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第365掌 一つのことを求めるって怖いことかもね



 屋敷に帰り、全員が戻って来るのを待つ。


 そして全員が帰ってくる夕方。俺はリビングに集合を掛けた。


「皆、今日もお疲れ様」


「前置きはいい。どうせ次の目的地についての話なんだろう?」


 ダンガがスパッと単刀直入に言ってくれる。


「ああ。それもあるし、ちょっとその前にやることもある」


「?」


 次に行く国の話だけではないと聞いてダンガも不思議に思っている。


「あのー。もしかして学園の遠征の話ですか?」


「ああ。リリアス、よく分かったな」


「はい。今日、ちょうどそんな話をしたものですから」


「あー、なるほど」


 それじゃあちょうど良かったかもな。


「今日、ギルド長から呼び出されてな。依頼を複数受けてくれと頼まれた。そのうちの一つが学園の遠征の護衛依頼だ」


「遠征ね。どこに行くの?」


 アメリアが聞いてくる。


「ノワール魔王国だ」


「ああ、あそこね・・・」


「ん?どうしてちょっとげんなりしているんだ?」


 アメリアだけでなく、他の皆もちょっとげんなりしている。げんなりしていないのは俺とリリアスだけだ。


「タカキとリリアスが知らないのも無理はない。リリアスは辺境の村出身だし、タカキに至っては最近この世界に来たばかりだからな」


 ダンガが小さくため息をつきながらそう言う。


「何だよ?何かあるのか?」


「あの国はな、美に対する意識が異常なんだよ」


「美に対する意識?」


「ああ。普通にしている分には特に何もないさ。でもな、美と付くものは凄まじい食いつきを見せる」


「え?なにそれ」


「そ、そんなところなんですか?」


「ああ。魔族の国ではあるが、そういった美を追求する者達も集まってくる。それがノワール魔王国だ」


「「えぇ~?」」


 俺達はふと、タブル村でのことを思い出した。それは魔族が村の遺跡を我が物とするために暗躍していたことだ。


 俺はその魔族の暗躍でこの世界でも物語みたいに魔族は人間にとって悪い国なんだなと思っていたのに。それで今回の依頼を受けたときにはちょっと緊張した。でも、魔法学園の生徒を遠征に向かわせるくらいだ。


「あれは一部の魔族の暴走ってことなのかもな」


「そうかもしれませんね」


「最後も間抜けな感じだったし」


「はい・・・」


 俺達は残念な最期を迎えたドンナーという女の魔族の散り様を思い出した。


「?よく分からないが、大雑把ではあるが、これでノワール魔王国のことは分かったな?」


「ああ。美に対する異常者の集まりってことは分かった」


「いや、言い方・・・」


「だって、さっきの説明じゃそうとしか取れないぞ」


「そうだが・・・」


「はいはい。別にいいじゃない。どうせ行ったら分かることだし。っていうか、私は話に聞いただけで実際に行ったことはないし」


「俺もそうだ。確かにアメリアの言う通りだな。行ったこともないのに一々こだわるのは止めよう。それで、タカキに聞きたいんだが、今回はお前に同行するメンバーはどうするんだ?」


「うん?」


「前回はカリーナ以外は同行しなかったからな。出来れば今回はついて行きたいんだが?」


 ダンガがそう要求してくる。


「ああ。今回は冒険者として受けるからな。パーティーメンバー全員で行くつもりだ」


「そうか」


「でも、ダンガは望むなら残ってもいいぞ?」


「は?どういうことだ?」


「いや、確かに前回、休みを出したけど、まだイチャつきたいなら残ってもいいぞって思って」


「おい・・・」


 ちょっとダンガが怖い感じになったので俺はすぐに軌道修正しにかかる。


「わ、悪かった。ダンガも参加だな」


「勿論だ」


 まあ、俺が帰って来てから一週間。その間もイチャイチャしていたし、いいだろう。


「それで、リリアス」


「はい?」


「リリアスはどちら側で参加するかを聞いておきたくてな」


「どういうことですか?」


「学園の生徒として遠征に参加するのか、それとも俺達のパーティーとして参加するのか」


「そんなのパーティーとしてに決まっているじゃないですか!」


「う~ん。でも、せっかく生徒として参加出来る機会だし」


「でも、それでタカキさんと一緒じゃないなんて嫌です!」


 前回、置いて行った手前、ちょっと申し訳ない気持ちになる。


「俺としてはせっかくの機会だから生徒として参加して欲しい」


「嫌です!」


 おおう。リリアスがここまで拒否するのも珍しい。


『それだけあんたと離れたくないってことじゃない。察しなさいよ』


 ボソッと俺が膝の上に乗せていたオルティがフォローしてくれる。


「じゃあ、折衷案といこう」


「折衷案・・・ですか?」


「ああ。学園側にも話を通す。リリアスは学園の生徒として参加。ただし、俺達が動く際にはグラスプのパーティーメンバーとして参加。どうだ?これならいいんじゃないか?」


「でも、他の皆さんより私、タカキさんと一緒にいれる時間少ないですよね?」


 シュンとしながらそう言うリリアス。可愛らしいな、おい!


「なら、今は美の祭典とやらが開催されているらしいし、デートがてらそれを回ろう」


「!は、はい!」


 俺の言葉に俄然嬉しそうにするリリアス。


「「・・・」」


 それを見て羨ましそうにするアメリアとカリーナさん。


「我慢しろって。ミールなんて同行も出来ないんだから」


 ダンガが二人を窘めてる。


「そう、ね。確かにそうだったわ。ミール、ごめんなさい」


「はい。ミールさん、すみません」


「わわわっ!いいんですよ!最近は旅が終わった後は優先的にタカキさんと一緒にいさせてもらっていますし」


 どうやらそういうことが決まったらしい。女子だけの会議か何かをしたのだろう。俺は参加していないからよく分からない。聞いたら俺がいない間にパジャマパーティーをしたらしい。


「さて。話もまとまったし、後は出発日を待つだけだな」


 ダンガがそう締めくくり出したので俺は待ったをかける。


「まだだって!他にも依頼を受けているんだから説明させろ」


「あ、ああ。悪い悪い。そう言えば、さっきタカキが出発の前にやることあるって言ってたもんな」


 そして俺は他の依頼も皆に説明していった。




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