第73掌 作戦開始前
それから一週間。
特に何かあったわけでもないので思いっきり端折るぜ。
この一週間、俺達は依頼を受けるか、宿でゴロゴロするか、買い物に行くくらいしかやらなかったからな。ちなみにリリアスとの埋め合わせの件だが、マリアーヌからの指名依頼が終わってからということになった。大仕事が残ってるからそっちが気になって、そんなに楽しめないってことだ。
リリアスの埋め合わせは端的に言えば、デートと言うことになった。
まあ、俺のリリアスに対する埋め合わせなので今回はリリアスに予定をすべて任せることにした。まあ、この世界で一般的なデートと言うものが俺には分からないのだから、今回のことはいい機会でもある。俺も楽しみなのでさっさと依頼を終わらせようと決意を新たにしたのだった。
他にこの一週間でやったことは、ダンガの新しい店をどこにどういう感じで建てるかを街を歩き回りながら話し合ったり、俺達の拠点を探したりだ。まあ、結構充実していたな、うん。楽しい時間だった。
後は依頼の拠点強襲のことについても話し合った。勿論、仲間達だけで、だ。何が起こるか分からないからな。
俺はともかく、リリアスたちはちょいとばかし危ない。確かに、俺のオールブーストの恩恵でステータスはかなりすごいことになっている。でも、それでも精々、マリアーヌの二倍くらいだ。対処のしようはある。まあ、ダンガは大丈夫そうだが。そんなわけで別行動するときは俺かダンガのそばにリリアスとアメリアはいるということになった。近くにいるだけでもしもという時に助けに入ることが出来るからな。
それとすっかり忘れていた報酬のことについてだ。俺も聞くのを忘れていたので作戦決行の前日にこっそり聞きに行った。マリアーヌはなんだが最初の印象から外れて行ってポンコツ臭がし出したからな。ハフナーさんとアルナスさんに聞きに行った。そうすると報酬はお金の他に何か望むものをいくらか出すということになった。可能なら国に保管されている武具とかもくれるかもということだ。
拠点が欲しいと言ったらまさかの一発OK。いいのかよ。俺達のこの一週間の拠点探しは何だったんだよ。まあ、楽しかったけど。
拠点は好きなものを選んでいいとのことだ。まあ、場所と建物は一から作るか、元からあったものを使ってもいいとのことだ。ここは仲間たちと要相談だな。
俺達がこのオークス王国に拠点を持つことは願ったり叶ったりということなんだろう。あっさりと神の使徒であるとバレたからな。よその国に行って、そこの国に肩入れされたら困るということだ。まあ、俺の神の依頼上、世界を旅しなくてはいけないことはアルナスさんは分かっているので拠点をオークス王国に建てることは歓迎するべきことのようだ。
まあ、このことを宿に帰って皆に話すとゲンナリしていた。まあ、これまでの拠点探しは何だったんだと皆も思ったのだろう。分かるよ、その気持ち。
そしてそのままその日は寝たのだ。明日はついに作戦決行の日だからね。
・・・
そして作戦決行当日。俺達はハフナーさんの屋敷に来ていた。俺達はてっきり当日になったらそのまま拠点に行って強襲すればいいと思っていたのだが、早朝に呼び出されたのだ。そして屋敷の庭で待たされている。
「なんだろう?当日になったら強襲するとしか時間に対しては聞いていなかったんだが・・・」
「さぁな。俺もさっぱりだ。そもそもこのグラスプには頭脳労働担当がお前しかいないんだからお前以外に分かるわけがないだろう」
さりげなく、リリアスとアメリアがそっち系統ではあんまり役に立たないってディスってない?ダンガさん。
「待たせたな」
ダンガと話しているとハフナーさんがやって来た。後ろにはアルナスさんもいる。
「いえ。それで何故、俺達はここに連れて来られたのでしょうか?」
「ああ。そのことなのだが、少しばかり作戦を変更しなくてはならなくなってな」
どういうことだ?
「何かあったんですか?」
「ああ。王子が拠点には行かず、王宮に籠っているのだ」
「はぁ。それは一体どうして?」
「どうやらマリアーヌの執事が強襲の作戦を王子派にリークしたようでな」
マジかよ⁉あの執事さんが⁉
「元々王子の専属だったようなのだ。今回の件に関してはマリアーヌの所にスパイに来ていたということになるな」
おいおい。やっちまったな。まあ、俺の神に事に関してのことについては実は細工を少しばかりしていたので大丈夫だが。
「すまない。君の神のことに関する情報も知られてしまったかもしれない」
「ああ。そのことなら大丈夫です」
「大丈夫?」
ハフナーさんは下げた頭を上げて聞き返す。
「はい。ハフナーさんとアルナスさん、それにマリアーヌ様以外の方にはちょっとばかり細工を施していましたから」
「一体どんな?」
「俺の固有スキルで裏切り行為をした者にはスキルMP操作で体内のMPが内から炸裂するようになっています」
「グロい!」
ダンガがその光景を想像したのか、叫んでいる。
「特に俺の個人情報を話そうとしたらその瞬間に・・・」
「「「「「その瞬間に?」」」」」
その場にいる全員が恐る恐る聞く。
「パァンッ!ってなります」
俺は手のひらをグーからパーにする。
そのことを聞いた五人は顔を真っ青にする。
「ということは」
「作戦について報告した瞬間に苦しみ出して、次の瞬間には真っ赤な花を咲かせているでしょうね。まあ、中身も飛び散っていると思いますが」
「だから、グロい!」
ダンガが「あああああ!」と叫んでいる。そんなにグロいのダメだったか?こいつ。戦っている時にもまあまあのグロ展開はあったと思うけど。そのことを聞いてみると
「俺は人間がそうなっているのが苦手なんだよ!」
とのことだ。まあ、モンスターと自分と同じ人間がグロいことになっているのでは大分違うからな。
((この人を敵に回さなくて本当に良かった!))
そんなことを俺を見つめながらハフナーさんとアルナスさんは思ったそうな。
「それはともかく、マリアーヌ様はショックでしょうね」
結構、重宝していただろうからな。あの執事を。
「ああ。まさか破裂しているとは思わないだろうが、裏切られたことはショックだろう」
あんな大事な場に連れて来ていたんだ。余程信頼していただろうに。まあ、それは今考えても仕方のないことか。
「さて、それはともかく作戦決行が出来ないということですか」
俺は脱力しながら聞くとそうではないらしい。
「いや、君たちにはそのまま強襲してもらう」
「拠点には王子以外の貴族たちがいるからね。それを殲滅してもらう」
ハフナーさんとアルナスさんがそう言う。まあ、やることは変わらないってことね。
「でも、それならなんで俺達を呼んだんですか?」
「王子がいなかったら君たちはどうするつもりだったんだ?」
「あー。確かにそうですね」
殲滅した後に困り果てると思う。最悪、気付かぬうちに殺しちゃったと判断して報告してしまうかも。
「そういうことだ。それでは早速向かってもらう。頼んだぞ」
「了解です。それじゃあ行きますわ」
俺達は身体能力をフルに使って出発した。その場から忍者のように跳び去ったのだ。このくらいは出来るようになったからね、リリアスもアメリアも。
拠点の場所は王都から少し離れた森の中にある王子の別荘。森の中にモンスターはすでにいないらしい。王子がわがままを言って森の別荘を建てたいからと森のモンスターを駆逐したらしい。大規模なわがままだことで。
そんなわけで俺達は森へと向かったのだった。
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