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第371掌 一匹だけになるとよくあること



 周辺から生徒達の「わーきゃー」騒ぐ声が響いてくる。サウンドクロコダイルが余程怖いと見える。しかし、怖いからこそ冷静に対処しなくてはならない。冷静になれないのは敵を前に命を差し出すのと同義だ。


「どうするの?助けに入る?」


 アメリアが聞いてくる。


「いや、助けには入らない」


「大丈夫なんですか?」


 カリーナさんが心配そうに生徒達を見ている。


「大丈夫だ。遠征に参加している全員で掛かれば簡単に倒せる。それにあそこには―――――」


 俺が言い終わる前にドゴーンという音が聞こえてくる。


「リリアスがいるんだから」


 時空魔法と闇魔法の応用で前方に映像として生徒達を映し出す。いい感じに映像の場面が変わるのは俺が把握スキルを使っていい場面ばかりを映しているからだ。


「逃げていた生徒達の代わりにリリアスが前に出たな」


「うん?この映像の端に映っているのってさっきタカキに絡んできた奴じゃないか?」


 ダンガの指摘に全員があの男子生徒のことを思い出した。そしてそこにいることを認識する。


「どうやら自分の出番かって感じで出てきたけど、リリアスの派手な登場に邪魔されて全く目立てなかったって感じだな」


 不憫だな。まあ、この遠征で過去の自分を顧みて反省したらいいな。それまでは散々リリアスに活躍の場面を取られるといい。


『また、地味に黒いこと考えていそうね』


 オルティが鋭いツッコミをする。


「とりあえず、リリアスが活躍してくれるし、俺達は静観だ。リリアスが対処しきれない事態が起きるまでは特に何もする必要はない」


「それってもう今回の遠征、暇だって言っているようなものじゃない」


 アメリアの言う通りだ。それこそ、リリアス以上の強さを持つ敵か、もしくは対処しきれない数の敵が現れるまでは何もすることはない。


「でも、リリアスに頼りっきりじゃ点数はあげられないけどな」


 そもそも、リリアスはすでに冒険者として活動している。階級は正直言って俺が冒険者として最近活動していないせいもあって上がっていない。これは皆にも言えることだけどな。


 そんなリリアスに助けてもらうってことは冒険者に助けてもらうってことと同義だ。リリアス自身に遠征の点数はつかない。これは学園側との相談で決まったことだ。すでに冒険者としての知識、元々持っていた様々な知識、それにここまでの旅の経験からいって、すでにリリアスは学園に通う必要がないレベルだ。


 本人はまだ召喚魔法しか使えないってんで通う気なんだけどな。でも、召喚魔法を使ったあの裏技があればいいと思うんだけどな~。確かに自分自身が覚えているってわけじゃないから納得出来ないのかもしれないけど。


「あー。リリアスがサウンドクロコダイルをほとんど倒しちゃったよ」


 すでにその数は一匹だけとなっている。


「どうやら最後の一匹は他の生徒の方達に倒させる気のようですね」


 カリーナさんがリリアスがやろうとしていることを予測する。


「まあ一匹だけならそれこそ簡単に倒せるだろう」


 あ、リリアスが後ろに下がった。


「でも、リリアスも鬼ね」


 アメリアがそう言う。


「へ?何でだ?」


「ああいう群れで活動する魔物っていうのは仲間がやられたら怒るのよ」


「つまり?」


「簡単に言ってパワーアップするわ」


「なんで?」


「キレて火事場の馬鹿力を発揮するのよ。だからあんな一匹だけ残したら」


「相当キレているわけね」


「そんなのを同級生達に任せるんだから相当にスパルタだわ」


 ふーん。だからあんなに生徒達も慌てているわけだ。


「頼みのリリアスが引っ込んだってことはこれ以上は手を貸すつもりはないっていう意思表示。他のサウンドクロコダイルを倒してもらっているから文句も言えない。これはもう頑張るしかないな」


 ダンガは完全に観戦モードで助けようと思ってもいない。


「キレている魔物はランクが一段階上がるからね。一時的なステータスの上昇で」


 アメリアから新情報。


「でも、それじゃあちゃんとした倒し方っていうか、正解は何なんだ?」


「そりゃ魔物が見えない位置から倒すか、範囲攻撃とかで複数撃破するしかないわ」


「それが出来なければ一段階ランクが上がった魔物との戦闘に突入ってわけか。しかし、俺は魔物の群れと戦った時にそんなことは起こらなかった気がするんだが」


『そんな一段階上がったぐらいであんたが気が付くぐらいの強さになるわけないじゃない』


 オルティに呆れられながらそんなことを言われてしまう。


「じゃあ、俺が魔物の群れと戦っている時にも今回と同じようなことが起きていたってことか」


『私はレベル上げに積極的じゃなかったから今回は観察とかすることも多かったけど、確かに強くなった魔物もいたわよ』


 それは、ちょっと悪いことしたかな?せっかく決死の覚悟を決めたってのに何ら気にしなかったわけだし。


「そうこう話しているうちに生徒達が戦闘を開始したわよ」


 アメリアがそういうが、魔法学園の生徒だ。遠距離からの魔法の攻撃ばかりで接近戦をしようとする生徒がいない。


「あ。一人吹っ飛んだ」


 俺に突っかかってきた男子生徒だ。お前、俺に攻撃してきたときは自分に強化の魔法使って殴りかかって来たじゃないか。なんでお前も普通に魔法使ってんだよ。でも、ちゃっかり魔法で強化して自分の身だけは守っている。それが分かる周囲の生徒はその男子生徒を白い目で見ている。


「誰も壁役を買って出ないから魔物もやりたい放題だな」


 遠くから魔法が飛んでくるが、スピードもそんなに速いわけじゃないので普通に避けられる。そして接近戦に持ち込まれて一人一人吹っ飛ばされている。死ぬほどの威力じゃないからそこまでの惨事にはなっていないけど。


 そんな生徒達の様子を見て、後ろでリリアスも呆れている。そしてリリアスが同じ班の仲間に何かの指示を出している。どうやらここからなら採点出来そうだな。




読んでくれて感謝です。

感想・評価・ブックマークをしてくれると嬉しいです。

よろしくお願いします!


ちょいちょいリリアスの能力について話していますが、これは今回の編でちゃんと披露しますのでお楽しみに!

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