閑話5 タブル村
もう一度、報告を。
すみません。
リリアスとのデートは次の編に持ち越しです。
前回の話の引っ越しの回で区切っていた方がいいと判断したもので。
と言う訳で閑話明けに新編スタートです。
タカキ達が王都で色々と面倒に巻き込まれている頃。
樹里達は馬車でタブル村に来ていた。国境は特に何もなく、通過出来たので、同じ方向に行く行商人に乗せてもらえるように交渉したのである。タカキが聞いたら羨ましがるだろう、トラブル無しである。
「ここはどこですか?」
樹里は乗せてもらっている行商人に場所を聞く。他の生徒や皆川喜美は馬車の中で休んでいる。地球の乗り物と違って乗り心地は悪いので休めているかどうかは定かではないが。樹里は馬車を操作している行商人の女性の隣に座っている。
「ここは私がいつも行商に来ている村の一つでタブル村と言います」
「タブル村・・・」
「ここの住人は温厚だと周辺の村々は言うのですが、あなた方は気をつけた方がいいでしょうね」
「何故なんですか?」
まさか、自分たちが勇者として召喚されたことがこんな他国の辺境の村にまで伝わっているのかと心配になる樹里。
「いえ、ここの村の住人は余所者に警戒心が強く、排他的なんですよ」
「じゃあ、なんで温厚だと周辺の村の人たちから言われているんですか?」
「周辺と言ってもここにやって来る周辺の村の人はここに住んでいる村人の親戚などなんです。だから身内なんですよ。彼らにとっては」
「だから周りが勘違いしていると?」
「ええ。だから気をつけてくださいね。私もこの村に受け入れてもらうまで結構苦労しましたから」
「あなたはどうして受け入れてもらえたんですか?」
「この村に住んでいる一人暮らしの少女が本を買ってくれたのが受け入れてもらえた理由ですかね」
「少女ですか?」
「ええ。魔法使いに憧れる少女です。そしたらその少女に好意がある少年が私に少女のことを聞いて来て、ついでに商品を買っていきました。微笑ましかったですね。元気でしょうか?彼女達は」
物思いに耽る行商人。なんだかその少年少女の親戚のおじさんのようである。
「まあ、あなた方は服装も奇抜なので警戒もより一層強いでしょうからそこの所も気をつけてください」
「ありがとうございます。そうします。それじゃあ、ここで私たちは降りますね」
「ええ。出発の時は今日から二日後です。私は村長の家に滞在しているのであなた方も気をつけてくださいね。宿はこの村にはありませんから村人に頼むか、野宿と言うことになってしまいます。村長にお願いしたいところなんですが、流石に私を泊めるので限界なんで」
「分かりました。それでは二日後に村の入り口で集合しておきます。その時もよろしくお願いします」
そして樹里達はそこで降りて行商人と別れた。
「水崎さん、情報、ありがとうございました。それでは行動を開始しましょう。まずはこの国の情報を出来るだけ集めることと孝希君の情報です」
『はい!』
皆川喜美の言葉に返事をして二人一組になって行動を開始する。
今回は樹里と皆川喜美は同じグループである。
「すみません。少々お話を聞いてもいいですか?」
そう言って早速村人に話しかける皆川喜美。すごい行動力である。本人曰く、「タカキ君たちのおかげよ」とのこと。どんな一年を過ごしたらそう言えるのか気になるところだが、ここは一旦置いておく。
「な、何でしょうか?」
思いっきり警戒されながらも相手が女性というだけあって話は聞いてもらえるようである。
「実は私たちオークス王国って初めてで。出来ればこの国についてあなたの知っていることでいいので教えて貰えませんか?」
と樹里が聞く。
「はあ。それくらいなら・・・」
とオークス王国について色々と教えて貰う。
「ちなみに奇抜な服装の人を見ませんでしたか?私たち以外で。男一人なんですけど」
「い、いえ!知りません!私、急いでいますから!」
そう言って逃げるように走り去っていく村人。明らかに何かある様子である。
「ここは孝希君について何か情報がありそうですね」
「ええ。聞き込みを続けましょう」
それから何人かに聞いて回ったが誰も知らないの一点張り。どうしようかと困っていたら少年が警戒する様子でこちらに話しかけてきた。
「あんたら、あいつの知り合いなのか?」
「あいつって?」
樹里が聞き返す。
「黒髪であんたらみたいな服装をしている奴のことだよ!」
イライラを隠そうともせずに言う少年。そう。この少年はタカキとリリアスにこの村を早々に立ち去らせた原因のパッシュである。
「あなた、教えてくれるの⁉」
樹里はものすごい勢いで聞き返す。
「あ、ああ。教えてやるよ」
その迫力に負けてそう言うパッシュ。
「ここにいたの?」
「ああ。どこからともなく現れた。リリアスに連れられてやって来たんだ」
どこからともなくという言葉でここに召喚されたと理解する二人。
「もうこの村にはいないけどな!」
苦虫を潰したような顔をするパッシュ。
「そのリリアスって人に話を伺いたいのですが・・・」
皆川喜美がパッシュに聞く。
「リリアスはそいつが連れて行ったよ!会って間もない奴について行くなんてありえない!どうしてリリアスはあんな奴について行ったんだ!」
途中から一人で気持ちを爆発させているパッシュ。
「色々とやっているようですね」
「ええ。彼ならやりかねません」
樹里と皆川喜美はそう判断する。
「あんたらがあいつの知り合いならちょうどいい。誰か一人でいい。ここに置いていけ」
「「は?」」
パッシュは急にそう言い出した。
「あんたらあいつの知り合いなんだろ?ならここに一人でも置いて行けばあいつがここに来る可能性がある!そしたらリリアスも帰って来るに違いない!」
「これはマズいですかね」
「マズいでしょうね」
樹里と皆川喜美は小声で呟き合い、そう判断する。
「それは出来ません。私たちはこれで失礼しますので」
「ま、まて!」
だが、仮にも異世界人であり、勇者になるはずだった人間。逃げるように立ち去る樹里達にこの世界の村人でしかないパッシュが追いつけるはずがない。
「危ないですね。急いでみんなと合流して二日後まで外にいましょう」
「そうですね。早く行きましょう」
急いで村中を周って他のグループと合流する樹里達。村を離れる頃には段々騒ぎが起こり出していた。
「これでは行商人の方と合流できそうにありませんね」
「はい。先生、どうします?」
「そうですね。確か、ここから数日歩いた先にベルルクという町があると聞きましたのでそこに行ってみましょう。数日分の食料なら持ち合わせがありますからね」
樹里の問いかけにそう答える皆川喜美。ここでタカキとリリアスの様な愚は犯さないところは流石先生なだけはある。
「行商の方は悪いですが先へと行きましょう。この急いだ方が良さそうです」
村の方を見るとこちらの方へと人が来始めていた。どうやら樹里達を捜索しているようだ。
「皆さん、急ぎましょう!」
『はい!』
そしてタカキがタブル村にいたことが発覚した以外には収穫はなかったが、期せずしてタカキが向かったベルルクへと一行は向かったのであった。
(それにしても、リリアスって女の子の名前だよね?谷上君、何してるの?)
移動中、樹里はそんなことを考えていたのだった。
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