった。

 この短い時間で条件反射するほど身体に染み付いちまったのか。あぁー秋本に汚けがされちゃったよ俺……


「……桐谷のバカ!」


 秋本はでこを両手で押さえながら文句を言ってきたぞ。今の表情を見る限り、結構本気で怒ってるかもしれない。だって目にほんのり涙が見えるんだもの。


「ツッコミ入れるなら他の場所にしろって言ったじゃん!」


 おぉー氷室先輩がいるからか具体的な場所は言わなかったな。その常識があるなら俺のときも常識人として話してほしいものである。


「大体さ、なんでチョップじゃなくて小突いだわけ? よりにもよって指の第二関節で。ちょー痛かったんだからね!」


 と言われても、反射的にやっちゃったからさ。しかも反射的にやるようになったのは秋本の所為だし。


「そもそもでこにツッコミ入れるのがおかしいんだよ。でこにやることは手やでこ当てて熱を測るくらいでしょ! それかキス!」

「お前にしてはまともな例を挙げたな。他にも『痛いの痛いの飛んで行け』とかがあるぞ。何ならお詫びにしてやろうか?」

「誰が他に例を挙げろって言ったよ! というか、加害者にそれやられても効果出るわけない。むしろ侮辱されてる気しかしないから! それにあたしはそんな年でもないから、やるにしても先輩にしろ!」

「おいこらアキモト、そりゃどういう意味だ!」


 やや呆れながら傍観してた先輩が入ってきましたよ。

 やれやれ……先輩って我慢ってものがないな。別に月森先輩のように意図的に言ったわけじゃないんだからさらっと流せばいいのに。


「服を変えれば小学生に見える先輩なら、はたから見られても問題ないので先輩が恥ずかしく思わなければ可能という意味では?」

「別に具体的に言わなくていいんだよキリタニッ!」

「そうだよ桐谷、今のはスルーしてあたしに返事を返すところだよ! 具体的に言ったら先輩傷つくんだから!」

「あのなぁ、正直に言ったら具体的に言われなくても傷ついてんだよ! チナツで慣れてても少なからず傷ついてるんだよ!」

『すみませんでした!』


 先輩の正直な叫びに俺と秋本は、反射的に謝罪した。

 すると先輩は顔を背けながら「別に気にしてねぇよ、流れで言ったんだろうし。それにお前らが生意気だってのは知ってるし」と俺達に言ってきた。

 先輩……やっぱりあんたエエ人や。


「あなたたち、なに騒いでるの?」


 ドアの方から声が聞こえたので視線を向ける。そこには月森先輩を先頭に会長、誠の姿も見えた。

 並び方が胸が大きい順だな。……巨乳の2人と一緒なんて誠かわいそうに。きっと内心で何かしら思ってるだろうな。

 ……やばいやばいやばい、何かおかしいこと考えてる。

 今日の俺マジでおかしいぞ。秋本と会話してから思考が変になってる。

 でもさ、誠のやつ入ってきたときチラッと秋本の胸あたりに視線が行ったんだよ。そのあと自分の胸元見下ろしてため息吐いたんだ。そんで氷室先輩見てどこか安心した顔浮かべたんだよ。

 そんな一連の動きを見たら会長達と一緒にいて内心悩んでたのかなって思うのは無理じゃないと思うのですよ。


「別に何でもねぇよ」

「何でもないって……恵那のおでこ赤くなってるじゃない。それにここに来る途中で男女が痴話ゲンカしてるとか、イチャついてるとか話してる人がいたわよ」


 ……やっぱ目撃された!?

 痴話ゲンカってのは秋本が性癖とか訳の分からんことを言ってるあたりのことで、イチャついてるってのは俺が秋本の髪触ってたところのことだろう。

 ど、どうするよ……

 明日から俺と秋本が付き合ってるみたいな話流れたらやばい。沈静に向かっていたのに一気にぶり返しかねん。

 いや待て、いま先輩は男女と言ったはずだ。

 ならばそれが俺と秋本であることはバレていない可能性がある。……でも秋本の声響いてたからなぁ。秋本ってのはすぐにバレたんじゃないだろうか。そもそも3号館2階って生徒会くらいしか頻繁に行かないし。結果的に生徒会室に向かう男子ってことで俺ってなる。バレてない可能性低いなぁ……


「あっ別にでこのことは気にしないでください。桐谷に汚されただけですから」

「あら♪」

「汚され……!?」

「……? ……? ……?」


 明日よりも今がやばいね!

