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第438掌 眷属との戦い ガゼル編 その4



「いくぞ!」


 最初に仕掛けたのは男子クラスメイトの一人。


 手に持っている片手剣を振り上げてリリアスへと突っ込んでいく。


「馬鹿っ!勝手に先走るな!」


 近衛静香が呼びかけるが、すでに遅い。距離的には自分達とリリアスとのちょうど間辺りだ。


「仕方ないっ。阿多頼(あたらい)!魔法で援護してくれ!」


 そう指示を出すと近衛静香もリリアスに向かって駆け出した。


「分かったわ!」


 指示を受けた阿多頼という名前の女子クラスメイトは近衛静香の指示を受けて魔法の詠唱へと取り掛かる。


「御手越は阿多頼の護衛、吉田と大杉は私とあのバカ馬戸のサポートをして!」


「「「了解!」」」


 走りながら遂次指示を出す近衛静香。そして指示を終えたからか、リリアスに真っ直ぐ視線を向ける。


「ふむふむ。冷静なリーダーはいるんですね。そしてそのリーダーの指示を聞かずに突っ込んでくるお馬鹿さんが一人・・・ですか」


 リリアスは思った。実力差を認識することが出来ない上に統率の取れていないチーム。これでこの死地に踏み込んできたのか。


 呆れた気持ちを抱きながらリリアスも突っ込んで来ている馬戸と呼ばれた馬鹿に向かって駆け出す。しかし、その速度は馬戸や近衛静香の比ではない。


 そしてその速度を出すリリアスを目で追えないクラスメイトはリリアスの姿を見失う。


「結構抑えているんですが・・・」


 リリアスはそう独り言ちる。何せ、今のリリアスが本気の戦闘での速度で攻撃を繰り出したら一瞬で全滅している。


「なっ⁉いつの間に後ろにっ!」


 驚く近衛静香。


「そんな驚いていてもいいんですか?このまま後衛を倒しちゃいますよ?」


「くそ!」

「うおぉっ!」


 近衛静香の後ろからサポート役として走って来ていた吉田と大杉はいきなり目の前に現れたリリアスに一瞬、驚愕で思考が停止していたが、すぐに再起動してリリアスを攻撃しようと各々、ガントレットとアックスを振りかぶる。


「遅いです」


 リリアスはロットを振るう。気を失わせる程度の威力しか持たないが、それでもロットを視認することが出来ず、まともにその攻撃を受けてしまう。


 振るう数は二度。的確に鳩尾を狙い放つ。


 一瞬、何が起こったのかも分からず、しかし確実に感じるその痛みに蹲り、その場に両膝を突いてしまう二人。


「次」


 リリアスは振り返り、近衛静香と馬戸へと視線を向ける。


「よくも仲間をっ!」


 馬戸はブチ切れて固有スキルを発動する。


激情転換(パッション・コンバート)!」


 固有スキル・激情転換。能力は所有者自身の抱く激情によって自分自身のステータスの数値が変動するというスキルである。このスキルは所有者が激情に流されれば流されるほどに力を発揮する。


 しかし、勿論だがデメリットも存在する。それは―――。


「ドラァッシャッ!!!」


「危ないっ」


 リリアスはさっきまでの〝リリアスにとって″ゆっくりとした動きだった馬戸が急に速くなったから対処が出遅れてしまった。ギリギリのところで回避する。


「フシュ――――ルルッ!!!」


 馬戸はどこか野性味溢れる雰囲気を醸し出している。


 これこそがデメリット。激情のよるステータスの上昇が大きければ大きいほど理性は失われ、野生の本能というべきものがより表へと出てくる。思考能力も失われ、相手を倒すことだけに意識が向くようになる。最後には敵味方関係なく目につく相手を攻撃するという使い続ければデメリットの方が大きいという中々に使いにくいスキルである。


「固有スキルっていうのはどうしてこんなに厄介なデメリットがあるやつばかりなのよっ!ああっもう!勝手に固有スキルを使うんじゃないわよ!馬戸!」


 近衛静香が思い通りにいかない現状にイライラする。


 そんな近衛静香のイラつきを感じ取ったリリアスはその隙を逃さない。


「アローモード」


 アメハバヤを弓形態に変える。


「リア」


『にゃ!』


 リアの魔力を矢に変換する。


「ダークアロー・バインド」


 リリアスは黒い矢を放つ。その矢は空高く打ち上がる。そして弾けた。


 そして弾けた破片が近衛静香達へと降り注がれる。


「な、なに?」


 急に降り注がれる黒い破片に警戒するも、痛みがないことに困惑するクラスメイト達。


「発動」

『にゃにゃ』


 リリアスの声とリアの声が同時に響く。


 その瞬間、クラスメイト達の体に付いていた破片が変化を起こす。縄のような形状になる黒い破片。それは付着者であるクラスメイト達へと巻き付きに掛かる。


「これはっ?!」


 一瞬で拘束してしまうダークアロー・バインド。


 リアの魔力を借りて放つことで魔力に属性を持たせることに成功した。これがリリアスの一週間の真面目な修行の成果である。


「これでよし。それじゃああっちの戦いが終わるまでは動かずにいてくださいね。私がここからいなくなっても一定時間は効果が持続しますから」


 リリアスはもしもタカキの身に何かあればすぐに助けに行くために邪魔になる要因を排除しておこうと考えていた。そのためにはここでタカキの動揺を誘う可能性のあるクラスメイト達を足止めしておかなければならない。


 全てが終わり、ホッと一息つくリリアス。呆気なく終わった戦いに少し気が緩んでしまう。その気の緩みを許したままその場を離れ、結界の境界まで戻る。そしてそれは致命的な見逃しを許してしまう。


 そう。クラスメイトの後ろからやって来たギムル達という不確定分子を。




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