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第52掌 現行犯逮捕



 俺が部屋から出てベルモンドさんのいるだろう執務室に向かうと、アメリアはすぐに見つかった。


 案の定というか何というか。


 アメリアは俺の考えていた通りにメイド三人に道を塞ぐようにして絡まれていた。


 俺は廊下の角に隠れて様子を窺う。


「あんた、どうやってベルモンド様に取り入ったのよ」


「自分の娘にするなんて、余程あなたのことが気に入っているのね」


「身体でも使ったのか?」


 メイド三人は各々が好き勝手に自分の考えをアメリアに言う。


「そういうことはお父様に直接言って下さい。私の決定ではないので」


 おお!アメリアに聞いていた話じゃ弱気だったのに、今は結構強気だ!いいぞ、アメリア!ちゃんとベルモンドさんのこともお父様って言っているし。


「ベルモンド様にそんなこと言えるはずないだろ!」


「ちょっと考えれば分かることでしょ?」


「馬鹿なのか?」


 いや、馬鹿なのはお前等だろ・・・。


「あなた達が今までいじめてきたのはただのアメリアでしたが、今の私は庶子とはいえ、お父様が認めた娘ですよ?私に直接言うのも十分ダメだと思うのですが」


「うるさい!」


「立場が私たちより上になったからって態度変えて」


「調子に乗るなよ?」


 いや、態度を変えたのは正しい選択だよ。前はともかく、今はメイドたちの主の一人になったんだ。そんな主がメイドに遜ってたら他の使用人がマイナスの感情をこのメイド三人へ持ってしまうだろう。それに、ベルモンドさんにも迷惑がかかる。自分の娘が使用人に遜ってたら他の貴族たちから何を言われるか分かったもんじゃない。


 アメリアはちゃんと考えてそういう態度を取っているんだ。貴族の屋敷で働いているならそういうことはちゃんと理解しておけよ・・・。


「もういいです。私はこれからお父様のところに行ってタカキさん達の昼食を用意するようにお願いしに行かなきゃいけないんです。そこをどいてください」


 アメリアが三人の横を通り抜けようとすると三人の内の一人、丁寧に喋っているメイドがアメリアの腕を掴んでアメリアの歩みを止める。


「調子に乗らないでくださいと言いましたよね?」


「離してください」


「ちょっとお話をしましょう。こちらへ来なさい」


 アメリアは抵抗するが、三人がかりでは抵抗のしようがない。


 はぁ~。そろそろ助けに行くか。アメリア一人でこの場を何とかすることがベストだったんだがな。これじゃあしょうがない。


 俺が出て行こうとすると腕を掴まれた。


 しまった。把握能力使ってなかった。多少なら能力なしでも気配を感じることは出来るが、さっきはアメリアの方に集中してたからな。気づかなかった。


「待ちなさい」


 俺を止めたのはベルモンドさんだった。


「どうしてですか?」


「これでアメリアをいじめていたという決定的な場面を目撃することが出来る」


「俺の報告だけでは足りませんでしたか?」


「ああ。一応、問いただしてみたんだが、しらばっくれたよ。あの三人は没落貴族の家から引き取ってね。世話ではないんだが、仕事を与えてあげたんだが・・・」


「見事に恩を仇で返されていますね」


「ああ」


「あの傲慢さ、多分まだ貴族気分が抜けてませんね」


「そのようだ」


 ベルモンドさんは困ったものだとため息をつく。


「それで言い逃れのできないところを押さえるということですか」


「その通りだ」


「でも、アメリアが危ない目に遭いそうなら即介入しますよ?いいですね?」


「ああ。それは勿論。むしろ私からお願いしたいくらいだ」


 そこから俺とベルモンドさんは探偵の真似事をしながらアメリアとメイド三人を尾行していく。するとある部屋の前で止まった。どうやらあの部屋に入るみたいだ。アメリアと三人はアメリアの抵抗虚しく、入っていってしまった。