 秋本、貴様よくもぶっこんでくれたな。しかも恥ずかしそうに顔を隠しながら。いつもは笑顔で冗談っぽく言うくせに。

 それと……大人の方の副会長、何でアンタはテンション上がってんだよ!

 誠、お前はまず想像するのやめろ。大体でこが赤いからって汚されたっておかしいだろ。世の中広いからでこだけやる変態もいるかもしれないけどさ。俺はそんな変態じゃないから。

 会長さんは分かってないようなので放っておこう。


「秋本」

「ん……ッ!!」


 秋本が振り向いたのと同時に一発入れた。今までと違って利き手の右手で。

 周囲の人間は俺の行動に呆気に取られたのか言葉を発しない。ただ俺にツッコミ? を入れられた秋本だけはでこを手で押さえて声にならない声を出している。


「……桐谷のバカ、アホ、オタンコナス! 今のやつ小突くとかチョップのレベルじゃないじゃん!」


 秋本はこちらを涙目で睨みながら怒声を上げた。ほんの少し前に今の一段階ほど低い反応を見たなぁ。


「絶対ガチでやったでしょ、痛いってもんじゃないし! この短時間でどれだけあたしの脳細胞殺せば気が済むんだよ!」


 そりゃ痛いだろうね、涙出てるし。

 それにツッコミ? を入れた俺の手も痛いからお前が痛いってよく分かるよ。

 でも……言わせてもらうけど自業自得だからな。お前が何もしなければ俺も何もしなかったんだから。

 というか、俺が何をしてくるか分かってるのにやったわけでしょ? 自分で自分の脳細胞殺したようなもんじゃん。

 だが安心しろ。これくらいのことじゃ頭って悪くならないから。なってるならそんなはっきりと話したりできないだろうし。


「それにさ、でこにはしないでって言ったじゃん! ツッコミ入れるところなんて腕とか腹とかあるんだしさ。そのへんに入れようとして胸触ったってあたし怒んないからね!」

「あらあら、恵那ったら」


 月森先輩、なんでそんなに笑顔なんですか?

 何か立ち位置が先輩じゃなくて秋本のお母さんみたいになってるように思えますよ。しかも「男は誘惑して落とすのよ」とか大胆なことを言ってそうなお母さん。


「そもそもさ、なんでここなわけ? でこにやるより頭にやったほうが面積広いぶんやりやすいよね。桐谷はでこフェチなわけ?」


 いやいや違うよ。

 真っ先に人のでことか見ないよ俺。そもそもお前っていつも前髪下ろしてるんだから、でこ出てないだろ。今日は俺が何度もツッコミ入れた場所をさすってたから中央あたりで分かれて見えてるけどさ。


「それともあたしをMに目覚めさせて、でこだけ責めるっていう新手のプレイ?」

「おい、いい加減にしろよお前。俺はでこフェチでもないし、お前が今言ったようなこともやってるつもりはない。というか、そんな発想出てくるあたりお前変態だろ」

「あらあらあら、言葉責めね」


 ……あのー先輩、ちょくちょく一言入れるのやめてもらえますかね。別に俺は言葉責めしてるつもりないですから。

 それと、大空誠さん。

 いま君の頭の中で考えられてるようなことはないから妄想するのやめなさい。君は顔をすぐ真っ赤にするから分かるんですよ。

 そもそも自分の仲の良い友人と少し良好な関係になり始めた男子でそういうこと考えるな。

 友人である秋本や俺に失礼だし、お前を変態認定するぞ。秋本が俺に主導権握られて色々やってるのを想像してるんだから。……このこと考えるのやめよう、俺まで誠みたいなこと考え始めそうだし。


