閑話19 それぞれの思惑で動き出す者 その2
あれ?
思ったより閑話に割く割合が少ないぞ?
そんなわけで予定より早く本編に移るかもです。(;^ω^)
ライドーク神国。その王城の一室にて。
「ガゼル。お前があの使徒を殺すことが出来ないとは思ってもいなかったぞ」
「中々やる奴だった。それにあの時のダメージからして、あのまま奴の仲間と戦っていたら負けていたかもしれん」
「お前が仕留めきれなかった使徒の実力にも驚いたが、仲間も大きな力を有しているのか?」
「流石に奴程ではなかったがな。軽く人間のレベルを超えていたぞ」
ガゼルの言葉を聞き、眉をひそめるのは神の眷属のリーダーと言ってもいい存在であるセフィーロ。
「困ったな。正直、今回お前が倒してくれる体で主復活のプランを立てていたから大幅に修正しなくては・・・。それにこれによって配下が独断専行してな。他国に向けて宣戦布告してしまったようなのだ。ガゼル。少し抑えに回ってくれないか?」
「俺がどうにか出来るようなものなのか?自分で言うのもなんだが、力技しかないぞ?いいのか?」
「そこまでしろとは言っていない。お前は俺の名代として戦争を遅らせてくれさえすればいい。こちらも準備にまだ時間が掛かってしまうからな」
「?何をしているんだ?」
「まだ言えない。だが、これは今後の障害を排除するために必要なものだとだけ言っておこう。それに準備が終わり次第、お前や他の者にも伝える」
「その内容を知っているのは?」
「俺とアリトスだけだ」
「まあ、納得だ。頭脳組だしな」
「その括りは若干納得出来ないが、まあいいだろう。頼めるか?」
「ああ。任せろ」
そう言って退室していくガゼル。
「それで?アリトスはこの流れを知っていたんだろ?どうして教えてくれなかったんだ?」
セフィーロのその言葉にどこからともなく声が聞こえてくる。そして誰のいなかったはずの部屋にアリトスが現れる。神出鬼没なアリトスを自称しているだけはある。セフィーロ達、神の眷属の仲間内にしか言っていないが。
「アハハっ!勿論、我々の目的に必要だと判断したからさ!この流れこそが必要だったのだよ!」
「どういうことだ?」
「セフィーロに今回のことを話したらこの流れに、つまりは戦争になることを回避しようとしただろう?」
「ああ。その通りだな」
「そしたらまあ、なんだかんだで戦争は起きないわけだ。セフィーロが事前に戦争にならないように準備していたからね。でも、その所為で本来の目的のための準備の方が遅れてしまう」
「まあ、あり得るだろう。神の僕である俺でも流石に戦争一つを止めるのだ。準備の一つでも遅れてしまうだろうよ」
「そうなるよね。それでもって、敵である神の使徒タカキが再び旅をしてくるわけだ。その目的地はここ、ライドーク神国なんだよ」
「何故、この国に来ることに?」
「懇願されたからさ!彼の同郷の者に。残りの同郷の者、つまりはこの国にいる勇者達の様子が知りたいと言われてね!その言葉に彼は頷く。確かに彼も気にはなっていたからね。そしてこの国にやって来て、この国の我々の配下がうっかり我々のことを話してしまう。最後にはこちらの計画の邪魔をされて目的に大きく後退してしまうってなわけだ!」
何故かドヤ顔でアリトスはセフィーロを見る。少しその顔にイラっとするセフィーロだが、アリトスの言ったことが実際に起こりえることが理解出来た。こちらの意図を全く汲み取らず、戦争など起こしてしまうからだ。
「分かったかい?今回の戦争はいい隠れ蓑になるんだよ!戦争を遅らせるのは一言いうだけでいいわけ!こちらの準備に支障もあまりないってこと!」
「ふむ・・・そうだな。それならこの流れはこちらとしては最善に近いわけだ」
「そういうこと!それじゃ納得してもらったわけだし、私はもう行くよ!」
「どこに行くのだ?」
「今度はノワール魔王国に行くことにするよ!敵側も流石に彼の行った後に何かあるとは思っていないだろうし」
「あまり派手にやるなよ?バレないことが一番だ」
「別に派手にいくつもりはないよ!これを誰にもバレないような場所に置いてくるだけだし!」
そう言ってかざしたのは黒い石がいくつもつけられたペンダントのようなもの。
「そう言ってトトマン獣王国で騒ぎを起こしたのを俺は忘れないぞ」
「あ、あはは!あれはちょっと気を緩め過ぎたかな!まさかあそこで戦闘狂の馬鹿王が出てくるとは思ってもみなかったし!」
「あの愚王は上位の存在である我々神の使いを超えるべき壁としか見ていないからな。見つけたら倒そうと躍起になって探しに来るだろうし」
ため息をつきながら背中を椅子に預ける。
「まあいい。気を抜かずに頼むぞ。それは試金石となるのだから」
「分かってるって!そっちこそ準備の方、しっかりしておいてよね!彼がここに来た時点で準備が完了していなかったらやり直しすることになるって思ってもらって構わないから」
「それは流石に勘弁してほしいな。よし、こちらも急ぐとしよう」
それだけ言葉を交わしてアリトスはその場から消える。
「さて。復活に必要な物は後三つ。全部あちらにあるとは思いもしなかったが。全く、忌まわしい神だ」
そう言いながら、セフィーロもその部屋から消える。後には誰もいなくなった部屋だけが残されていた。
「あれ?さっきまで誰かいたような・・・?」
人の気配がして入ってきた使用人は不思議そうな顔で部屋の掃除を始めるのだった。
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