第388掌 暴走、ギムル君 その9
私達が数十体目の魔物を討伐した時、不穏な気配を感じた。
「これは・・・」
スキルでの察知ではないけれど、普通に鍛えたら多少は熟練度みたいなものが上がるからね。結構危険な目にあって習得したステータスとかに頼らない自分自身の力の一つだ。
「皆、気を付けて!こっちに何か来る!」
私は皆に注意を呼び掛ける。
「え?どうしたの?」
キャシーが不思議そうに聞き返してくる。
「私達がさっきまで相手にしてきた魔物よりも何倍も強い何かがこっちに向かって来てるの!」
「何っ⁉」
ギムル君が私の言葉に反応する。
「私が前に出て戦うから、皆は後ろに下がって!」
そう言いながら私は今回の遠征では使わないつもりだったアメハバヤを取り出す。ちなみに今までは普通の魔法媒体になる棍棒としても使えるダンガさん作の魔法杖を使っていた。
「リリアスは下がってろ!俺が戦う!」
そう言ってギムル君は私よりも前に出る。
「ダメ!危ないよ!」
「うるさい!俺だってやれるんだ!」
すでに目視でも確認出来る位置まで来ている危険な何かに向かってギムル君は走り出した。
「戻って!」
私は急いでギムル君の後を追う。
「はぁぁぁあああっっ!!!」
ギムル君は走りながら魔法を待機状態にしていく。数は三つ。それがギムル君の魔法を出したまま維持することが出来るラインなのだろう。でも、それっぽっちじゃダメだ。子猫が大型犬に挑むようなものだ。
「間に合って!」
私はギムル君が魔法を放つ前にどうにか追いつこうとする。ステータスが凄く上がったのですぐにでも追いつけるレベルの速さは持っている。でも、まだコントロールが十全に出来るわけじゃないから無理は出来ない。下手をすると黒い何かが何かする前に私の移動の際に発生した風圧とかで吹っ飛びかねない。そうなったら本末転倒にもほどがある。
私はギリギリコントロールが出来るか出来ないかぐらいの力で走る。
「くらえっ!」
でも、遅かった。ギムル君は私の静止の声を無視して魔法を黒い何かにぶつけた。
「+@*>>¥&%#$%$$#???」
何を言っているのか全く理解出来ないけど、自分に起こった変化を不思議に思っているような感じがする。
「まだだ!」
戸惑っているように見える黒い何かにさらに追い打ちでギムル君は魔法を放つ。そして連携で物理攻撃も持っていたショートソードで行う。魔法が被弾していることもあって黒い何かは後方に吹っ飛んでしまう。
「え?」
私は驚いてしまう。どう考えてもギムル君よりも強いはずの魔物があっさりとギムル君に吹っ飛ばされて近くにあった木に激突する。
「$###&%&&!&?*}&」
何かを納得したような雰囲気を感じる。そして立ち上がってゆっくりとギムル君に近づいていく。
「%$%%&’#」
何かを短く言って腕?のようなものを揚げる。そして―――殺気が黒い何かから溢れ出る。
「ダメっ!」
私はそれだけはダメだと瞬時に判断してギムル君の前に全力の速度で飛び出す。この際、ギムル君が吹っ飛ぼうが関係ない。むしろ吹っ飛んでくれた方が安全だ。
「#%$!!!!!!」
物凄い勢いの振り下ろしで私の体に腕?が激突する。
「うあっ!!」
短い悲鳴の後、私は後方に吹っ飛ばされた。
「う、あ」
激痛に耐えながら私は立ち上がる。危なかった。ギムル君がこんなのを受けたら死んじゃってた。
「リリアス!」
ギムル君がこっちに駆け寄ってくる。
「ダ、メ!後ろに、さがっ、て」
言葉を出す毎に喉が悲鳴を上げているかのような激痛が走る。
「でも!そんな状態のリリアスを置いてなんて・・・っ!」
「あんたはいい加減にしなさい!ここにいたら邪魔になるって言ってんのよ!」
キャシーが命の危険があるというのにギムル君のいる場所にまで走ってやって来た。そして口を塞ぎ、羽交い絞めにしてゆっくりと黒い何かを刺激しないように後ろに下がっていく。
「あり、が、とう」
「こっちはいいから自分のことに集中しなさい!」
そのキャシーの言葉に頷き、私は黒い何かに視線を向ける。黒い何かは首を傾げる動作をしている。
「わ、たしが相、手よ」
アメハバヤを弓形態にして矢を放つ。これで敵として私も認識してくれたらいいのだけれど。
「&%#$*!?*+#$」
ギムル君から認識が外れて私の方に来てくれるか心配だったけど、その心配は杞憂で終わったみたいだ。殺気が私にだけ向けられている。
「そっちは娘さんを守って!」
離れた場所でジタバタするギムル君を押さえつけているキャシーが残りの班員に指示を出している。声が出しづらくなっているので代わりに言ってくれてありがたい。
「#*#*$$*$##*#*#*$$*$*$*$#+$$」
長い悲鳴のようなものの後、黒い何かは私目掛けて飛び出してきた。この感じ、恐らく体当たりか、似た何かだろう。私は激痛が体中からする中、直線上から体を瞬時に移動させる。そしてバックステップを踏みながら矢を放つ。
「こ、れで」
矢は貫通しているし、殺す気でいったので頭にも矢が刺さっている。というか、鏃の部分が貫通して刺さった場所から後ろに飛び出している。生き物が絶命するには十分な条件だ。
「+**+”#$!%%’&??」
黒い何かは自分の頭に刺さった矢を不思議そうに触る。そして引っこ抜いた。
「そん、な」
引っこ抜きなんてしたら普通は傷口が広がってしまう。そんな危ないことを平然とするなんて・・・。しかも痛みを感じている様子もない。どうやって倒したらいいんだ、こんな相手。
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