「言葉責め……やっぱりあたしをMに目覚めさせる気なんだ」

「言葉責めなんかしてねぇよ。というかお前、月森先輩の言ったことに悪ノリし始めただろ」

「あたしとしては……言葉責めよりは無理やり唇奪われて、強引に押し倒される方が……」

「それ以上は言わせねぇぞ変態。人の話聞け」


 お前、冗談とか言ってたけど本気で欲求不満だろ。

 そしてSッ気あるように見えて本当はMだろ。しかもSッ気あったほうが相手がイラっとして強引に……って考えてるやつだろ。

 これ以上続けるなら俺は、マジでお前をそういう変態だって認定するからな。


「言葉責めしてないって言ったけどしてる……桐谷が攻めで恵那が受けなんだ」

「おいそこのむっつり、今すぐ思考止めろ」

「攻め? 受け?」

「会長、ややこしくなりそうだから黙ってて」

「桐谷くんと恵那って相性良いのねー。結婚式には呼んでね」

「あんたは何言ってんの!? 話がとんでもなく飛躍してるし!?」

「え、えっと……よろしくね。……いきなりハードな要求は無理だから。最初は強引に唇を奪って口を塞ぐとか、胸を……」

「テメェは黙ってろ!」

「っ……!?」


 もう何なんだよこの状況……。

 よってたかって俺をいじめやがって。無害なの訳が分かってない会長と黙って見てる氷室先輩だけじゃねぇか。……氷室先輩、そんな哀れそうな目でこっち見るなら助けてくれませんかね? 

 え、助けようとしたら自分まで標的にされるから遠慮する?

 先輩は善い人でしょ! ……何かお互い表情見るだけで気持ちが通じ合ってる感じだよ。それってつまり俺も非常識人の仲間入りってこと?


「きりひゃに! はんで今のだけ頭だったのしゃ。舌ほもいっきり噛んぢゃったじゃん!」


 秋本は頭を押さえながら舌足らずな声で怒鳴ってきた。頭と舌がかなり痛いらしく泣きそうな顔してる。


「なんで頭だったかって? お前がでこにすんなって言っただろ」

「うぅ……で、でもしゃ、なんでグーでやるのしゃ。手で叩くかチョップでよかったよへ。げんこつなんて親にもされひゃことなひのに」


 げんこつされなかったのはお前の頭が石頭だからじゃないの? お前の頭に落とした俺の手、今ジンジンして結構痛いし。

 それとさ、今の状態であまりしゃべるとまた舌噛む……


「しかも思いっきりやりゅ……まはひゃんだ」


 ぞ、ってやっちゃったよ。しかもようやく話せそうになった矢先で。


「うーん、そうねー。いくら何でもげんこつはやり過ぎだと思うわ」


 月森先輩、あなたは立ち位置がよく変わりますね。今またお母さん的立場に立ってますよね。


「きりひゃに」

「ん?」

「きれへない?」


 秋本は舌を出して、顔を俺に近づけてきた。

 舌を出した状態で近づかれても気持ち悪いと思わないあたり、美少女というのは凄い人種だ。

 舌足らずでよく聞き取れなかったが、おそらくやってることからして舌が切れてないか聞いているのだろう。

 それにしても何で俺に聞くかねこいつ。

 まさか何かやりかえそうとしてるのか……充分にありえるな。さすがに舌で舐めるってことはないだろうけど、不意打ちでボディブローとかはありえる。

 だって舌が切れてるなら血が出てるってことだ。それなら血の味がするだろう。よって血が出てるか出てないか自分で分かるはず。つまり人に聞く必要ない。


「……切れてない」

「ほんと?」

「あぁ、血の味しないだろ」

「はぁ……残念――」


 おい先輩、血が出てないことがため息つくほど残念なのか。あんたってどんだけSなんだよ。


「血が出てたら……きっと恵那は桐谷くんに舌を舐めてもらって、そのまま大人のキスに行ってたはずなのに」

「お、大人の……ですか?」

「そうよ、そして盛り上がった2人は私達がいることを気にしないで……」

「そそそそんな……」

「誠、今すぐ妄想やめろ! 先輩は黙ってください、この場の空気をよりカオスに導こうとしないでください!」

「桐谷くん、仕方がないのよ。私は混沌とカオスを求めてしまうの」

「混沌とカオスって意味同じですから!」

「ふふ、奈々に負けないくらいのいいツッコミね。それに免じて私は黙ることにするわ」


 俺はあんたの暇潰しするためのおもちゃじゃねぇぇぇぇぇぇ! いえ、何でもありません。ですからその鋭い視線をこちらに向けないでください!


「はぁ……帰りたい」

「えぇ~! 真央くん帰っちゃうの! 私まだ真央くんと遊んでないよ~!」


 日本語をちゃんと分かってよ会長さん。

 帰りたいって言っただけで帰るとは言ってないじゃん。やることがないなら今すぐ帰るけど。こんなよってたかって人を弄る場所に居たくなんかない。

 それとあんたおかしいよ。

 何で俺と遊びたいの? というかさ、さっきのが遊んでるように見えたわけ?

