第423掌 ファンタジーな鉱物って実物を見てみたいよね
ノーマ・マーベルVSシズカ・コノエ
初っ端からこの対戦カード。正直マジか・・・という気持ちでいっぱいだ。
「対戦はパネルの右端から行います。一回戦第一試合は今から十分後です。該当の選手は舞台で準備をしてください」
俺は第三試合か。ちょっとだけ心の準備が出来るな。
「私は第七試合みたい」
ファイン(偽)の対戦相手はよく知らない男だ。
「対決ルールはどうなるんだ?」
「試合直前に発表されるわ。前にも言ったけど、クジ引き方式で決められるから。被ることもあるわ。後は国民の投票で決まるから対戦ルールも偏りがあるわ」
「いいのか、それで?」
「国民が観戦したいと思うルールが多くなるからいいのよ。文句は出ないわ。それに少数派のルールが当選しないわけじゃないし」
まあ、そういうことになるか。でも、選手からしたら堪ったもんじゃないけどな。アドリブ力というか、対応力が求められるからな。対策のしようも何もない。
「とりあえず第一試合を見てどんなものになるのか確認するとしますか」
「そうね。それがいいと思うわ」
ここに来て、俺には困ったことが神の眷属とクラスメイトのこと以外に一つある。
それは、俺の視界にチラチラ入ってくる学園生の集団だ。
(あれ、どう見てもリリアス達だよなぁ~)
まあ?分かってはいましたよ?
そもそも今回、この国に来たのは学園の遠征が主目的。要するに生徒の成長とかそういうのに役に立ちそうなものは参加、観戦するのは当たり前のこと。この一番規模のデカい大会を観戦するなんて決まりきったことだ。いや、俺は知らないんだけど。
「どうしたの?そんな気まずいものを見たって感じの表情をして」
「いや、ちょっと知り合いがいて・・・な」
「あ~。あなたのその恰好?」
「ああ、そうだよ」
お前が原因のな!
この格好のせいで仲間を怒らせるということになったんだからな。後で埋め合わせするの、どうするか考えなくちゃいけなくなったんだから。お前にも何とか責任を取ってもらいたいものだ。
「皆様!これより一回戦第一試合を行います」
司会の言葉で十分が経ったことに気が付いた。
「それじゃあ第一試合を観戦しますかね」
「そうね。私達のライバルでもあることだし」
選手って舞台の一番近くにいることが出来るから、そこは観戦者からしたら嬉しい副産物だけど。
「しかし・・・いきなりか」
第一試合は神の眷属が戦う試合だ。
「どうしたの?出会ってから一番真剣な表情をしているけど」
「言葉の意味は引っかかるけど。とにかく、俺が一番警戒している相手の試合なんだよ」
俺はある程度誤魔化して話す。ここで本当の事情を説明しても困るだけだ。最悪パニックになるしな。
「あなたが本気でそう思う相手って・・・。只者じゃないってわけね」
ゴクリと固唾を飲んで緊張感を増すファイン(偽)。只者じゃないっていうか、神の眷属だから人ですらないんだけどね。
(神の眷属が顕現しているってことは依り代が存在しているってことだ。犠牲者には悪いが、俺の関係ないことを祈るしかない)
端的に言ってクラスメイトが依り代になっていないことを祈る。薄情だが、やはり自分の知り合いかどうかというのは結構気になるものだ。
「それでは第一試合のルールをこのボックスの中から取って決めたいと思います!」
そう言って運営スタッフが上に穴が空いている箱を持って寄ってくる。
「一回戦第一試合の対決ルールは――――」
少し静かになる会場。
「対象物破壊対決!」
司会の言葉に観客は『おおっ』とザワついている。
「いや、よく分からないんだけど」
「いいから見てなさい。説明は司会がやってくれるわ」
ファイン(偽)にそう言われたので我慢して静かにする。
「この対象物破壊対決は私共が準備した対象物を全て破壊した側の勝利とする戦いです!」
おい。それは圧倒的に神の眷属が有利じゃないか。こんな場面で負けるなんてこれっぽっちも思っていないが、流石に運が良過ぎだ。
「対象物はプロの鍛冶職人でも加工が困難だと言われるアダマンタイトです!かなり大きいものを取り揃えていますので破壊してくれるだけでも加工しやすくなり、大変ありがたいです!」
言葉の端々に鍛冶職人の気持ちが見え隠れしている。
「ちなみに、もし両者共に破壊で出来ない場合は傷の多さ、深さで決めたいと思います」
まあ、妥当なところか。
「手段は自分の力だったら何でもありです!それでは早速始めたいと思います!」
司会は説明している間に準備を終えたスタッフがゾロゾロと舞台裏に戻っていく。少し気になるのは準備をしていたスタッフがかなり厳ついというか、ゴツい感じのむさ苦しい男達だったんだが・・・。今は気にしても仕方ないか。
「一回戦第一試合、始め!」
神の眷属の対戦相手は早速、置かれている大量のアダマンタイトに駆け寄る。そして持っていたハンマーで叩きまくる。っていうか、ハンマー持ってるって・・・。準備良過ぎないか?
「なあ、何でハンマー持ってんの?あの人」
俺はファイン(偽)に雑談がてら聞く。
「あの人が特別準備していたってわけじゃないわ。選手はどんな状況でも対応出来るように汎用性が高い武器、もしくは持てるだけの武器を準備しているわ。舞台端にあの選手も大量の武器を置いているわ」
本当だ。凄い馬鹿っぽい感じになってしまっているけど。これがこの大会のスタンダードなのかもしれない。
「でもあれじゃあ、あいつには勝てない」
俺の視線の先には拳一つでアダマンタイトの一つを早速破壊している神の眷属の姿を映っていた。
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