閑話3 情報収集の方針
今日は閑話を二話投稿します。
明日からオークス王位継承編の開始です。
それでは一話目をどうぞ!
時はタカキがフェルゲンに到着した日まで遡る。時刻はすでに夕方。
ライドーク神国を出発した水崎樹里や皆川喜美、それに他の八人はライドーク神国にある街の一つにやってきていた。移動中、モンスターなども出てきたのだが、幸いなことにランクの低いモンスターとしか出くわさなかったのである。おかげで無事に街まで到着していた。
実はライドーク神国側はこの街に着くまでに死ぬと思っていたのだ。本来、この街までの街道にはちょくちょく高ランクのモンスターが出るからだ。しかし、そうはならなかった。それはタカキがベルルクで戦った五百のモンスターの大群が問題だったのだ。ほとんどがスライムやゴブリンではあったが、強制進化によってランクはAへと上がっていた。そんな大群が少ししか国境が接していないとはいえ、隣国から現れたのだ。それを本能で察した高ランクのモンスターは急いで逃げたのであった。だから街道には低ランクのモンスターしかいなかったのである。
「街に到着したのはいいけど、これからどうすんの、先生?」
女生徒の一人が皆川に聞く。
「・・・」
皆川は悩んでいた。この世界のことを全く知らないのだ。どこに行けばいいのかも分からないし、どこの国なら大丈夫とかも分からないのだ。それに目的のタカキ探しもなんの情報もない。まさに八方塞がりだった。
「とりあえず、貰ったお金で宿に泊まりましょう。休みながら今後のことについてゆっくり話し合わないと」
そう提案し、みんなが賛成したので安い宿を探し、宿泊する。部屋は男子と女子とで二部屋取ることが出来た。
「それで今後のことですが・・・」
女子の部屋に集まって会議を始めた。
「まずはこの国とこの国の周りの国の情報を入手しないことには動くことが出来ません」
それについては同感だと全員が首を縦に振る。
「しかし、私たちの目的はあくまで孝希君の発見です。これは忘れてはいけません。それで考えたのですが、三つの班に分けて情報収集を行おうと思います」
「三つですか?」
樹里が聞き返す。
「ええ。一つ目の班はこの国の情報を調べる班。二つ目の班は周辺諸国の情報を調べる班。三つ目は孝希君の情報を集める班です」
「なるほど。確かにその三つの情報は今の私たちにとって一番欲しいものです」
「ええ。今日はしっかり休んで明日からの行動になりますが。それと班には一人ずつ男子が入ってください。それだけで面倒事がいくらか減ると思いますから」
「「「分かりました」」」
ちょうどこのグループには男子が三人いたので一人ずつ割り振ることが出来た。これは幸運だろう。
「それと冒険者という職業があるそうです。それに成りに明日はギルドという場所に行きましょう」
「冒険者ですか・・・」
女子たちの反応は良くない。まあ、日本の知識や認識では冒険者は荒事専門といった感じがするものだ。女子が嬉しそうにするのはまずないことだろう。
「なんで冒険者に?」
樹里が皆川に聞く。
「はい。冒険者というのはこの世界の色んな所にいるそうです。そんな彼らに情報を聞くのが一番手っ取り早いと思ったのです」
「でも、厄介事も絶対にやってくるよ?」
「それはそうですが、あのまま城に残って勇者になっていても同じことです。むしろ、国に利用されるだけ面倒かもしれませんし」
「それは確かに・・・」
「それに孝希君がもし一人で行動しようとするなら冒険者になっている可能性が高いですから」
「確かに」
自分たちのようにどこかの国の王様に召喚されたとは考えにくいと皆川も樹里も考えた。何故ならタカキ一人がいないからだ。他にいくらか生徒がいなかったらそれも考えられた。しかし、いなかったのはタカキ一人だけ。これは何かしらの事故にでも巻き込まれたと考えるべきなのだ。
「同じ冒険者になれば彼と接触しやすくなるでしょう。それも狙いの一つです」
「一つってことは他にもあるんですか?」
「ええ。私たちは現在、身分を証明するものが何もありません。国からは物資をいくらか貰っただけですから」
「・・・」
「そんな私たちが国外へと行くのは難しいのではないですか?」
「そうですね」
「しかし、冒険者なら依頼などで他国に行くそうです。これは今の私たちが手に入れなくてはならないものの一つであるはずです」
そんな皆川の話を真剣な顔でみんな聞いている。
「ですから、最初にまず、みんなでギルドに行き、冒険者登録をします。そこから三つに分かれて情報収集開始です。どうでしょうか?」
「はい。良いと思いますよ」
「ありがとう、水崎さん。みんなもいいですか?」
「「「「「「「「はい!」」」」」」」」
「それでは今日はこれでおしまいです。男子の三人は自分たちの部屋に戻って寝ましょう。明日は早朝から行動開始です」
「「「えー?」」」
駄々をこねる男子たち。
「別に早朝から出なくてもいいんじゃないですか?」
男子の一人がそう言う。
「いいえ。早朝からです。遅くなれば冒険者の人たちがギルドにやってきます。つまり黒髪や珍しい服などで目立つ私たちは結構な確率で絡まれてしまいます。それを防ぐための早起きなのです」
「「「はーい」」」
元々戦うのが嫌だったからこっちのグループに残った男子たちだ。厳ついおっさんとかに絡まれるのは勘弁なのだろう。早々に皆川の言葉に従った。
「しかし、先生。なんでそんなに詳しいの?」
「城にいたときに書庫で調べたの」
「それだけ?」
「うぐっ。そ、それだけです」
(い、言えない。こういう異世界冒険系の小説をたくさん読んでいたなんて)
「ふーん」
樹里は皆川の答えで一応納得したのか、すぐに引き下がった。
「ほぅ」
助かったとため息をつく皆川。
「それでは皆さん、明日から頑張りましょう!」
「「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」
読んでくれて感謝です。




