第451掌 頭痛と胃痛、どっちが辛いんだろう?
大怪我をしてから一週間。
怪我自体は二日もしたら普通に完治したのだが、大人しくしておけ!という仲間達からのありがたいお言葉をもらい、ニートよろしくゴロゴロとダラしない日々を過ごした。
「さて。そろそろ自由に動いてもいいだろ」
流石にこれ以上は逆に体が鈍る。っていうかすでに若干の鈍りが出ている気がしないでもない。
「まずは王様に謝罪と頼み込みだな」
あのオカマ馬鹿を優勝させてしまったことの謝罪と、改めて協力者になって欲しいという嘆願をしに行かなくてはな。対価としてある程度価値のあるものを用意しておかないと。
「良い物の候補としては今までに討伐してきた魔物の素材とか、俺の出来ることなら手伝うとか、そこら辺はいいというか、落としどころかな?」
流石に国王が欲しがるものなんて分からない。戦力が欲しいなんて言われたら流石に断るけど。っていうか、協力自体止めておこうかな~なんて気になる。最初に欲しがるのが武力じゃ俺としても協力者にするのは後々何するか分からなくて怖いし。
まあでも、考えてもしょうがないよな。王様の思考なんて分からないし。そもそも偉い人になったことがないから分かるわけないし。精々数人から数十人のリーダーになったことがあるくらいだし。
「さてと。それじゃ行きますか」
俺はベッドから立ち上がった。
・・・
俺はのんびりと歩いて王城へと向かう。すでに祭りは終了しており、街の賑やかさは半減していた。いや、祭りの半分も賑やかなら十分だとは思うけどな。
本来なら俺は魔法学園の生徒と一緒にオークス王国に戻っているはずなのだが、こちらのギルドの提案というか、厚意によって一週間ほど遠征日数を伸ばしている。遠征先での実地訓練を冒険者ギルドの選出した冒険者と一緒に行ってくれるというのだ。
この提案に学園側は即決で承諾。そして今も依頼に精を出しているという。それにリリアスやダンガ達も駆り出されているわけだ。俺も参加したかったんだが前述の通り、大人しくしてろと言われたので大人しくするしかないわけだ。女装関係でちょっとわがままを通したからな。これくらいは甘んじて受け入れるさ。
そんなわけで俺は現在一人でのそのそと歩いているわけだ。勿論、監視役がいないわけでもない。
『にゃ!』
自分もいるぞと言わんばかりに鳴くリア。俺の影の中で存在を主張する。
リリアスの奥の手は契約獣がいないと力を発揮出来ないが、そもそも素の状態で勝てる相手がまずそうそういない上、代わりにオルティについていくように頼んでいる。
本当はオルティが俺の監視をすると言って聞かなかったのだが、リアならよりコンパクトで影に隠れることも出来ると監視にピッタリなのでリアとなった。あんまりリアなら俺の行動に口出しもしないし、こっちとしてもありがたい。いや、オルティが嫌ってわけじゃないんだけどね?
「それにしても女性選手の人気凄過ぎ・・・」
テンションを落としながらそう呟く。
『にゃ?』
「うん?ああ、あれを見てテンション下がって下がっているだけだから気にしないでくれ」
一つの店に視線を向ける。そこには俺の女装姿がポスターとしてデカデカと張り出されていた。
なんでも祭りが終わってから一か月程度はこういった選手の人気にあやかろうとする商人が後を絶たないのだとか。俺としては羞恥心で消えてしまいそうだがなっ!!!
しかも、そこそこ人気が出ていることが地味にダメージ。
「しかし、リアよ。悪いが王城に着いたらそこで見聞きしたことが黙っていてくれよ?俺の今回の出来事とそれに付随する黒歴史の拡散を防ぎたいんだ」
『にゃーにゃ~』
しょうがねぇな~とでも言いたげに表情を歪めるリア。
「助かる」
『にゃにゃにゃっ。にゃにゃふすにゃ』
俺とお前の仲だろ?気にすんなとでも言っているようだ。えらくハードボイルドな答えだな。いや、俺としてはありがたいし、文句はないんだけどな?
そうこうしていると王城に到着した。
そこから礼儀正しい門番に今回も俺が来たことを王様に伝えてもらい、少し待ってから入城する。
「う~ん」
『にゃむにゃ?』
「どうしたかって?いや、今までトラブルもなくあっさりここまで来れたことに嬉しさ半分、疑い半分になってしまってな・・・」
今までどこの門番に行ってもまず疑われてからの尋問、か~ら~の~?反撃!が板に染み付いちゃったみたいだ。
そんな会話をしながらリアとのんびり待っていると門番が声を掛けてきた。
「お待たせしました」
「遅いぞ。ってまさかっ⁉」
「ええ。そのまさかですよ。早く連れてこいとのお申し出です」
どうやら大分ファイン(偽)のカミングアウトが後を引きづっているご様子。王様は現在寝室で仕事中とのことだった。っていうかどう考えても倒れたよな。頭痛と胃痛で。
まあ、この国の王子がアレだし。しかもカミングアウトしやがったし。多分、色々と言いたい貴族や婚約者様がいるんだろう。いや、婚約者は本人に直接確認しに行けって話なんだけどな。
しかし、俺を王の寝室に通してもいいのかね?俺、部外者なんだけど。
「怒っているかな~?」
「さあ。私は何も聞いていません。ただあの美の大会から王の元気がみるみるうちになくなっていくのは分かりましたが・・・」
それは・・・原因は一つだけですね。
俺はノックする。
「王様。タカキです。入りますよ」
俺は少し強引に答えを聞かずに扉を開けたのだった。
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