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第375掌 寄ってくるのはこんなのばかり



 特にすることがなくなった現在。


 俺は街をブラブラと歩いていた。


 最初は皆相談しに来るかな~なんて考えていた。結構真面目な話をしたし、俺のところに相談しに来てもおかしくはない。


 なのに現実は残酷だ。


 俺の仲間には相談しに来る生徒がいる。わらわらとやって来た。俺も手伝おうと思ったんだが、俺が話しかけると怯えられてしまう。


 ここまで遠征でそんなに怖がられていなかったから大丈夫だと思ったんだけど。近づくだけでビクッとされると悲しくなるね。


 そんな俺を見て、ダンガが言う。


「お前がいると相談に乗ってやることも出来ない。外に出て散歩でもして来い」


 慰めや励まし、フォローなどを言ってくれると思ったら思った以上に辛辣だった。


 っていうか、俺が怖がられる原因になった出来事。その現場に今いる仲間のうち三人がいたんだからな?俺だけ怖がっているけど、そいつらも実行の共犯者だからな?


 しかし、ダンガの言うことももっともなので渋々退室。


「しかし、本当に賑やかだな」


 日本では国を挙げての祭りなんてないからな。感覚で言えば日本主催の祭りを東京全体でやるようなものだ。そんな大規模過ぎる祭りなんてないだろ?


 逆に世界規模になったらそれくらい活気づいたりするのかもしれないけどな。例えばオリンピックとか。あいにく俺はスポーツとかは見るよりやる派の人間だったからそこまで熱狂的にはなれないけど。


「でも、こう賑やかだとちょっと何かに参加したくなるな」


「あら?それなら私と一緒にこの後始まる大会に出ない?」


 そんな呟きをしたら急に答えが返ってきた。どこか独特な女口調。そして響き渡るイケメンボイス。


「こ、これはまさか―――っ!」


 物語だけの存在だと思っていたあの―――っ!


「あなた、見た目よりもずっと強いし、多芸でしょ?体全体を見れば分かるわ。私、どうしてもこの後始まる大会で優勝したいの!お願い!出てちょうだい!」


 そんな懇願してくるのはO・KA・MA。しかも質が悪いのはムッキムキのおっさんとかじゃなくてイケメン。本気で化粧とかそういうのをすれば男っぽい女レベルまでなら女装出来るんじゃないかってほどのイケメン。


 サラサラのブロンドヘアーに細身だけどしっかりと鍛えられた体。でも、どこか気品を感じる佇まい。それに追加してのオカマ的雰囲気。これは正直厄介事の予感しかしない。


「初対面のオカマと出る大会なんてないです。それじゃあ俺はこれで」


 そう言って関わり合いになる前に退散しようと前に進み出す。


「まってぇぇぇぇぇぇええええっっっ!!!!お願いよおぉぉぉおぉぉ!!!!妨害されて相方が見つからないのぉぉぉおお!!!」


 なんだなんだ。俺の足に縋りだしたぞ。


「やめろ!周りの目というやつを考えろ!」


 めっちゃくちゃ見られているじゃないか。しかもヒソヒソされ出しているじゃん。


「分かった!分かったから!」


「ほ、本当?」


「話だけでもいいなら聞いてやるから!だからこれ以上街のど真ん中でいい大人が泣き叫ばないでくれ!」


 そんな泣き落としに俺は降参してオカマの話を聞くことになった。


「それで?妨害ってなんだよ?」


 近くの喫茶店に入って俺はオカマが言っていた言葉で疑問に思ったことを聞く。


「私の親が邪魔してくるのよ。一年に一度の美の祭典。私だって参加したいのよ。だからこれ、一緒に出てくれる人を一から探してこれからって時に親の邪魔が入って相方が辞退しちゃったのよ」


「そんなに邪魔してくるなんてよっぽどなんだな。それで?その参加する大会ってのは何なんだ?」


「これよ」


 そう言って見せてきたチラシには大会の情報が載っていた。


「えーなになに?」


 そこにはこう書いてあった。



 集え!男の中の男!女性達に見せつけてやれ!

 可愛さ、綺麗さが女性だけの専売特許でないことを!


 ―――――チキチキ!誰が一番美女装男子でしょう!大会―――――


 参加者、募集中。飛び入り参加OK。

 参加資格 成人男性であること。

 二名のペアカップリングで参加してください。



「なにこれ?」


「私が参加しようと思っている大会よ。あなたには相手役として参加してもらいたいの」


「相手役?」


 この二名での参加って部分か?


「私が女装するから、あなたは男としてカップルをやってほしいのよ」


 それ、俺に何のメリットがあるの?


「え?ちょっと待って?俺、この大会に出たらお前の恋人役をやることになるの?」


「そうよ?お願いしていた人は恋人にバラすって私の親に脅されて逃げたの」


 そりゃ自分の恋人が同性の相手とカップルとして大会なんて大きな舞台で注目を浴びていたらなんて思うとゾッとする。それに逆の立場でもゾッとする。だって自分が参加したカップリングが必要な大会を自分の恋人が見ている。女性相手でも問題なのにそれが男性。愛想をつかされること必至である。


「言っておくけど、俺も参加したくない。俺にも恋人(複数保留中)がいるし」


 リリアス、アメリア、カリーナさん、ミール、アメーシャ。すまん。名前は出さなかったけど、恋人ってことでちょっと使わせてもらった。


「そんな~。本当に困っているのよ~。お願いよ~。大会に出てくれたら私の出来る範囲で融通利かせてあげるから~」


「お前、そんな凄い存在なのか?」


「一応、私もある程度顔が利くし、親がこの国では有名だから」


「ふ~ん?」


 ちょっと考えてふと、俺はある考えが浮かぶ。


「なあ、これって二名で参加してとしか書かれていないよな?」


「え?ええ。そうね」


「それじゃあ俺が出す条件を呑めるなら参加してもいいぞ」


「何々⁉私に出来ることなら何でもやるわよ!」


 しなを作るな。男がやっても気持ち悪いだけだ。


 さて。相談に乗っているリリアス達には見られないだろうし、大丈夫だろう。


 目的のために自分の男としてのプライドを捨てますかね。




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