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第434掌 眷属との戦い ガゼル編 序 その4



『あ、あー。皆聞こえているか?』


 俺は舞台の上でガゼルに牽制の魔法を放ちながらテレパシーで呼びかける。すでにこの会場にはいない仲間を。


『聞こえているぞ』


 代表してか、ダンガが返事をする。


『それならいいんだ。手順は覚えているか?』


『それならOKです。こちらにはクロノさんの協力を得て作った結界が展開済みです』


『サンキュー、リリアス。こっちももう少しでそっちに行くから』


『いいけど、あんまり派手なのは勘弁してよ?私たちまで巻き込むようなの』


『アメリアはもうちょっと俺に対して優しくしてもいいと思う』


『あんたがフランクにしろって言ったんでしょ?何?前の口調と態度に戻しましょうか?』


『いや、今のアメリアの方が俺的にはいいから』


『・・・』


『あれ?アメリア?アメリアさーん?』


『呼び掛けても無駄よ。顔が真っ赤だもの』


『オルティか。お前も悪いな。クロノと協力して結界を張ってくれたんだろ?』


『ま、私もクロノも同じ神獣って括りで仲間意識ってやつが湧いたし、今回の戦闘は手伝えそうにないからね。これくらいはしてあげたかったのよ』


『・・・そっか。ありがとな』


 と、テレパシーでずっと話していたのが悪かったのか、ガゼルに意識が向いていないことが本人にバレてしまう。


「む?意識がこちらを向いていない?余裕のつもりか?俺を相手に?」


 ガゼルが俺の気の緩みを狙うかのように鋭い一撃を放ってくる。っていうか、拳撃を飛ばしてきたよ⁉どういう原理⁉


 いやいや。落ち着け。よくよく考えると俺だって斬撃なら放てるじゃん。MP操作スキルを使っても簡単に出来るし。


 そんな無駄な思考をしながら俺はギリギリのところでその拳撃を避ける。


「おっと。危ない危ない。結構力が入った一撃だったから、直撃したらまあまあのダメージ受けてたわ」


「フンっ。簡単に避けておいてよく言う」


「そっちだってまだまだ余裕残しているじゃん。お互い様だよ」


 そう言って俺は魔法弾を放つ。


「確かにその通りだな。しかし、いつまでもこんなことをしていては永遠に続いてしまう。そろそろ本気でいきたいものだな?」


「俺もそう考えてはいた。一応聞いておくけど、大会に未練とかは?優勝したかったとか」


「そんな気持ちを俺が持っているとでも?」


「ですよねー。まあ、分かってたけど」


 それなら別にいいか。


「それじゃあ本気が出せる場所に行くとしますか」


 俺は転移を隠すためのカモフラージュ魔法を発動しようとする。


「おい。忘れているぞ。それはお前の都合だ。俺が合わせてやる義理はない。別に俺はここで最後までやってもいいんだ」


「それは困る」


 具体的には俺の社会的な立場とか諸々。流石に全力戦闘している最中にまで自分の見た目を気にしている余裕はない。多分女装は本気の戦闘の序盤ですぐにでも解けてしまうだろう。そうなったらこの会場にいるクラスメイトに無様で悲惨な姿を晒してしまうことになる。それだけは避けておきたいのだ。


「相手の嫌がることをやるのが戦闘、殺し合いの基本だよな?」


「くそっ!」


 俺の発動しようとした転移を魔法陣を壊すことで解除されてしまう。魔法陣っていうか、魔法陣を展開した地面を、だけど。


「お前、本当にプリマ姫と同じ眷属なのか?本当は眷属にはレベルとか階級に差があるとか言われても納得がいくぞ!」


 最初に戦ったプリマ姫はトリスメデスのこともあって戦いやすくはあった。怒りで我を忘れていたし、最後もトリスメデスのおかげで結構あっさり倒せたし。


「テラコスもそうだけど、お前も反則級じゃねえか!」


「・・・」


 ん?あれ?なんか静かになった?ガゼルが何もしてこない。どうしたんだ?


「――――るな」


「ん?なんだ?」


「――――たるな」


「周りもうるさくてちょっと聞き取りづらい」


 結構観客がヒートアップしているからな。


「貴様があの女のことを分かったような口で語るな!!!!」


 一瞬で俺の目の前に近づいてきて、俺を殴り飛ばした。


 まるでバットで打ったボールのように吹っ飛んでいく。そして俺は大会運営側が張っていた結界すらも壊して壁に激突してしまう。


「もう止めだ。貴様はここで壊し尽くしてやる」


「いって~~」


 びっくりしたぁ。何?何なの?なんでガゼルさん、あんなに怒ってんの?プリマ姫の話題ってタブーだった?


『な、ななな、なんという威力でしょうかっ!!!!結界すらいとも簡単に破壊して吹っ飛ばされてしまったノーマ選手。ノーマ選手は無事なのだろうか⁉』


 いや、無事ではあるんだけどね。


「いつまでそこで休んでいる?来ないならこちらから行くぞ?」


「わーわー!分かったって!戻る戻る!」


 流石にポンポン結界を破壊されては観客とかもビビり出すからな。それは流石に防ぎたい。俺とガゼルはここで離脱するつもりだからな。


「しかし、おかげで隙を突くことが出来た」


 俺は完成した魔法陣を発動する。そして次の瞬間、周囲を黒い煙幕が包んだ。


「捕まえた!いくぞ!」


「っく!」


 ガゼルも抵抗しようとするが、すでにほとんどを向こうへと転移している。っていうか、怒りでそこら辺まで思考が廻らなくなっているようだ。


「司会の人!」


『はいっ!何でしょうか⁉』


 ビビりながら司会が聞いてくる。まあ、この煙幕、会場中を廻っているからな。何が起こるか分からない現場で目隠ししている。そりゃ怖いわな。


「ここで私は棄権します!私の対戦相手もね!」


『い、いったい何が・・・』


「いいからいいから。それじゃあね!」


 そう言って俺がガゼルと指定の場所へと転移するのだった。




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