第422掌 運が悪いのはいつものこと
結局、あの後見つかったのは三人だけだった。
いや、見つからないこともパターンの一つとして考えていたからいいんだけど。これは結構やりづらくなってきたかもしれない。
「で?なんだってそんなに嬉しそうにニコニコしてるんだよ・・・」
「だって、二人とも決勝に進出出来たんですもの!これでテンション上がらないって方が嘘になるわ!」
どうでもいいけど、顔が近い。離れてほしい。
現在、俺とファイン(偽)がいるのは王城の中にある食堂の一角。そこで互いの決勝進出を祝い合っていた。いや、俺は本選で脱落してほしかったし、俺も何の事情もないなら本選で脱落したかった。
女装はしているし、本来の仕事であるはずの学園の生徒の引率も放棄して仲間に任せっきりにしているし、女装がバレたら社会的に終わるし。
「それより、どうしたの?なんか色々と駆けずり回っていたみたいだけど」
「ちょっと厄介の種が増えてしまったみたいでな。その種がどれほどの数か確認していたんだ」
クラスメイトの数は合計で四人。神の眷属が一人。ファイン(偽)というオカマが一人。これだけの厄介の種を抱え込んでいる俺。
「なんか、失礼なこと考えてない?」
「ど、どういうことだ?急にどうした?」
「なんか、あなたの顔を見ていたらイラっときたから」
「気のせいじゃないか?落ち着けよ」
鋭いな。だが、俺のポーカーフェイスさんはきちんと仕事をしてくれた。偉いぞ!
しかし、クラスメイト達は何の目的でこの大会に出場しているんだろうか?普通なら俺と同じように旅をしていたと言えば通るっちゃあ通る。しかし、残りのクラスメイト達がいるのはライドーク神国だ。どう考えても余計な入れ知恵をしている輩がいるに決まっている。
ならば神の眷属とクラスメイトのことを別々に考えるのを止めれば答えは自ずと見えてくる。
結果から言えばクラスメイトは神の眷属の旅のお供といったところだろう。勿論、正体は隠しているはずだ。恐らくライドーク神国の王辺りにでも護衛を頼まれているのだろう。その護衛対象が大会に出たいなんて言い出したから自分達も・・・ってところか?
「しかし、一緒にって考えるとそれはそれで厄介だな」
「うん?私とあなたが決勝に進出したことが厄介なの?」
「ああ、いや違う。こっちの話だ。気にしないでくれ」
この大会で俺は恐らく、あの神の眷属と戦うことになるだろう。しかも、大会なんてお構いなしで。そうなった場合、クラスメイトはどうするのか。答えなんて決まっている。護衛なんだから守ろうと俺に戦いを挑んでくる。だが、流石に俺も同郷のクラスメイトを殺したいなんて思ってもいない。
そうなると必然的に手加減してしまう。そうなると隙も生まれる。神の眷属からしたら格好の餌食となるわけだ。あいつらからしたら護衛のクラスメイトなんて路頭の石程度にしか思っていないだろうからな(偏見)。
「やっぱり協力が必要か・・・」
リリアス達仲間の協力でクラスメイト達を引き受けてもらう。それが一番いいのだが・・・。
「如何せん、俺の格好が問題になってくるんだよな~」
「ねぇ!さっきから私を無視して独り言するの止めて!これ、一応お祝いの席でしょ⁉」
なんか横でファイン(偽)が騒いでいるな。しょうがない。思考するのは後にしよう。今はファイン(偽)に付き合ってやるか。
「はいはい。それじゃあ乾杯でもしますかね」
「そうね!狙うは一位、二位のトップ独占よ!」
それはまた大きな目標だことで。それがどれだけ難しい目標なのか、こいつは分かっていないんだろうな。今回の大会には神の眷属という化け物がいるし、クラスメイト達もいる。ライドーク神国で勇者として扱われているから多少は強いだろう。この世界の人間からしたら上位に入るほどのな。
「明日が楽しみね!」
「・・・ああ」
まあ、この嬉しそうな表情を無駄に壊すのも悪いし、今は水を差すのはやめておくか。
その日は騒ぐのもそこそこに早めに就寝するのだった。
・・・
そしてついに次の日。決勝の日はやって来た。
俺とファイン(偽)は入念に女装して大会会場に向かう。今日はどれだけ動いても滅多なことじゃ女装が解けない。そんな感じで準備した。激しい戦いになりそうだからな。
「皆々様!お集まりいただき、ありがとうございます!それではこれより、美の祭典、最大の大会である美の大会の決勝戦を行いたいと思います!」
『『『『『わあああああああああああああああああっっっ!!!!!!!』』』』』
「それでは早速、まずはトーナメント表の発表ですっ!こちらをご覧ください!」
そうして出てきたのは昨日の第四グループの順位表と同じ形式の布で覆い隠されている巨大なパネル。
「ここに今回のトーナメント表が記されています!そんなわけで早速発表だぁっ!!!」
そして勢いよく布が取り払われる。
そこに書かれていた俺の対戦相手は。
ノーマ・マーベルVSシズカ・コノエ
思いっきりクラスメイトの名前だった。
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