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第381掌 暴走、ギムル君 その2



「依頼・・・だと?」


「ああ。俺は冒険者だ。俺が受注するから魔物の数とか採取する薬草とかの量で競おうぜ?勿論、完了後は依頼で魔物を倒した数とか採取した量によって報酬も渡そう」


「俺はお前と直接―――」


「戦いたいって?さっきの軽い威圧程度で怯むようじゃ相手にもならない。最初に俺に突っかかってきた男子生徒の方がまだマシだ」


「ギムル君。ここはタカキさんの厚意に甘えようよ」


「リリアス・・・」


 ギムルは再度俺に突っかかって来そうだったが、リリアスが諫めることでギムルは寸前で止まる。


「あー。ついでにそっちは班で挑んでいいぞ。こっちは俺一人で」


「何?」


 ギムルが俺の言葉が気に食わないのか、聞き返す。


「ハンデだ」


「リリアスもいるんだぞ?」


「だから?それで勝てると思っている時点でお前はダメだ」


「何だとっ⁉」


「お前は今、俺の仲間のリリアスと班の仲間がいるから勝てると判断しただろう」


「・・・っ」


「それはすでに他人に頼って自分では無理だと認めているからだ。自分からそれを認めているならまだしも、そういった素振りもない時点でダメなんだよ」


「あの・・・タカキさん」


「リリアス。悪いが今回はそっちで頼む。勿論、本気でやっていいぞ。俺もある程度は本気でやるから」


 ギムルにはあんなことを言ったけど、リリアスがいる以上は俺もある程度は本気でやらないと負けちゃう。リリアスも今はそれだけ強くなっている。


「流石に本気は・・・。奥の手もありますし」


「ああ、そうだったな。悪い悪い。それじゃあ出せる範囲での本気で」


「はい。分かりました」


「あと、そっちに諸々任せる」


「おい!何を勝手に話を進めているんだ!」


「ギムル君」


「なんだ、リリアス」


「ちょっと喋らないでくれるかな?」


 おぉ。リリアスが珍しく怒っている。端々から魔力が漏れているし、威圧スキルとかも漏れている。リリアスが怒るなんて最初の方でミッキー先生とか樹里に怒って以来じゃないか?


「うっ」


 ギムルもそれで黙ってしまう。滅多に怒らない人が怒るっていうのはそれだけで怖いもんだ。俺?俺は怒ってても怒らなくてもやってることは変わらないから。え?それはそれで怖い?まあ、そこは人によるから今は気にしないでいいんだよ。


「それじゃあタカキさん。私達は他の班員にこれまでのことを伝えてきますので失礼しますね」


「ああ。依頼を受けるなら今の時間からは微妙だし、明日の早朝にしよう。この国のギルドに集合。いいか?」


「はい。それで大丈夫です」


「それじゃあまた明日な」


「はい。今回はすみませんでした」


「なっ⁉リリアスが謝ることじゃない!」


 最後にリリアスが謝ったことに驚き、止めるギムル。


「ダメだよ。今回みたいに集団行動を取っていてそのうちの一人が何かをやってしまったらそれはリーダーの責任になるの。だから私が謝っているの」


「そんな・・・」


「リリアスが正しい。お前は今、自分がどういった立場でどう行動しなくちゃいけないのかを考えなくちゃいけない。ま、まだ生徒なんだし、ゆっくりと考えるんだな」


 そしてリリアスはギムルを連れて帰っていった。


 そして俺はふと、今の状況を思い出した。


「そういえば、ここ、宿だった」


 そこらの道端とか自分の所有地でもない。公共機関でもない。そんな場所でここまでワーキャー騒いだんだ。ちょっとこれはやり過ぎたかもしれん。野次馬が「「狂った」なんて言葉が二つ名に付いている奴なのにしっかりとした考え方しているんだなぁ~」なんて声が聞こえてくる。


 これが普段なら「狂った死神」が現れた時点で皆逃げると思っていたから忘れていた。今はお祭りの最中。それなら俺の登場は逆に注目されてしまう。


「ダンガ」


「どうした?」


「とりあえず、一回部屋に戻ろう。ここでは騒ぎ過ぎた」


「ああ。そうだな」


 ダンガを連れてその場を離れる。


 後で宿の人には迷惑を掛けたことを再度謝っておいた。でも逆に集客出来たからいいよ的な感じで感謝された。どうやら俺とギムルの騒ぎを見物していた奴が宿の食事処で見物がてら食事などをしていったらしい。見事に見世物になっていたわけだが、まあ、お咎めなしなら甘んじて受け入れるしかないな。


「でも、なんであんなことになったんだ?俺は途中で帰ってきたから始めが分からないんだが」


 部屋に戻ってダンガに聞く。


「最初がタカキを尋ねに来た学園の生徒だって宿の従業員が言うんで俺が今はいないって部屋から出て言いに行ったんだ」


 最初は一日遅れで俺に相談をしに来たのかと思ったらしい。それなら俺も嬉しいんだけどな。


「いないって言ったら会わせろ!いる場所に連れていけって言って聞かなくてな。俺も最初は出来るだけやんわり断っていたんだが、言うことを聞かないんでだんだんイライラしてきてな」


「それでいい争いになったわけだ」


 俺はダンガがいい加減我慢の限界になった時に帰ってきたわけね。ナイスタイミングだったわけだ。


「それで?リリアスまであっちにつけたが、いいのか?今のリリアスが本気出したらちょっと厄介なんじゃないか?」


「まあ、アレ(・・)を出されたら俺もちょっと真面目にやらなくちゃいけないけど、今回はそこまでやる必要ないからな。ギムルとやらのあの直情的な部分を矯正するための手段だし。それにリリアスも奥の手と判断しているから滅多に使わないだろ」


「そうか。それならいいんだが。それで俺達はどうすればいいんだ?」


「ダンガ達は街を見て回って生徒を監視してくれればいいよ。問題を起こしたら介入する形で」


「分かった」


 さて。それじゃあ明日のためにギルドに依頼の確認をしに行くか。




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