 本当にあなたはド天然な人ですねー。それに俺のHPは0に近いってのに遊んでってどれだけ自己中心的な人なんですかね。


「俺はここに遊びに来てるつもりないですよ会長。遊ぶにしても氷室先輩と遊びます」

「なるほど、桐谷くんの本命は奈々なのね。つまり……」

「あたしは遊びなんだ……」

「先輩は黙るって言いましたよね? 宣言してからほんの数秒しか経ってませんよ。それと秋本、それ以上悪ノリするともう一発やるぞ」


 まったくSッ気の2人は何でこう休む暇を与えてくれないのかねー。俺に普通の会話させてくれないものだろうか。

 もう何か今なら会長との会話でも和みそうだよ。……あれー、何か会長さんが頬をリスのように膨らませているぞ。


「むぅ……ブッ!」


 おぉー何か和む。

 あっ、言っておくが別に会長さんはオナラとかしてないからな。俺が会長の膨らんだほっぺを押しただけで。

 むっ、会長め、負けじとまた膨らませ始めたな。


「…………」

「ブッ! ……むぅ」

「…………」

「ブッ! ……むぅ――ブッ!」


 うん、凄く和む。同じことを繰り返すのって普段なら飽きることなのに、今日はちょー和むなぁ。


「あぁもう、私で遊ばないでよ!」


 あっ怒った。でも


「会長が遊べみたいなこと言ったじゃないですか。だから遊んだんじゃないですか」

「確かに遊んでるけど、違うの~!」

「どう違うんです?」

「今のは真央くんだけ楽しくて、私は全然楽しくない! 私の言う遊ぶってのは一緒に楽しい方の遊ぶことなの~!」


 おぉー会長さんがちゃんと説明できた。会長も少しは成長したんですね。まぁ自分に関することだから説明できた気もしますけど。

 それと


「会長、腕を急に上げたり、駄々っ子のように振り回したらいけません」


 服が伸びるから胸が強調されるでしょ。

 というか……会長さん、あなたちゃんとブラジャーつけてますか? やたらと揺れてる気がするんですけど……いや、会長も高校生だ。下着類はきちんとつけているだろう。

 なら何故こんなにも揺れるのだろう?

 ……ま、まさか、見た目は月森先輩より小さいがもしかして着やせしているのか。脱いだら今以上に大きいんですか……ってそうじゃないだろ俺!


「周りの人に迷惑です。会長はもう子供じゃないんだから当たったら結構痛いんですからね」


 ふぅー……このことを言いたかったのに思考がぶっ飛んでしまっていたぜ。

 これも会長の胸がやたら揺れるからいけないんだ。常識人で健全な年頃の男子である俺の前で無防備に胸を揺らすから。


「ごめんなさい……何か立場が逆になってるような?」


 くっ……!

 せっかく話をズラしたのに思い出そうとしている。絶対思い出されてたまるか。今の俺にはあんたと遊ぶ体力なんか残ってないんだからな。

 だから切り札ジョーカーを使わせてもらう!


「会長偉いですねー、反省する人は俺好きですよー」

「えへへ♪」


 よし!

 やっぱり切り札――頭を撫でることは会長に効果抜群だったぜ!


「はぁ……主役っぽい桜が本命かぁ――残念。可哀想な奈々、恵那より早く捨てられるなんて」

「おいチナツ、別にあいつは誰ともそんな関係になってねぇだろ。だから捨てられるとかの話はそもそもねぇんだよ。それと最初に残念って絶対ぶっとんだ意味で使ってるだろ」

「ふふ、さすが奈々だわ。そうよ、桐谷くんが奈々と付き合ったら真っ先に『このロリコン野郎』って言ってあげるつもりだったの。それが言えなくなってしまったから本当に残念だわ」

「お前性格悪すぎだろ! 『このロリコン野郎』ってキリタニだけ傷つくように思えるけど、わたしに対しても『ふふ、奈々の見た目がそんなだから彼氏である桐谷くんがロリコンって言われるのよ』みたいな意味込めて言うつもりだったよな! 何かお前みたいな残念な友達持った自分を殴りたくなってきたわ!」


 先輩、それはおかしい! 殴るなら月森先輩を殴るべきだ!

 そして氷室先輩がツッコんでなかったから言っておきたい。月森先輩、会長が主役っぽいって何? あなたの中には俺を主役とした物語でもあるんですか? それともただ会長が生徒会の主役って意味?

 ……まあいいや。月森先輩のこと考えるのやめよう。せっかく氷室先輩が相手してくれてるわけだし。

 よし、氷室先輩が助けを求めてきても助けないぞ。月森先輩の矛先が俺に戻ってきてほしくないから。それに氷室先輩、さっき助けてくれなったし……。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