第450掌 治癒スキル獲得
怪我をしたまま戻ってきたのは元々俺がリリアス達と一緒に泊まっていた宿屋だ。
「早くここに寝てください!」
なけなしの魔力を使って俺とリリアスだけで宿屋まで転移してきた。流石に全員を転移するだけの魔力はなかった。っていうか、この転移で本当に魔力を使い切ってしまった。
「あ、ああ」
「回復魔法は無理なんですよね?」
「魔力が残っていないからな・・・」
「私達の中には回復魔法使える人いませんでしたし・・・あっ、そうだ!ポーション買ってします!」
そう言ってリリアスは部屋を飛び出していった。
俺の異空間の中にある程度道具一式は揃えてあるんだが、魔力がカラカラ状態で開けることが出来ないのだ。
「こういう時こそ」
俺はこんな機会もないだろうと心配してくれている仲間達に対して悪いし、不謹慎かなと思うがやっておく。
「『掌握』」
俺はボロボロの体が自然治癒で治っていく状態をイメージする。実際に普通の人間よりも回復は早いが、それを加味してもまだまだ回復まで時間が掛かる状態だ。そんな状態でならより自然治癒の力は増すだろう。そこを意識して掌握する。
――――――自然治癒スキルを掌握しました。
――――――続けてスキルを上位へと変換します。
――――――成功。統合スキル、治癒スキルを習得しました。
よし。上手くいったみたいだな。相変わらずあり得ないくらいポンポンとスキルが手に入るな。たまに怖くなるわ。
内容を確認してみるか。何々?
・治癒スキル
『自然治癒』『高速治癒』『痛覚鈍化』『後遺症防止』
・『自然治癒』
自身の自然治癒能力を高める。レベル10で人体で可能な最高レベルの治癒が可能。
・『高速治癒』
自身の治癒の力を早めることが出来る。レベルごとに10%速度アップ。
・『痛覚鈍化』
自身に対する痛覚を鈍くさせる。
・『後遺症防止』
後遺症が残るような怪我・病気に対して防止効果を持たせる。レベルごとに20%カット。受動スキル。
結構いいじゃないか。『痛覚鈍化』のスキルはどこかで他の統合スキルと被りそうだけどな。
「さて。本当なら使いたいところだけど・・・。せっかくリリアスがポーション買いに行ってくれているし、待ちますか」
流石にボロボロ状態のままでずっと待つのは流石に俺もつらいので治癒スキルの『痛覚鈍化』だけ使っておく。
そのままリリアスをベッドに寝転んで待っていたら部屋のドアがいきなり開いた。
「タカキさんっ!!!」
入ってきたのはカリーナさんだ。かなりの勢いだったのか、ドアが壊れかけている。後で時空魔法で直しておかないとな。時空魔法でドア直しっていうのも贅沢な話だけど。
「大丈夫ですかっ⁉さっきリリアスさんと会ってタカキさんが大怪我したって聞いて!」
「だ、大丈夫だって。確かにボロボロだけど」
っていうか、かつてないほどにボロボロだけど。あれ?この世界に来て一番ボロボロになってない?これって確かに大騒ぎするようなことなんじゃない?今は『痛覚鈍化』を使っているけど、それまでは確かに結構痛かったし。
「ただ、今はあんまり体に触らないで欲しい・・・かな?」
一応、骨折してますので。流石に痛覚遮断までは出来ませんので。いくら『後遺症防止』があっても何かこういうのって一から治すのに痛みを伴いそうで怖いので。だからその・・・抱きついてくれるのは嬉しいんだけど、そろそろスキルを超えて痛みが襲ってきているので。スキルを切ったらどうなるか真面目に怖いので。
「わわわっ。すみません!」
慌てて俺から離れるカリーナさん。
「大丈夫。それより、大会の方がどうなった?俺、途中からガゼルを転移させて別の場所で戦っていたから結果が分からないんだよ」
正直、ファイン(偽)の結果が気にならないでもない。あいつの優勝を阻止したかったんだが、ガゼルの所為で全部おじゃんになっちゃったし。運よく他の強敵と当たって負けていればいいんだが・・・。
「優勝したのはこの国の大物だったみたいです」
「大物?」
「ええ。王族みたいで」
はい!もう分かりました!あいつ、優勝しちゃいましたね!王様ごめんなさい!でも、しょうがないよね!あそこでガゼルとそのまま戦っていたら流石にこの首都、崩壊していたもの。
「ああ、そう・・・」
「それにその人、自分がオカマだってカミングアウトしたんです。驚きですよね」
あ~~~~。やっちゃったよ、あの馬鹿!王様、今頃頭痛と胃の痛みで倒れてんじゃないか?今度、よく聞きそうな頭痛薬と胃痛薬でも手土産に持ってきてあげるかな。
「タカキさんっ!お待たせしました!」
カリーナさんと一緒に大会について話しているとリリアスが帰ってきた。
「悪い。ありがとな」
「はい!どうぞ!」
リリアスの手渡してくるポーション。HP回復とMP回復の効果のあるやつだ。市販のものは結構なお値段だった気がするが。
「大丈夫です。私のお小遣いで買ってきましたから!パーティーの活動資金とかには手を付けていませんよ?」
「いや、そこまでしなくていいって。後で俺の手持ちから返しておくから」
そこは譲れない。流石にリリアスのお金でってのはね。今後、リリアスもお金を使うことも多くなるだろうからな。主に学園生活やその延長で。
「でも・・・」
「いいから」
「・・・はい」
「よろしい」
そんなやり取りをしながら俺はHP・MP兼用ポーションを一気飲みするのだった。
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