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第462掌 貴族(親)には勝てない



「いや~。随分と久しぶりなのでな。自分を抑えられなかった。すまんすまん」


 そんなことを言って快活に笑うのはベルモンドさんだ。


 すでに俺達も屋敷の中に入り、応接間で互いに座って落ち着いている。いるのは俺とアメリアとベルモンドさんだけだ。他の皆は初対面の人もいることだし、遠慮してもらった。


「本当に気を付けてくださいよ。さっきは俺が吹っ飛んだ先にいたからどうにかなりましたけど、いなかったら大怪我してたところですよ?」


「いや、私もまさか娘がここまで強くなっているとは思ってもみなかったんだ」


 確かに。まさかあれから自分の父親をうっかり吹っ飛ばしてしまうほど強くなるとは思ってもみなかっただろう。っていうか、普通にそんなこと想像することなんて出来ない。


「それで?今回はどんな理由で訪ねてきたんですか?そもそもよくここが分かりましたね」


「ここが分かったのは簡単だよ。君達は有名人だからね。ちょっと街の人に君達の特徴と今までしてきただろうことを伝えただけさ。一瞬で理解して教えてくれたよ」


「ぐむぅ」


 納得いかなそうに唸っているいるので今までフテていて話していなかったアメリアだ。つい、父親を吹っ飛ばしてしまい、危うく大怪我をさせていたことを反省しているのだろう。でも、納得はしていないといった表情だ。


「それで?ここに来た理由は?」


「勿論、アメリアに関してさ」


 まあ、訪ねてくる理由なんてそれくらいしかないもんな。


「近々、戦争が始まるみたいだね」


「っ⁉なんでそれを・・・」


「自国だからってボーっとはしていられないのが貴族でね。この情報は国内に散らばっている間者からの情報さ」


 貴族って本当に色々と面倒だし、大変なんだなぁ。俺は絶対になりたくないわ。


「まあ、こんなに早く知れたのは偶然なんだけどね。本当に仕事で王都に用があってね。アメリアにも会えるしちょうどいいかなって思ってたところにこの情報が飛んできたのさ。ビックリしたよ。娘に会いに来たら戦争なんていう物騒な内容を聞く羽目になるんだからね」


「・・・それで?肝心の内容は?言ってないじゃない」


 珍しくふくれっ面でそう呟くアメリア。


「最初はさっきも話した通り、ただ顔を見に来ただけなんだけど・・・」


 そこで一旦、言葉を切ってこちらの様子を確認するベルモンドさん。


「戻ってこないか?」


「・・・・・・・・え?」


 軽く、しかしハッキリとそう発言するベルモンドさん。アメリアは言っていることは一瞬理解できず、固まってしまう。


 しかし、それも無理もない。何せアメリアは今までベルモンドさんを雇い主としか見ていなかったのだ。俺達と出会ってから自分の父親だと分かったんだ。そんな短期間で溝が埋まり切るわけがない。アメリアの反応も仕方ないことだ。


 なんて思うのは俺の身内贔屓だってことも分かる。これじゃあフェルゲンのギルドマスターのおばさんのことを強くは言えないかもな。


「ちょっと待ってください。それはいくら何でもいきなり過ぎます。それに俺は断固反対ですよ。アメリアは俺達の大切な仲間でいなくてはならない存在なんです。急に返せって言われても納得できるわけありません。それに俺にとっても必要な人なんです」


 俺はベルモンドさんにそう言い切る。


「・・・そうだな。確かに自分の気持ちを優先し過ぎたかもしれない。それに」


 そう言ってアメリアの顔を見るベルモンドさん。


「そんなことを言われてこんなに嬉しそうにしている娘を無理やり連れて帰ることなんて出来ないさ」


 ベルモンドさんにそう言われて俺もアメリアの方を向く。そこには顔を真っ赤にしてニヤけているアメリアの姿が。


「な、なによっ」


「別に~。父親としてはちょっと色々と思うところがあるだけですぅ~」


「子供か!」


「まあ、実際にこんなに自然にフランクに接してくれるようになっているんだ。タカキ君に任せて良かったと思っている。だからさっきの発言は撤回しよう」


 あれ?なんかやけにアッサリと引き下がるな?っていうか、そもそもほとんど話の主導権というか、流れをベルモンドさんが握っていなかったか?


「・・・ベルモンドさん」


「なんだい?」


「試しましたね?」


「えっ?」


 俺の言葉に驚くアメリア。そしてアメリアも自分でここまでの流れを思い返して思い至った。ついでに顔が真っ赤にもなっているけど。これは照れというよりも恥ずかしさと怒りかな?


「親元を離れた娘と婚約者の仲を知りたいと思うことは当然でしょ?」


「言いたいことは分かりますが、場面ってものを考えてください」


 戦争するって時にあんなことを言われてしまったら信じてしまうだろ。


「まあ、悪ふざけが過ぎた部分はある。それは済まなかった」


 貴族として長年生きてきた人にはまだまだ騙し合いで勝てるわけもないか。


「ん?でも、いい案かも」


「えっ⁉」


 俺の発言がベルモンドさんの元にアメリアを帰すことを指していると思って真っ赤だった顔を真っ青にするアメリア。表情がコロコロ変わって面白いとは思うけど、勘違いさせたままではいけないのですぐに訂正する。


「別にアメリアにパーティーメンバーから外れろって言ってるんじゃないさ。ただ、ちょっとした里帰りはいいんじゃないかって思ったんだ。ここから先はそれどころじゃなくなるかもしれないし」


「それはいいね!是非にでも!泊まる時はうちを使ってくれて構わない!」


 ベルモンドさんも嬉しそうだ。


「そうですね!皆にも伝えてきます!」


「えっ?えっ?ちょっと急にどうしたの?展開早くない?急じゃない?」


 アメリアは戸惑っているが、いいのだ。


 俺が最初に召喚された場所であるタブル村はライドーク神国とかなり近い場所だ。雰囲気を知るにはちょうどいいかもしれない。


 まあ、でもこれは仲間内だけの時にな。戦争に多分参加しますなんてベルモンドさんの前では言えないし。




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