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第57掌 災難終了とこの街での最後の面倒事

本日二話目です。

キリの良い所を探していたら長くなってしまいました。

それではどうぞ!



 ドラゴン討伐の依頼終了から二週間が経った。俺達はフォーマスの訓練を片手間に旅立ちの準備を進め、ついに準備が完了した。そして今日はベルモンドさんからの依頼の最終段階だ。勿論、ベルモンドさんにフォーマスの様々な成長を見てもらうことである。ベルモンドさん以外にもリリアスにダンガ、アメリアもいる。他にも兵士の人たちや使用人たちも見に来ている。


 時間は昼も中頃。場所は練兵場。


「さて、それじゃあ、始めよう」


 俺がそう言うとフォーマスは無言で剣を構えた。俺はそれを見て魔法でゴーレムを三体作り出す。武器を持たせるのは可哀想なので素手だ。


 俺が何故、土魔法であるゴーレム生成を使えるのか。それはこの二週間で行った依頼が原因である。モンスターの討伐依頼では魔法を使うモンスターには滅多に出くわさない。魔法を使えるモンスターが珍しいのだ。俺がこの二週間でこなした依頼は盗賊退治。魔法を使えるだけで安泰と言われているこの世界で魔法を使える盗賊がいたことには驚きだが、どこかの魔法使い崩れなのだろう。俺は気にせず掌握してから葬った。その時に土魔法を掌握したのだ。


 人を殺すのは勿論抵抗があったが、今のうちに悪人で人を殺すことに慣れておかないとこの世界では自分やパーティーのみんなが危ない。それにすでにこの世界に来てから何度も命あるモンスターを殺しまくっている。モンスターが殺せて人が殺せないなどただの偽善者だ。


 そんな感じに考えて案外葛藤などもなく盗賊を討伐。スキルは特に俺が持っているもの以外にはなく、もし持っていても俺のスキルの下位互換であった。


「それじゃあ、いくぞ!」


 この二週間のことを考えながらもゴーレムに指示を出す。ゴーレムは俺の指示に従ってフォーマスに向かっていく。勿論のこと、ゴーレムのスペックは相当低くしてある。俺は掌握の力で最大レベルのゴーレムを作ることも出来るのだが、流石にそれは大人気がない。それにこれはフォーマスの成長を見る最終試験なのであって油断のできない殺し合いなどではないのだ。


「ふっ!せぁっ!」


 フォーマスはゴーレムのパンチや蹴りを躱しながらもなんとか自分も攻撃を繰り出す。フォーマスは胸よりしたを重点的に攻撃している。これも俺達の教えの通りだ。このゴーレムは傷つけられればそれだけ動きが鈍ってくるという人間仕様だ。


 そして俺達の教えとは、歪んだ根性の矯正と共に行った戦術教授だ。実力があるわけでもなく、相手よりも圧倒的に強いわけでもない場合、体の上側を狙うのは得策ではない。なんせ人間の目は体の上の顔にあるのだから。必然的に体の上側は注意度が高いし、下側は低くなる。相手の実力が一定以上になれば上も下も関係なくなるんだが、今のレベルのフォーマスには考えなくていいことだ。教えはしているがな。


「はぁ、はぁ」


 ゴーレムとの戦いでガス欠状態になりつつあるフォーマス。だが、ゴーレムの方もボロボロだ。恐らく次の攻撃で決着がつく。


「はぁ、はぁ。・・・ふぅ」


 息を整え、剣を構えるフォーマス。ゴーレムもそれに合わせるように構える。


 ゴーレムは数の有利でフォーマスを攻めるつもりだ。フォーマスを中心に囲いだした。


「!」


 フォーマスもそれに気づき、警戒する。


 そして次の瞬間、ゴーレムが先に動きを見せた。


 三体同時に多方向からフォーマスに向かって接近する。フォーマスはゴーレムたちが完全にフォーマスを包囲する前にゴーレムたちの中心から逃げ出す。そして一番近くにいたゴーレムに一撃入れて一体倒す。


 残り二体。


 ゴーレムが一体倒されたことによって左右からの挟み撃ちに変更する残り二体のゴーレムたち。


 フォーマスは挟み撃ちしようと駆けだしたゴーレムの一体に接近して少しの攻防を繰り広げる。そして、もう一体が来る前に戦っていたゴーレムを倒した。


 左右に分かれて挟撃しようとしたときに片方に近づくと、もう片方は必然的に離れることになる。これで一対一の状態を作り、離れているもう片方が来る前に倒す。これも俺達の教えの通りだ。


 残り一体になり、ゴーレムはフォーマスと攻防を繰り広げたが、最後は倒される。フォーマスは三体を連続で倒しているので疲れが蓄積されていた。だから、二体目と三体目のゴーレムとの攻防でいくらか倒した時間が違ったが、許容範囲内だ。


「よし。そこまで」


 俺の声にその場に倒れこむフォーマス。ものすごい息が乱れている。相当疲れているな。


「・・・合格だ」


「よし!」


 寝ころんだままガッツポーズをするフォーマス。ベルモンドさんの方に目線を向けるが、ベルモンドさんも満足気だ。


 フォーマスは未だに肩で息をしていたが起き上がった。


「これで俺からの訓練は終了だ。よくやり遂げたな」


「はい!ありがとうございました!」


 そう言って頭を下げる。


「あの生意気だったフォーマスがここまで普通の青少年になるとはな。タカキの教育はすげぇな」


「おい、ダンガ。俺はそこまでひどいことはしていないぞ」


「いやいや!最初のドラゴンから始まり、森の奥深くでのサバイバル。定期的にあるタカキとの戦闘訓練。俺との模擬戦。リリアスとアメリアとのバトル。これを二週間繰り返していたからな。こんな訓練内容、無茶苦茶にもほどがあるぞ。それにリリアスとアメリアとのバトルには罰ゲームまで設定しやがって。おかげで三人ともずっとガチで戦い続けなくちゃいけなくなってたし」


