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第363掌 結構短気なオルティ



 ギルドの二階。そのギルド長の部屋へとノックをしてから入室する。


「来ましたよ」


「ああ。来てくれたか」


「ええ」


 机で何かの作業をしながら答えるアネッサさん。


「それで?なんでわざわざ使者を出すことまでして俺を呼んだんですか?」


「だってあなた最近全くギルドに顔を出していなかったじゃない。それに基本的に拠点にずっといるってわけでもないみたいですし」


「まあ、こっちにも色々とやることがありますからね。冒険者だけが俺の生活ってわけでもありませんし」


 正確には冒険者は俺が目的を達成するための手段の一つだ。様々な国に行く必要がある以上はその行動が不審に思われない身分というものが必要となるからな。


「それはいいわ。それより早速で悪いんだけど依頼のお願いがあるんだけど、聞いてくれますか?」


「ええ。元々予想はしていましたし、受けるつもりでしたから。まあ、流石に無茶な依頼は受けませんが」


「分かっているわ。でも、これはあなたしか適任者が思いつかなかったの。だからお願いします。この依頼を受けてください」


 そう言って渡してきたのは複数の書類。全て依頼内容が書かれたものだ。


「この量・・・」


「今いる冒険者でもあなたにしか出来ない依頼ばかりよ。難易度は最低でもB。最高難易度はSS級かしら」


 振れ幅大きすぎるだろう。


「俺はA級冒険者のはずですけど?どうしてS級やSS級の依頼があるんですか?」


「どう考えてもそれらの依頼をこなす実力はあるでしょ?勿論、念のためにアルナス様に相談済みです。「彼とその仲間ならこれくらい容易く達成してしまうだろう」という言葉も貰っています」


 おい。俺の知らない場所でなんてことしてくれているんだ。俺はやることがあるっていうのに。


「基本的に依頼は国内のみよ。一つ例外はあるけど」


「ん?例外ですか?」


「ええ。一つだけ外国に行く必要がある依頼があるの。特にそれがあなたしか該当がいないの。最悪、他は断ってもいいからその外国へいかなくちゃいけない依頼を受けてくれない?」


「どれどれ」


 その外国に行かなくてはいけない依頼をペラペラと書類を捲って確認する。


「これか」


 内容は・・・魔法学園の生徒の護衛依頼。


 依頼内容は外国に遠征をする生徒の命の危機、もしくはそれに準ずるものに対する救助。接触は出来るだけしないものとする。


 簡単に言えばそういった内容が書類には書かれていた。


「確かにちょっと厄介だと思いますけど、これって俺じゃなくても出来るんじゃないですか?それこそ俺以外の高級冒険者に任せればいいじゃないですか。複数のパーティーに依頼を出せば解決でしょ?」


「勿論、複数のパーティーに依頼はするわ。でも、要にはあなたとグラスプにお願いしたいの」


「どうして?」


「魔法学園の生徒は貴族も多くいるわ。それは知っているわね」


 まあ、学園に行っただけで貴族を惨殺した俺は恐怖の対象だったからな。っていうか、そんな恐怖の対象である俺が魔法学園の生徒の護衛なんて大丈夫なのだろうか?


「あなたの考えていることは分かるわ。基本的にはあなた以外のパーティーメンバーに動いてもらいたいの。そしてどうしても対処出来ないものだけあなたにお願いしたいの」


「つまりは指揮だけして、本当に危ない場面以外では表に出るなってことですね?」


「・・・ええ。難しいことを言っていることは分かっているわ。でも、この要には貴族に遠慮することもない力、もしくはそれに準ずる者、しかも信頼出来る人にしかお願い出来ないの」


「なるほど。それで俺ってわけですか」


 まあ、俺なら力でどうとでも出来るし、後ろ盾としてこの国の王がいる。それに最悪どうしようもなくなったら今までに行った国の協力者の元へと行けばいい。そこで新しく拠点を作ればいい。


 幸いなことに最近、里の長なんて職業に強制的に就いたからな。まあ、全部アメーシャに丸投げしているけど。里を拠点にしたら長の仕事もしなくちゃいけなくなるから俺自身の目的に割くリソースが少なくなるってこともあってちょっと遠慮したいんだけどな。それも多分、俺が長として里に行った瞬間にアメーシャと結婚させられそうだ。他の皆に待って貰っている状態でそれはちょっと不義理だ。


「どうかしら?受けてもらえない?」


「一度パーティーメンバーに相談します。勿論、この中で俺達で簡単にこなせる依頼は受けますけど、流石に外国は相談しないと」


「そうね。分かったわ。でも、あんまり待ってもいられないの。学園行事だから期間が決まっている。だから出来れば明日までに。最悪でも明後日までに返事をちょうだい」


「はい。分かりました」


「それと、重要な話が終わったから聞きたいんだけど」


「はい。なんですか?」


「その抱っこしている犬は一体何?いつも連れている猫じゃないわよね?」


「ああ。新しいパーティーメンバーですよ。これでもかなり強いし、頼りになるんですよ。ま、それじゃ話はここまでってことで俺は帰りますね。ここ最近屋敷を留守にしていたからやることが結構ありまして」


 落ち着け。ただの犬だなんて俺は思っていないから。だから今にも俺の腕の中から飛び出して行こうとするな。


 俺は今にも飛び出して元の姿に戻りそうなオルティを強引に腕の中に収めながらそう言って部屋から退散する。


「ふぅ。ヒヤヒヤするから止めてくれ」


『私にもプライドがあるの。事情を知らないからって犬なんて呼ばれたらムカッと来るわ』


「はいはい」


 これは今後、重要な話し合いの場所には連れていけないな。いつ暴発するか分かったもんじゃない。


 さて。依頼のことを皆が全員屋敷に帰り次第、相談しますか。




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