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第441掌 眷属との戦い ガゼル編 その7



「よし!これで全部だ!」


 一人一人縄を解いていき、ようやく全員分の縄を解くことに成功するギムル。


 勿論、全ての縄をギムルが解いたわけではない。解いて開放したクラスメイト達も解くのに協力し、一人を解いた後は思いのほか速く縄解きは済んだ。


「ありがとう。このまま再度私たちは敵に挑むが、君達も一緒に戦ってくれないか?敵はかなり強くてね。私達だけだと返り討ちにされそうなんだ」


「俺達、まだ学生であまり役に立たないかもしれないけど・・・」


「集団でとはいえ、ここらを簡単に出歩けるだけの力は持っているんだろ?それに学生とはいえ、魔法も使えると見た。それなら後方支援だけでも出来る。どうだろう?後で報酬も上乗せするし」


 そう言って交渉する近衛静香に大杉が小声で確認する。


「おいおい。そんな約束して大丈夫か?」


「構わない。後で国王にガゼルさんの救出の必要経費として出させればいい。それに・・・」


「それに?」


「さっき、この男子が叫んでいた名前・・・。結構使えるかもしれない」


「・・・ああ。確かに」


 それで言うこともなくなったのか、大杉は後ろに戻る。


「・・・分かった。ただ、条件がある」


「条件?」


「ああ。報酬はその分差し引いてもいいから俺達の人探しを手伝ってくれ」


「さっき叫んでいた子のこと?」


「ああ。急にいなくなったんだ」


「分かった。その条件、呑もう」


「ありがとう!」


「ちょっとちょっと!私達の気持ちをガン無視して何してんのよ!」


 ギムルと近衛静香達で話が纏まりかけたところでストップが掛かる。


「なんだよ、キャシー。いいじゃないか。これでリリアスがより見つかりやすくなる」


「あんた、こんな知らない土地のこんな場所で拘束されている知らない人の言葉を簡単に信じるっての?」


 コソコソとキャシーがギムルに小声で問いかける。というより、言外に止めろと訴えかけている。


「なんだよ。いいじゃないか。困っているんだし」


「あんた、タカキさんから受けた忠告、忘れたの?」


 忠告というよりもむしろ説教だったということはキャシーは黙っておいた。説教という言葉だとギムルが反抗的になりかねないからだ。


「忘れてはいない。だが、目の前に困っている人がいるんだぞ?助けるのは当たり前じゃないか。それにこの人たちを助ければこっちの目的も手伝ってくれるって言うし」


「口約束でしょ?」


「でも、約束は約束だ」


「形のない約束、それも知らない人達とのものじゃない。破られることも考えなさいよ!」


「いいから!」


 分が悪いと感じたのか、話をそこで切り上げるギムル。こちらは学生で向こうは怪しいとはいえ、かなりいい装備をしている。ここで対立してもいいことはないだろう。キャシーは渋々そう判断して黙る。


「相談は終わったか?」


 吉田が確認する。


「ああ。それじゃあどうするんだ?どこに行って手伝えばいい?」


「ああ。それなら気にしなくてもいい。実は景色を誤魔化してここを隠しているだけで敵は目の前にいるんだ」


「なっ⁉そうなのか?」


「ええ。でも、安心して。どうやら相手にも事情があるみたいなの。失敗しても殺されてひどいことされるなんてことにはならないと思うし、もし状況が悪くなれば私たちがあなた達を優先的に守るし、逃がすわ」


「そ、そうか。分かったよ」


「それじゃあ準備はいい?魔法とスキルを解くわよ?解いたら一斉に魔法を私達の言う方向に放って。そこから一気に仕掛けるから」


「わ、分かった」


 ギムルは少し緊張気味に、他のリリアスの班員は渋々魔法を展開し出した。


「カウントするわよ?3。2。1・・・今!」


 阿多頼のカウントで一斉に魔法を放つ全員。


 そして映像の投影は解除され、現実は姿を現し、事実が目の前に現れた。


 ギムル達がリリアスに向かって攻撃を加えたという事実が。




             ・・・




 リリアスは視線こそ向けていなかったが、後方に注意を払ってはいた。魔力の流れにおかしな部分がないかは見ていたのだ。しかし、ぐったりして諦め気味なクラスメイト達を見て魔力の方も警戒を緩めていた。勿論、それでも何かあればすぐにでも動けるだけの警戒は残していたが。


「でも、私のところだけの襲撃なのかな?」


『にゃ?』


 リアがリリアスの疑問にどうしたのかと問いかけるように鳴く。


「だっておかしいでしょ?結界はここだけじゃない。私達のいない場所を探してそこから、もしくは別の場所に行くことだって可能でしょ?」


 リリアスの守っている場所以外にも結界の側面はある。そこから入ろうとしないのはおかしいと感じたのだ。


「もしかしたらすでにダンガさん達にも襲撃が行っているかもしれない」


 実はリリアスのこの読みは当たっている。ダンガ達の方にも襲撃は行われている。ただし、リリアスのようなタカキのクラスメイト達ということはなかったが。


 ライドーク神国の誇る暗部。簡単に言えば暗殺者がそれぞれ襲撃していた。勿論、そんなものあっさり返り討ちにしているが。


「リア。ちょっとこっちも警戒強めにしておいた方がいいかも」


『にゃにゃね』


 どこか「そうね」というニュアンスを感じるのは気のせいかな?そう考えるリリアス。


「――――今っ!」


 そこに響く声。


 その声に反応して後ろを向けば、束となった魔法が襲い掛かっていた。




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