第47掌 固有スキル 審判
結局、ごちゃごちゃして話し合いは終わった。アメリアのことはベルモンドさんに任せて、興奮するリリアスは俺が宥めておいた。
防音の魔法がかかっているので騒ぎを聞きつけては誰も来ない。今考えてもよくベルモンドさんは会ったばかりの冒険者と密室で話そうと思ったな。
今、俺達は屋敷の客室にいた。ここは俺達に用意されていた部屋で依頼のために一か月過ごす部屋だ。ちなみにリリアスも一緒だ。まあ、冒険者だから部屋を分ける必要はないと判断したんだろう。多分、ベルモンドさんじゃなくてこの部屋を用意した使用人が。
「リリアスがあそこまで取り乱すなんてな」
俺はからかい半分でリリアスを茶化す。今、冷静になってリリアスはしょげていた。まあ、急にあんな感じになったんだ。分からなくはない。
「だって、婚約者だなんて・・・」
「あれは神の使徒である俺を取り込みたかったんだろう」
「でも!アメリアさんは満更でもなさそうでしたよ!」
「そ、それは俺からは何とも言えない・・・」
「うぅ」
俺とリリアスのやり取りを見てダンガはやれやれって感じで肩をすくめていた。
「リリアス、タカキ。そこまでにしておけ」
「でも!」
「リリアス。ここでとやかく言っても仕方ないだろ。何も変わりはしない」
「そ、それはそうですけど・・・」
「そうだな。リリアスには悪いが、俺にはどうしようもない。この話はまだどうなるか分からないんだ。少なくとも依頼を完遂するまでは時間がある。それまでに決めておけばいいことだろ?」
「はい・・・」
元気なさそうなリリアス。頭では分かっても心が納得しないんだな。
「それまでに頑張ればいいんだよ。頑張れリリアス」
ダンガがリリアスに耳打ちしている。何言ってんだろう?リリアスも表情がキリッとなってる。年下の女の子がキリッとしているとなんか和む。
「タカキ。アメリアを仲間に入れたい、というか入れるのは反対しないが、理由を教えてくれないか?奴らと戦う危険な依頼にただの女の子の友人をお前が巻き込むとは思えない」
「ああ。ベルモンドさんとの話でも言ったろ?アメリアにはレアな固有スキルがあるんだよ」
「確かに言っていましたね」
「その固有スキルって何なんだ?」
「それはアメリアに直接聞いた方がいいんだが・・・」
まあ、後でアメリアには謝っとくか。
「いずれ話すんだからいっか。いいか?アメリアの固有スキルは審判」
「「ジャッジメント?」」
「そう。相手にどんな思惑があるかが分かる。っていうのが今アメリアが使える能力」
「その言い方だと他にも能力があるな」
「ああ。その通りだ、ダンガ」
「審判には他に何の能力があるんですか?」
「審判には相手が抱いたその思惑の善悪で能力が違う。簡単に言えば、より悪いことをしようとした相手に厳しい罰が与えられる」
「厳しい罰ってのは?」
「まあ、その状況によるだろうが、戦いの最中とかなら攻撃になったり、戦いで何かしらの強制力が働いたりする」
「めちゃくちゃ強力な能力じゃないか!」
「まあ、強力な分だけ条件もある」
「条件ですか?」
「ああ。この能力は使う瞬間、自分にも効果が発揮されるんだ」
「「自分にも?」」
今日のリリアスとダンガはよく声がハモるな。
「ああ。つまりアメリアは悪いことするときには固有スキルが使えなくなる。たとえ悪いことをした結果、誰かのためになるとしてもスキルを使った瞬間、自分に固有スキルが発動してしまうんだ」
このスキル、見境がないんだよな。善悪の判断は自分じゃなくて自動(恐らく神だろう)だし。
「まあ、アメリアのスキルの説明はこんなところかな」
「ありがとうございます」
後でリリアスとダンガに話したことをアメリアに謝っとかないとな。
「それで、ベルモンドさんの依頼だけど」
「ああ、そうだったな。それもあった。どうなるんだ?」
「続行だろう。俺がフォーマスに憑りついた眷属を取り除いたからな。依頼については変更なしだ。厳しい環境にフォーマスを置いて性根を治す」
「フォーマス君のあの性格は眷属が憑いていたからじゃないんですか?」
「いや、あれは元々の性格だ。しかも女の子に目がない典型的な馬鹿貴族の卵だな」
「どうして分かるんだ?」
「俺とダンガの挨拶には反応しなかったのにリリアスには反応したからな」
「なるほどな」
「ダンガと一緒だ」
「うっ。根に持ってたのか・・・」
あれはないでしょ。大人としても。
「それにアメリアもフォーマスと何かあったっぽいからな」
「そうなのか」
「ああ。強くなったと勘違いして、自分なら何をしても自由だと考えて女の子に手を出しているんだろう」
まあ、手を出そうとした女の子が悉くフォーマスは嫌そうにしていそうだけどな。現にリリアスは嫌そうな顔をしているし。
「そこら辺もしっかり治してやるとしよう。俺達で」
「はい!」
「おうよ!」
リリアスはともかく、ダンガもやる気だな。多分、フォーマスと一緒にされて嫌だったんだろうな。
「あ、あの~」
やる気を新たにした俺達に声をかけてきた人が。そこには扉から顔をちょこっと出して覗いているアメリアの姿があった。
可愛いな、おい。
「お、おう。どうしたんだ?」
「私もこれから皆さんの仲間になるのだから一緒に依頼を受けろとベルモンド様――――じゃなくてお、お父様が」
恥ずかしそうにベルモンドさんを父と呼ぶアメリア。どうやら、あの後にそう呼ぶように言われたんだろう。アメリアも特にベルモンドさんを恨んだりとかはしていないしな。
「そっか。じゃあ、これからよろしくな」
「はい!」
「それとさ、これからアメリアは俺の友達ではあるけど、仲間にもなるんだから敬語はやめようぜ?」
「でも、リリアスさんは敬語ですよ?」
「いえ、私は年上の人には大体敬語なんです。そういう癖が付いちゃってて」
「そうなんですか」
俺も初めて知ったわ。ずっとタメ口でもいいのにと思ってたけど。
「まあ、そんなわけだからさ」
「は、はい。分かりました」
「言ってるそばから敬語になってる!」
「あ!わ、分かった」
うんうん。それでよし。俺もダンガもうんうんと頷いている。ダンガもなんだかんだで女の子好きだからな。初対面で俺を無視するくらいに。
「それじゃあ、アメリアにも俺達のベルモンドさんの依頼のこれからの予定を話しておかないとな」
それから俺はアメリアにこれからの予定を話したのだった。
読んでくれて感謝です。
ついにアメリアが仲間入り!
何故かタカキの婚約者に。なぜだー(棒読み)




