表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/521

第38掌 事情ありで裏もありそう



 テンション高めで領主の屋敷まで移動し出した俺とアメリア。


「・・・」


「・・・」


 出発してからずっと無言。なにこれ?


「あ、あのさ」


「っ!・・・・はい?なんですか?」


「どうしてそんな怪我しているの?・・・あっ。言いにくかったらいいんだけどさ」


「・・・」


 初対面のメイドさん相手にそんなに話題なんてない。それなら恐らくもうこれっきり会わないだろう他人の俺にも話せるだろう話を振ってみる。


「やっぱり言いにくいかな?」


「・・・いえ、あなたからは悪意を感じないので。話します」


 ん?悪意?感じない?何かの固有スキルか?


「そう?なら聞こうかな」


「はい。これは私の職場の人につけられた傷です」


「!」


 領主の仕業か?


「誰がそんなことをするの?」


「私と同じメイドの皆さんです」


 おいおい。同僚からのいじめってやつか?


「どうしてアメリアはそんな仕打ちを受けているの?理由とかはあるの?」


「多分、私が領主様に重宝されているからだと思います」


「それって・・・言いにくいけど夜関係?」


 俺の言葉に顔を真っ赤にするアメリア。


「い、いえ!雇い主として目をかけて下さっているんです。よく仕事を私に回してくださるので・・・」


 おおう。俺の勘違いか。でも、なるほどね。つまりは妬みみたいなものか。アメリアばかり特別扱いされていたらそうなるのも分かる。まあ、それで被害を受けているアメリアはたまったもんじゃないだろうけど。


「どうしてアメリアばかりを?実は妾とかにしようと考えているとか?」


「多分、それはないと思います。奥様もお二人いらっしゃいますし、仲もよろしいですから」


 仲がいいのにわざわざ不況を買いに行くこともないか。貴族ならそこら辺の機微も分かっているだろうしな。


「子供とかもいるの?」


「はい。そろそろ五歳になられるご子息と三歳になられるご息女が」


「へぇ」


「ご子息が第一夫人のお子様、ご息女が第二夫人のお子様です。テスニ様とアメル様と言うのですが私とも仲良くしてくださいます。奥様方もまるで我が子のように可愛がってくださいます」


 家族全員でアメリアを可愛がっているのか。逆に怪しいな。絶対何かしらあるよ。


「それが恐らく原因なんでしょう。同僚の皆さんが私に当たるのは」


 それって結局領主たちが悪いってことか。明らかに特別扱いし過ぎだし。


「最初は少し無茶な仕事を振られるくらいだったのですが、ドンドン過激になってきて、暴力なども振るわれるようになりました・・・」


「それ、明らかに歯止めが効いてないじゃん。このままだと壊されるよ!」


 体もだけど、心も。


「でも、私。ここの仕事を辞めたら帰る場所がないんです。領主様に拾われたのが一年前になるんですが、その少し前に母が亡くなりまして」


 く、暗い。そして、重い。


「別に仕事内容や雇い主の皆さんには全く不満なんてないんです。ただ、流石に体が限界みたいで・・・」


 確かに。把握能力を使ってみて分かった。アメリアの体はボロボロだ。女の子がするようなことじゃない重労働や暴力で体のあちこちが悲鳴をあげている。俺に回復系のスキルや魔法が使えるなら治してあげられるんだけど、生憎と持っていない。


「・・・」


 俺は何も言ってあげられない。そもそも今日あったばかりの娘だ。それにリリアスの時とは違って本人は心から俺に何かを求めていない。アメリアはそもそも会ったばかりの人が助けてくれるわけがないとも思っているんだろうけど。


「・・・」


「・・・」


 結局、また無言になってしまった。


 助けてあげたいとは思うけど、流石に他人の人間関係に首を突っ込んでもいいことはない。むしろ悪化するかもしれない。何か起これば別かもしれないけど。


「・・・あっ。ここです」


「えっ?」


 俯いていたから気がつかなかったが、どうやら着いたらしい。確かに、この街で一番大きい屋敷だ。


「ありがとうございました」


「あ、ああ。気にするな。せっかくの縁だ。何かあったら頼ってくれ。俺はギルド推薦の宿屋に泊まっているから」


「はい。それでは」


 一礼して屋敷の中に入っていくアメリア。


「また、トラブルに巻き込まれそうだな」


 アメリアを見つめながら呟いた。まあ、アメリアに何かあれば自分から首を突っ込もうと考えるくらいに気になってしまっている。多分、あいつに似ていたからかもな。樹里に。


 樹里のために昔、裏で無茶をやったことをアメリアを見ていて思い出してしまった。あいつ、今頃どうしているかな・・・。




              ・・・




 それから俺は宿屋に戻った。領主の屋敷から宿屋までは結構遠く、帰ると日が暮れていた。


「タカキさん!遅かったですね。どこに行っていたんですか?ちょっと心配しました」


 リリアスが宿屋の食堂に入ると駆け寄ってきて言った。・・・それにしても、ちょっとなんだ、心配。まあ、リリアスが一番俺の実力のことを分かってはいるだろうけど。


「あ、ああ。悪い。街をブラブラしてたら結構宿屋から遠いところまで行っててな」


「部屋に行ったらいないんですもん。ビックリしましたよ」


「いつ?」


「朝ですけど」


「え?俺、いたよ?」


「え?」


 昼まで寝ていたんだから。


「リリアス」


「はい」


「多分、それ、俺の部屋じゃなくね?」


「た、確かに。タカキさんが持っていないような荷物とかがありましたし」


 リリアスの部屋間違いか。


「まあ、いいじゃん。何事もなかったんだから。それより何か食べようぜ」


「そうですね」


 リリアスも部屋間違いは忘れることにしたらしい。


「そういえば、ダンガは?」


「知り合いの武具屋に行くって言ってました。もしかしたら今日は泊まるかもって」


「そうなのか。じゃあ、二人で食べるか」


「はい!」


 嬉しそうに返事をするリリアス。


 この後、俺はリリアスと夕食を食べた後、楽しくおしゃべりをして就寝した。


 ちなみに、風呂はこの宿にはあるらしく、満喫しました。ここのところ濡れた布で拭くだけだったから気持ち良かった。




読んでくれて感謝です。

さて、どうやってタカキとアメリアを絡ませていこうかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