第456掌 ファッションショー
すみません!
また寝落ちしてました!
仲間達への紹介も無事に済み、俺達は一旦宿に戻ることになった。こちらの遠征の仕事もまだ終わっていないからこの国を出発する時までファイン(偽)には王城で待ってもらうことになったのだ。
そうして俺達は残りの数日を魔法学園の生徒達の訓練に費やしていった。
そして遠征最終日。
この日は出発の正午までを自由時間としてある。この時間で生徒達が何をするのかは干渉しないつもりだ。流石に俺もすでにこれまでの訓練などに顔を出しているから生徒も馬鹿なことはしないはずだ。
でも、結局誰とも打ち解けられなかった・・・。ずっと笑顔を心掛けていたんだが、なぜか逆に怖がられてしまった。どうしてだろうか?別に目が笑っていないとかそういうことはなかったと思うんだけど。
そんな考えを仲間達に話したところ、満場一致で「お前がしてきたこととの落差が怖い」とのこと。つまり、怒ったらめちゃくちゃ怖いから萎縮してしまったということだ。
「まあ、それでもステータスの伸びとかが良さそうな奴には結構アドバイス出来たんじゃないかな?」
歩きながら俺はそう呟く。
現在、俺はファイン(偽)を迎えに王城へと向かっている最中である。今日は仲間は誰もついて来ていない。仲間にも自由時間を自分のために過ごすようにと言ってある。それに俺についてくるなとも。何人かはついて来そうだったからな。
歩いている最中に見える俺の女装バージョンのポスターとかそういうのは心の安寧のためにシャットアウトしている。心を無にするのだ。
王城の中に門番に入れてもらい、案内されてファイン(偽)の部屋へと向かう。
・・・気のせいか、歩いて奥へと進んでいく毎に徐々に女性物の置物の数が増えている気がする。それに建物の雰囲気というか、装飾とかもドンドンおしゃれになっていっている。王城の雰囲気に似合わないというわけでもないが、俺の頭の中で彷彿とするのはおとぎ話に出てくるようなお姫様のいるお城だ。随分と可愛らしい。男としてはこんなファンシー全開な場所で住みたいとかは全く思わないけどな。
そして俺が案内された部屋の扉には
『ふぁいん♡のへや』
と書かれている札付きの扉だった。
「――――――っ!!!」
俺はそれを思いっきり殴りつけたい衝動に駆られたが、何とか耐えることに成功した。
そのまま深呼吸をして部屋をノックする。
『は~~い』
間延びするような声で俺のノックに返事をするファイン(偽)。
「タカキだ。お前を迎えに来たぞ」
『ちょっと待って!もうちょっとだから!』
なんで俺は扉越しにこんな応酬をしているんだ?女の子とならともかく、男同士でやっても何にも嬉しくない・・・。
中からドッタンバッタンと聞こえてきたが、中で一体何が起こっているのか。見当もつかない。
戦慄していると、扉が開いた。
「おまたせ。ちょっと中に入って待ってて」
「別に俺はここで待っているのでもいいんだけど」
そもそもの話、お前の部屋に入りたくない。
「いいから!入って」
結構強引に部屋の中に入れられてしまう。
部屋の中は普通に広くて普通に結構何でも揃ってしまっている。流石はお金持ちな王族である。こんなに完璧に住んでいたら欲しくなるようなものを揃えているなんて・・・。
「すごいじゃないか」
俺はつい、そんな言葉を発してしまう。
「そう?」
ファイン(偽)はそんな俺がこぼした言葉に嬉しそうにしている。
「まあこれで部屋の扉についている札とか、この部屋に来るまでにあった装飾などがなかったら完璧で何も口出しすることもなかったろうに・・・」
残念だ。
「なんでそんなに残念そうにするのよ」
「多分、お前がこの国に戻ってきた時には外の飾りつけはなくなっているぞ?下手したらお前の部屋の扉も綺麗になくなっているかも」
「な、なんでっ⁉」
「そりゃ、これだけ派手にやらかしていたらそれくらいのことはするんじゃないのか?」
むしろ、よくも今まで自由に出来ていたもんだ。俺なら蹴飛ばしてでも辞めさせるけど。
まさにorz状態になったファイン(偽)。
「それより、早く準備をしろ。そんなに時間があるってわけでもないんだから」
「はいはい。分かりましたよー」
投げやりになりながら準備を再開するファイン(偽)。
「それで?なんで俺を部屋に入れたんだ?」
「そんなの決まっているじゃない。ファッションや化粧品について意見とか感想を聞くためよ。私が今から素早く着替えるから感想を聞かせて。化粧もするから」
「いいけど、時間は大丈夫か?そんな化粧なんてゆっくりしている暇はないけど」
「任せて!今まで散々、女装してきたわけではないわ!」
全然自信満々に言うことじゃないけどな。むしろ、少しは恥ずかしがれよ。逆にこっちが恥ずかしいよ。
そこから数時間。俺はファイン(偽)のファッションショーに付き合うことになるのだった。・・・・・・・案外センスが良かったのがイラついたのはここだけの話だ。
そしてついにファイン(偽)にとっての旅立ちの時間になった。
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