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第385掌 暴走、ギムル君 その6

その6にしてようやく依頼開始間際へ。

最近、書くと話のペースが今まで以上に遅くなっている気がしてならないです。

あれもこれも書きたいと思ってたら時間の方が足りなくなって今の状況へ・・・。



 疑問は残る。なんでファイン(仮)が村に来ていたのか。そしてこんな惨状の村のためにわざわざ依頼書を王都まで届けてやったのか。でも、今はそんなことを考えても仕方がない。本人がいないんじゃ分かりようもないからな。


「しかし、どうしてこの村は村長の家に近づいていくごとに臭いが強くなっていくんですか?」


 俺はここに来て思った疑問を問う。


「ああ。ここは村でも一番ヘドロ系の魔物が密集している場所に近い場所になるんです。それにここのヘドロ系魔物の臭いは残留してさらに臭いを被せてくるから臭いが消えないんです」


 それは質が悪い。嬉しくない臭いの相乗効果ってことか。しかし、最初に言ったことは気になるな。ちょっと調べてみるか。


 俺は急いで把握スキルを展開して村長の家を起点として周囲を探る。すると確かに村長の家からさらに奥に行った場所にヘドロ系の魔物が結構な数いた。


「ですが、これで私がここから逃げるわけにはいきません。これでもこの村の最高責任者ですから」


 村人にしてはしっかりとした考え方をしている。普通はこういう田舎の村長って自分のことを最高責任者なんて言わないし。


 しかも、どうやらこの村長。自分だけここに残って家族は一番臭いが軽い場所に移らせたのだという。男気があるねぇ。感心する。


「そうですか。それじゃあ俺はこれで失礼します」


 聞きたいことは聞けた。後は討伐して終わりだ。


 挨拶もそこそこに俺は村を出た。家の中にまで侵食してくる臭いを魔法で追い出してあげた。ちょっとの気休めだけど、しないよりマシだ。正直流石に不憫すぎると思ったからな。俺なら速攻でギブアップしてしまいそうだよ、こんな生活。


「戻ったぞー・・・ってどうしたんだ?この惨状は」


 俺が生徒達の元に戻ると蹲ったまま動かないギムルとキャシー。


「あ、タカキさん。おかえりなさい」


 そんな惨状を見て固まってしまった俺を迎えてくれるリリアス。


「これ、どうしたんだ?」


「これですか?これは―――」


 リリアスの説明によると。


 どうやらギムルが俺が言った「俺が戻ってくるまでここから先に入ってくるなよ!これは命令だからな!」という言葉に多少カチンときたらしく、逆らってやろうと村の中に入ったらしい。キャシーはそんな馬鹿を止めるために数秒遅れで村の中へ。


 そして臭いを嗅いでしまい、この惨状らしい。


「俺達もすぐに助け出したかったんですけど、中に入った二人がこの惨状だったのでつい怖くなっちゃって・・・」


 班員男子の一人が言う。ギムルと仲が良さげだった生徒だな。


 それでどうすれば助け出せるか考えている間に俺が帰ってきたと。そういうわけか。


「タカキさん。申し訳ないんですけど、そこの二人をこっちに運んできてもらえませんか?」


「まあ、しょうがない」


 村の中に入らないように言った俺にも責任が・・・・・・あるのか?入ってくるなって注意までしたのに。まあ、俺も臭いがヤバいと教えてはいなかったからちょっとは責任あるか。でも、これに関してはリリアスから説教された方が効くだろうから俺からは何も言わないでおこう。


「しかし、キャシーは完全にとばっちりを受けたわけだ」


 可哀想に。


 俺はギムルの足を持って引きずる形で。そしてキャシーは肩に担ぐ形で村の外にまで連れ出した。


「ほら。これでいいだろ」


 そしてギムルは怪我をしないレベルで放り投げる。キャシーはそのまま地面に寝かせる。


「はい。ありがとうございます」


 リリアスが嬉しそうにお礼を言う。


「でも、あんなにキツくタカキさんが言うのは珍しいと思っていたのですが、これでどうしてあれだけ強く言ったのか分かりました」


「ああ。まあ、そういうことだ」


 こんな臭いを嗅がせるわけにはいかないからな。


「でも、タカキさんは大丈夫そうですけど、どうして?」


「ああ。俺は魔法で臭いを遮断したからな」


 むしろ、ずっとこれを嗅いでいられるほど俺の鼻は頑丈じゃないし、精神衛生上も出来れば二度と嗅ぎたくない臭いだ。


「あっ!その手があったか!」


 そして俺の説明を聞いて再度突入するギムル。しかし。


「ぐあぁ~~っっ!!??!?!?」


「はぁ・・・」


 俺は呆れながら再度村の中に入ってギムルを救出。


「自分の周りを臭いだけ排除するなんて高等技術、あんたが簡単においそれと出来るわけないでしょ」


 臭いがなくなってようやく回復したキャシーから呆れ声でそう言われる。


 まあこれ、一瞬だけ臭いを弾くだけとかならそこまで難しいわけじゃない。単に自分から外に向けて風魔法を放つだけだからな。でも、臭いを継続的に遮断するってことは神経使うし、結構しんどいのだ。コントロールも緻密だし。


「はいはい、そこまで。そういう説教は後でね。時間がもったいないから依頼を始める」


 俺は村長から聞いた特徴を話す。


「――――――以上だ。これを踏まえて戦ってくれ」


 ついでに出来るだけうまく対処出来るように俺なりのアドバイスもしておいた。現代の知識とか漫画や小説の知識をこの世界風にアレンジしただけのものだけどな。


「それじゃあ俺は向こうに行く。俺が離れてから十分で勝負開始だ。リリアスは時間計っておいてくれ」


「はい」


「あっ待って!勝負するって言ってもどうやって倒した証明をするの?」


 ・・・・・・・・・あ。


「わ、忘れてた」


「「「「「おい!」」」」」


「すまんすまん。ちょっと待っててくれ」


 そう言って俺は村へと再度入っていく。


 そして数分後。俺は若い男女二人の村人を連れてきた。


「はい。それじゃあこの二人が何体倒したかの証人になってくれることになったから」


「「本当によろしくお願いします!」」


「あの、タカキさん。この方達は?」


 リリアスがおずおずと聞いてくる。


「この二人、村長の息子さんと娘さん。村長に相談したら手伝ってくれることになったんだよ」


 まあ、数を数えて確かに倒したって証言するだけだけど。


「これでいいだろう。さ、それじゃあ始めるとしますか」




読んでくれて感謝です。

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