第424掌 どこにでもドラマは転がっているかもしれない
拳一つで簡単にアダマンタイトを砕いた神の眷属。
「うそ・・・」
俺の横でファイン(偽)も驚いている。普通はあんなこと、出来ないからな。驚くのも無理はない。っていうか素手であんなこと、普通の人間なら絶対に出来ない。魔法も何もない地球で言うところの宝石を素手で砕いているようなものだ。
「まあ、あれくらいなら俺も出来るけど」
「はい?」
敵である神の眷属に張り合う俺。
勿論、素の俺なら無理だったが、ステータスに頼り切った馬鹿力なら可能だ。
「しかし、圧巻だな」
次々と砕いていく神の眷属。拳一振りで一つのアダマンタイトを砕いていく姿はまさに圧巻。隣で必死に一つも砕けていない対戦相手はすでに涙目だ。そりゃ自分が一つも砕けないアダマンタイトをあんなにあっさりと砕いていく姿を見せられたら泣きたくもなる。しかも、こんな大きな大会の決勝で、だ。
「私、対戦するとしても優勝を決めるトーナメント最終戦になるだろうから。良かった」
心底ホッとしている様子のファイン(偽)。
「俺は二回勝ったらアレと戦うことになるんだけどな」
そう。俺の対戦は三戦目。つまりトーナメントの形式上、三回戦目で戦うことになる。人数が二十人なのでトーナメント表も変則的になってしまうが、どっちにしろ三戦目で戦うことには変わりはない。
「私と決勝戦の最終戦で戦うことは実現することが出来るのかしら」
「そこは俺が勝つことを疑うなよ」
これだけ俺を巻き込んでいるんだ。ちゃんと最後まで俺が勝つこと信じとけよ!いや、そんなヒロインみたいなことオカマにされても困るだけなんだけどな。
「これは決まったな」
舞台の上ではアダマンタイトを用意していたゴツい男達が物凄い嬉しそうに舞台裏から見ている。
「こんなものか」
用意されたアダマンタイトを全て砕いてしまった神の眷属。
「そ、そこまで―――!!!」
司会も驚いていたが、急いでストップを掛ける。まあ、用意していたアダマンタイトが全部なくなったらストップを掛けるわな。普通にその時点で勝ちが決まる。
「勝者、ガゼル・ヴィーゼ選手!」
『『『『『わぁぁぁあああ―――――――――――ッッッ!!!!!』』』』』
一回戦第一試合が終わった。結果は神の眷属、ガゼル・ヴィーゼの完全勝利。対戦相手は一つも砕くことは出来ていない。
「皆様盛り上がっていますが、まだ一回戦の第一試合が終わっただけです!まだまだ始まったばかりなので燃え尽きないように気を付けていきましょう!」
司会はそう言って第一試合の終わりを告げる。
「次の試合が終わったらついにあなたの出番ね」
「ああ。正直、どんな対決ルールになるか気が気でないけどな」
そうでなくても相手がクラスメイトかもしれないという謎のプレッシャーがあるからな。最悪、異世界で女装がバレても、仲間じゃないならまだいい。我慢というか許容出来る。しかし、地球のクラスメイトに女装がバレる。これほどヤバいものはないのではないか?
日本に戻った時、俺は女装癖があるというレッテルを貼られることになる。それは俺の知り合いがいない場所に移り住まない限り付きまとうことになってしまうことだろう。
それだけは絶対に嫌だ!一年前のクラスメイト達なら笑ってからかってくるだけで終わるが、普通ならドン引きしてもおかしくない。オカマですと開き直るなら受け入れてもらえる可能性がないわけではないが、俺はオカマではないので開き直るなんていう選択肢はそもそもないのだ。
そんな女装に関する心配事のあれこれを想像していると知らない女性が俺に近寄ってきた。女性というか女子だけど。
「あなたが私の対戦相手?」
「ってことは、あなたがシズカ・コノエさん?」
「そうよ。その反応、あなたがノーマ・マーベルさんで間違いなさそうね」
声を変えて即座に対応を女性のものに切り替える。
「ええ。でも、対戦相手に試合前に話しかけるなんて普通はしないんじゃない?」
俺は遠回しにどっか行ってくれと言う。
「ちょっと理由があってね」
「理由?」
「あなた、どこであんなアピールを知ったの?」
「―――――え?」
や、やっぱりバレていたか。ここまでの大会で使った音楽やアピール方法。日本の曲で地球で発展している表現方法だからな。
さて。どうやって切り抜けよう・・・。
「あ、あれは私が旅をしている時に偶然知り合った人に教えてもらったの」
「そ、その人は男の人⁉」
「え、ええ」
つい肯定してしまう。まあ、知り合った人なんていないので俺本人なのだが。だからこそ、つい「男から教わったのか」なんて言葉に頷いてしまった。
「・・・そう。ならその人が今はどこにいるのか分かる⁉誰か他に連れていなかった⁉」
これはもしかして、ライドーク神国から逃げた樹里達のことを言っているのか?俺のことではなく?
「私の幼馴染かもしれないの!お願い!教えて!」
「ご、ごめんなさい。どこに行ったのかまでは分からないの」
「そう・・・。分かったわ。これから戦う相手なのにこんなこと聞いてごめんなさい」
「いえ、気にしないでください」
そう言ってシズカ・コノエ―――面倒だから本名を言うけど、近衛静香は俺から離れていった。漢字はクラス分けのパネルを記憶から引っ張り出した。
「しかし、幼馴染か。俺の知らないところでも色々とドラマが起こっているんだな」
他人事のように呟いた。だって、俺多分一回しか会ったことないし。幼馴染のことを話すようになるまで仲良くなっていないし。完全に他人事なんだもの。しょうがないよね。
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