「どうやらここで何かをするようですね」


「ああ。タカキ君は部屋の中を除けるスキルなどはあるかい?」


「あります。それで覗けばいいんですね?」


「ああ。扉を開けた瞬間に決定的な場面になる場面になったら教えてくれ。いや、タカキ君が扉を開けてくれ」


「分かりました」




                    ・・・




「こんな場所で何をするつもりですか?」


 ここは使用人の部屋の一つだ。この三人の部屋なのだろう。鍵を持っている。念のためなのだろう。部屋の扉は鍵を閉められる。


「そんなの決まっているだろ?」


「いつも通りのことですよ?」


「覚悟しろよ?」


 アメリアは部屋の隅へと追いやられ、三人に囲まれていた。


「なんでこんなことをするんですか?」


「そんなの決まってんだろ」


「あなたが憎らしいからですよ」


「わざわざそんなこと聞いてくんな?」


「私はお父様に聞いていました。あなたたちはもと貴族の方らしいですね?」


「それがどうかしましたか?」


「いえ、未だに昔の栄光に縋っているのかと思っただけです」


「てめぇっ!」


「今、貴族になったあなたが随分と見下してくれますね?」


「いつも以上に痛めつけるぞ?」


「どうぞ?やれるならやってください」


「お望みならその通りにしてやるよ!」


「後悔しないでくださいね」


「やってやるな?」


 三人はどうやら服の中に隠してあったのだろう工具を取り出した。


「それで私を殴るってことですか?」


「ええ。その通りです。謝るなら今の内ですよ?今、謝ったら工具はやめて素手にしてあげます」


 ニヤリと笑う丁寧口調のメイド。


「さっきも言いました。好きにしてください」


 アメリアはこう言ったが、内心は勿論怖いに決まっている。でも、ベルモンドに迷惑をかけるわけにはいかないし、タカキ達と一緒にここを出るのだ。この一瞬程度は我慢してみせると目を瞑る。


「そうですか。それでは遠慮なく」


 ひゅっ。


 そんな音と共に工具が振り下ろされた。




                 ・・・




 俺とベルモンドさんは部屋の外で気配を消して様子を窺っていた。ベルモンドさんは部屋の扉に耳を当てて、俺は把握能力で中を見て。


「タカキ君」


「なんですか?」


「君、気づかれずに中に入れたりはしないかい?」


「扉が開いていれば可能ですけど」


「では、こっそり気づかれないように扉を開けて入っては貰えないかね?やはり見えないと心配で」


「今はまだ話しているだけですね・・・・・・ヤバいっ!」


「な、なにがあったのだね⁉」


「今、メイド三人が工具を取り出しました。恐らくそれでアメリアを殴るつもりです」


「何⁉は、早く行かなければ!」


「待ってください。俺がこっそり行きます。アメリアが万が一工具で殴られそうになればすぐに助けますから。ベルモンドさんは開いた扉の隙間から中を覗いていてください」


「わかった」


 俺は扉を音を立てずに開ける。隠密行動と隠蔽のダブルコンボだ。ゆっくりと中に侵入する。どうやら何かを話している途中のようだ。


「さっきも言いました。好きにしてください」


 アメリアがそう言って目を閉じる。おいおい。よく見れば震えているじゃねえか。


「そうですか。それでは遠慮なく」


 メイドの一人がそう言って容赦なく工具を振り下ろした。


「っと」


 それを手で受け止める。


「なっ⁉」


 驚く三人。特に工具での攻撃を防がれたメイドはメチャクチャ驚いている。まあ、そうだよな。いきなり目の前に人が現れたらそうなるわな。アメリアもいつまでも衝撃が来ないことに疑問を抱き、ゆっくりと目を開ける。俺がいることにアメリアも驚いているようだ。でも、そんなことよりもだ。


「危ないな。アメリアに当たったらどうするんだ?」


 威圧を三人に叩きつける。


「「「⁉」」」


「本当なら俺の仲間で友達のアメリアに手を出そうとした時点で殺しているんだが・・・」


「「「ひぃっ!」」」


「ここはベルモンドさんに任せよう。いいですね?」


「ああ。しっかりと見ていた。もう言い逃れも出来ん。しっかりと処罰する」


「ベ、ベルモンド様⁉」


「どうしてここにいらっしゃるの⁉」


「どうして?」


 三人は顔を青くする。まあ、これでお前らはおしまいだな。


「アメリア」


「タカキさん・・・」


「ごめんな?本当はもっと早い段階で助けたかったんだが、あの三人がアメリアをいじめていたことをしらばっくれたらしくてベルモンドさんに決定的証拠を押さえて欲しいと頼まれたんだ」


 謝りながら俺はアメリアの頭を優しく撫でる。


「ううん。いいの。殴られる前に助けてくれたもの」


 俺に頭を撫でられていることで安心したように呟くアメリア。表情もさっきとは違い、安らかだ。


 それから俺はアメリアを連れて部屋に戻った。食事は部屋に持ってきてくれるそうだ。


 ベルモンドさんは使用人を呼んでメイド三人を連行していった。恐らく、良くてクビ、悪くて奴隷の罰が下るだろう。


 それにしても、俺。ついつい昔、妹を慰めるときにするように抱きしめてしまったけど。これってプレイボーイの行動じゃないよね?不安になるわー。まあ、アメリアは嬉しそうだったからいいんだけどさ。


 少し遅い昼食になったので急いで食べて、嫌がって自分の部屋に籠っていたフォーマスを強引に連れてフェルゲンの門へと向かった。




読んでくれて感謝です。

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