 だって、フォーマスの他にリリアスとアメリアにもしっかりと訓練を施さないといけないし。


 しかし、結構な頻度で兵士たちが見学に来ていたな。どうやら俺達の訓練に興味があったらしい。仕事熱心なことで。


「まあ、その話は置いておこう。それでベルモンドさん。依頼はこれで完了ということでいいでしょうか?」


「ああ。フォーマスも女性を自分の物にしようとしなくなったし、力で従わせようともしなくなった。文句なしだ」


「ありがとうございます。それでは俺はこれから依頼完了をギルドに報告してきます。それで王都への出発ですが、明日を予定しています。馬車の方の準備をお願いできますか?」


「分かった。明日の朝、馬車を屋敷の門前に用意しておく」


「ありがとうございます。それでは俺はこれからギルドに行くので」


「タカキさん!私も行く」


 アメリアがそう言って名乗り出た。


「分かった。それじゃあ、リリアスとダンガは明日の準備を進めておいてくれ」


「・・・はい」

「おう」


 リリアスがなんかついて来たそうにしていたが、こっちは二人で十分だ。今回は我慢してくれ。


「それじゃあ行ってくる」


 俺とアメリアはギルドへと向かった。




              ・・・




 ギルドに到着すると相変わらず受付嬢に混じって受付をこなしているギルド支部長の所に行く。


「あれ?あんたらかい。どうかしたのか?」


「ああ。あんたからの推薦依頼が達成したからその報告にな」


「そうか。報酬は受け取ったのかい?」


「ああ。それはすでに貰っている」


「そうかい。それで、他に依頼でも受けて行くかい?」


「いや、明日にはこの街から出るからな。挨拶に来た」


「そうかい。私も色々と心配しなくても済むから一安心だ」


 悪かったな。心配の種で。


「それだけだから。俺達は帰る」


「ああ。それじゃあな」


 俺はその場をあとにする。アメリアはギルド支部長に一礼して俺についてきた。


 ギルドから出て、歩いて屋敷に戻る。屋敷に戻る最中、人気のない路地を通った。そこで俺の把握能力に四人の人間が引っかかる。どうやら待ち伏せしているようだ。


「誰だ?」


 俺がその四人がいる方向に声をかけるとその四人はあっさりと出てきた。


 その四人は俺の見たことのある連中だった。というか意地悪メイド三人衆と俺のことが嫌いな謹慎受付嬢だった。この組み合わせだけで大体のことは分かる。


「お前らか。これ以上、トラブルを起こしたら流石に奴隷に堕ちるぞ。さっさと帰れ」


「そうはいくか!」


「あなたたちのせいで私たちはもうおしまいよ!」


「余裕ぶるな⁉」


「・・・」


 俺達に文句を言う元メイド三人。受付嬢は黙ってこちらを睨んでいる。っていうか、三人衆の最後の奴。いつも言葉の最後にクエスチョンマークを付けていたのに⁉に進化してる!


「三人は引き下がるつもりはないと。それであんたはどうするんだ?さっきから俺を睨んでいるばっかりだけど」


「私はここであなたがこの三人に卑劣な行為をしたとギルドに報告させていただきます」


「おいおい。そんな虚偽の報告したら流石にもう庇ってもらえないぞ?いいのか?」


「っ!うるさいですね!あなたが領主に告げ口したせいで私は当分受付に戻れないんですよ!なのでここで功績を残させていただきます」


「いやいや。俺のことが嫌いでもあんたがちゃんと説明していればこんなことにはならなかったんだ。他人の所為にすんなよ」


「そうです。あなた、恥ずかしくないんですか⁉そこの三人もです」


 アメリアも俺の味方として援護射撃してくれる。


「ベルモンド様の娘に急になったからって調子に乗んな!」


「痛い目を見ますよ?」


「構わないよな?」


「ここであなたがこの三人を痛めつければ私の報告でギルドの冒険者ブラックリスト入りになります。手を出さないでおとなしくやられてください」


 三人と受付嬢が勝ち誇りながら言う。


「そうか。じゃあ、ピンチの俺は仲間に助けを求めることにするよ」


「助け?そんなものありませんよ」


 受付嬢が馬鹿にしながら言う。


「いやいや。ここにいるじゃん。なあ、アメリア」


「わ、私ですか⁉」


「ああ。ここは君の固有スキルの出番だ」


「あ・・・」


「あれなら楽に決着が付けられる」


「そうですね。分かりました!固有スキル 審判、発動!」


 アメリアがそう言った瞬間、俺達の周りの空間が変わった。


「さて、これから悪に罰が下るぞ。気をつけろよ」


「はぁ?何言ってんの?」


「そんな脅しが通用するわけないじゃないですか」


「バカなの?」


「そんなお遊びに付き合うつもりはありません。覚悟してください!」


 そう言って四人が襲い掛かって来た。おいおい。受付嬢のあんたまで一緒にやるのかよ。


 俺はアメリアを離れさせてから四人の攻撃を避ける。


「避けんな!」


「そうです!動かず当たりなさい!」


「ふざけんな?」


 三人が叫ぶ。受付嬢の方は攻撃することに集中しているのか、叫んだりはしない。


「そろそろかな」


 俺がそう言った瞬間、俺の待っていた人物が二人、やって来た。


「何をやっている!」

「なんの騒ぎだい⁉」


 ベルモンドさんとギルド支部長だ。





読んでくれて感謝です。

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