第397掌 同性同士で仲を深めよう
「はぁ。疲れた」
そう言うのは迷宮を何とかクリアした私とキャシー以外の班のメンバー達。途中で棄権した私達からしたらお疲れ様ですとしか言いようがない。本当にお疲れ様でした。
「それじゃあ次は・・・」
「その前にちょっと休憩しませんか?」
提案したのは班員の女の子のユリアナさん。
「そうね。迷宮って結構精神的に厳しい場所みたいだし、私は賛成よ」
「キャシーもそう言うなら・・・。男子の皆もいいかな?」
私が確認すると皆一斉に頷いてくれた。
「それじゃあ出店を回りながら祭りを楽しもう」
私はそう提案する。
「座れる場所があるといいわね。男子には買い出しに行かせて私達は場所取りしましょうか」
「そうですね。私もそれがいいと思います」
キャシーとユリアナさんが意見を固める。こうなってくると男子達は弱いようだ。あっさりと頷いてしまった。
「それじゃあ私達は場所取り出来たら呼びに行くからこの迷宮の前に集合ね」
「分かった。それじゃあ適当に買ってくる」
「あ、待って」
そう言ってすぐにでも行こうとするギムル君を止める。
「な、なんだリリアス。もしかして許してく―――」
「班での必要経費は私が持っているの。これを渡すからこれで買ってきて」
「あ、はい」
必要なことだけを話してすぐに離れた。その突き放した態度からギムル君も落ち込んでいる。
そして二手に分かれて私達も座る場所を探しに移動を開始する。
「それにしても、リリアス。もしかしてまだ相当怒ってる?」
「え?」
「だって、あそこまで怒っているところ見たことないんだけど。タカキさんに迷惑を掛けたってことでもそこまで怒らなかったじゃん」
実際には怒っていたけど、まあ怒りが継続するってほどではなかった。
「今回は皆を命の危険に晒したからね。でも、向こうから謝ってきたらすぐに許すつもりだよ。勿論、皆に謝ったら、だけど」
「謝ってたじゃない」
「あれはタカキさんに言われた言葉が効いているだけ。本当はまだ納得出来ていないと思う」
「なるほど。皆に謝ってタカキさんにも再度お礼と謝罪が出来てようやくってことね」
「そういうこと」
「なんかギスギスしてます?」
「あー気にしないで。ギムルがリリアスにお熱なだけだから」
「えーっ。それって!」
「うん。でも、リリアスは別の人にお熱だから」
「あのタカキって人ですか?だからギムル君はあんなにあの人に突っかかっていたんですね」
「班員からしたらいい迷惑だけどね」
「冒険者のパーティー内での恋愛ってチーム内の崩壊に繋がるから禁止みたいな暗黙の了解があるんだけどね」
これはタカキさんも知らないだろうことだ。まあ、グラスプのパーティー内は今のところ全員でっていう違う暗黙の了解が上書きしているような感じだから。一組だけっていうのがパーティーの不和に繋がる。なら全員納得済みの関係になればいい。そうして出来上がったのが今のグラスプだ。これは初期、私とアメリアさんとダンガさんの三人がいる時にタカキさん以外の三人で決めたことだ。
「私達はある取り決めをしているから大丈夫かな」
「パーティー内の男性があの人だけなら女性陣全員を囲うってことも出来るかと思うんだけど、他にもいるんじゃないですか?」
「うん。いるよ」
「大丈夫なんですか?」
「うん。その人にも相手がいるし」
「でも、全員囲うって結構仲がギスギスしそうだよね」
キャシーがそんな感想を呟く。
「大丈夫。タカキさんが仲間になる人決めているんだけど、変な人・・・というか問題ありって判断した人は入れないと思うから」
タカキさんの目的からしたら邪魔になるような人はパーティーに入れないと思うし。
「それってあの人のハーレム作り放題ってことなんじゃ・・・」
「タカキさんはそんな気持ちでパーティーメンバーを新規加入させないから!」
「ご、ごめんなさい。ただ、状況だけ考えたらそんな感じだなって思っちゃって」
「まあ、普通ならそんな立場なら自分に都合の良い環境を作ろうって思うわよね」
「そうだね。ごめん、怒鳴っちゃって」
「ううん。気にしないでください」
「・・・そうだ!ユリアナさん、ここまで敬語だけど、チームメイトなんだから敬語はなしでいこうよ」
雰囲気を変えるために私はそう提案する。
「そう?分かった。でも、それならリリアスも私のことさん付けで呼ばないでよね?」
「ごめんね。癖でちょっと丁寧な感じになっちゃうの」
「そうなの?」
「うん。言葉遣いとか今は使い分けが自在に出来るように頑張っているんだけどね」
「それは仕事場とかで重宝しそうだね」
ユリアナさん・・・・いや、ユリアナがそんな感想をくれる。
「うん。ありがと」
そんな感じで女子達が交流を深めている時、ギムル君達男子は―――。
「ギムル。好きな子に冷たくされているのは分かったけど、そこまで落ち込むなよ」
「大丈夫だよ。怒ってはいても嫌われてはいないよ」
「そうかな?」
「そうそう!」
「俺、どうしたら仲直りしてくれるか分からないんだけど・・・」
「一緒に考えるよ!」
こんな感じでギムル君を慰めることで交流を深めていたらしい。
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