第357掌 話をするのって結構大変だよね
そんなわけで次の日。
え?時間が夕食から飛んでるって?普通に夕食食べて寝たよ。皆戦ったわけじゃなくてもあれだけのプレッシャーだ。いつ殺されてもおかしくない場面に居合わせていたし、疲れるのも仕方のないことだ。
「さあ。話してもらうわよ」
そして今、リビングにはグラスプパーティーメンバー、使用人達、樹里とミッキー先生、神獣が全員勢ぞろいしていた。勿論、会議とかそういう感じの堅苦しいものじゃない。すでに終わったことを話すだけなので姿勢とか雰囲気は軽い。
「それじゃあ最初はどこから話そうか」
まだ霊薬を受け取っていないけど、まだ集めるのに時間が必要かもしれないし、ギリギリまでは待っておこう。それに霊薬とかそういうのは最後にしておいた方が色々と終わった感がしていい。
苦しんでいるクラスメイトには悪いけど、これでハイエルフの里に行って準備が終わっていなくて、時間まで歓迎とかされても困るからな。皆に旅の話をする暇もなさそうだし。
とここまで想像でのことで、実際にはどうなるのかは分からないけどな。
でも、霊薬を必要としていたのは俺達だし、そんな周知の事実的なものを集める。それだけで渡そうとしていること、ひいては俺がまた来ることがすぐに分かる。
「ま、妥当なのはヤームロ帝国の姫の話を先に終わらせることじゃない?」
「一番早く解決しましたものね」
樹里が提案し、カリーナさんが同意する。
そんな二人の言葉に従って時系列を省いてまずはエルフの王子のサーラ姫達のストーカー事件を話していく。
「―――――とまあ、こんなことがあったわけだ」
俺は最後にノーライフクイーンを倒して話を一度終わらせる。
「一つの国に行く毎に毎回絶対に何かしらのアクシデントが起こるわよね、タカキって」
そんな毎度のことみたいな言い方でアメリアがため息をつく。
「それで?他の目的に一切触れていないけど、他のはどうなったんだ?」
ダンガが俺がわざと端折った部分を指摘する。
「ああ。話として別々にした方が分かりやすいかなって思ってちょっと無視して話した。それじゃあ次はハイエルフの里の話だ」
まずはどうしてハイエルフの里にすぐに行かなくちゃいけなくなったのかを話さないとな。つまりはエルフの王子暗殺未遂事件からだな。
そんなわけで暗殺されそうになっていたエルフの王子を助け、俺のブレスレットを暗殺者に見られてしまったので急いで里に向かうことにした話をした。
「まさかアメーシャがハイエルフだったなんてな」
「分かっていたら魔法の話をいっぱいしてもらったのに、残念です」
ダンガが驚いている。まあ、ヒューマンからしたらエルフもハイエルフも見た目変わんないもんな。
あと、リリアスは多分エルフよりハイエルフの方が魔法に詳しいし、珍しい魔法とか知っていそうって思っての感想だろうな。
「それでハイエルフの里に行って―――」
そこから依頼をしてハイエルフ達から霊薬を貰えるように信用を勝ち取ろうとした話をする。
そんで神獣との出会い。ま、ここはガツンと殴って言うことを聞かせただけなので語ることも特にはないか。
『私としてはその端折られ方は蔑ろにされているようで不服なんだけど』
「でも、これが一番簡潔で分かりやすいだろ?」
『うっ。言い返せない・・・』
そんな神獣を黙らせて今度はそのまま神の眷属との戦いの話をする。
流石にそんな急に眷属が出てくるとは思ってもみなかったのだろう。俺が「―――でさぁ。神の眷属が復活しちゃったんだよね~」なんて軽く言ったら皆ひっくり返った。ナイスリアクションだと思って、おーって感嘆の声をあげてしまった。
「だ、大丈夫だったの⁉」
アメリアが心配そうに聞いてくる。
「そりゃここにこうしているんだから大丈夫だよ」
「いや、まあそうなんだけど・・・」
「ま、負けそうだったけどな」
っていうか、カリーナさん達が狙われたのには本気で焦った。実はあのどこかに避難した場所、地面の中なんだよね。削掘スキルを使って超高速で穴を掘って埋めての繰り返し。まあ、要するにテラコスの攻撃も届かない場所にシェルターを作ったってわけだ。そして最後に転移でテラコスの場所まで戻っただけ。
あの時は必死だったけど、自分でもとっさにそんなことを考えついたことには褒めてやりたい。
「「「っ⁉」」」
使用人達が実際に俺が本気で戦っている姿を見たことがないからそこまで驚いてはいない。勿論、負けそうになったって言葉に驚いてはいたけどな。リリアス達みたいに俺の戦いをずっとそばで見て来たわけじゃないから俺も無敵じゃないって分かっているんだろうけど。
逆にリリアス達のそばでずっとなんだかんだで何とかして来たから俺さえいれば最後は大丈夫って図式が出来上がっちゃっているのかも。
とりあえず、ここら辺の考えは後で思考するとして。
戦いの最中、俺に起こった自分的には僅かな、それでいて劇的な変化のことを話した。
「ふーん。相手が使っていた理解出来なかった魔法が急に理解できるようになった―――か」
「それだけじゃなくて自分も使えるようになった」
「それ、すごく気になります!」
ダンガとアメリアが俺に起こった変化に真面目に考える中、自分の大好きな魔法について、しかも未知の領域のものを使ったとしてリリアスがいつになく興奮気味である。
「どうどう。リリアス、落ち着け」
「っは!すみません。つい・・・」
「いや、いいんだ」
「とにかく、それで撃退したんだが、最後に眷属の仲間らしき奴のせいでテラコスに逃げられてしまったってわけだ」
そう話を締めくくる。
力については追々掴んでいくとしよう。ヒントすらない状態だからな。後回しにしても仕方ないだろう。
「それじゃ、そろそろいい時間だし、一回転移して霊薬貰って来るわ」
「あ!私も行くわ!」
「私もお供します」
樹里とミッキー先生が名乗り出た。
「別に取りに行って戻ってくるだけだからすぐに用事も終わるぞ?」
「最後にお礼が言いたいんです。貴重な霊薬を依頼をこなしただけの部外者に譲ってくれるハイエルフの方々に」
「そうそう!」
ミッキー先生の言葉に樹里が頷きながら「連れて行って!」と懇願してくる。
「顔が近い近い!分かったって!はぁ。それじゃちょっと行って来る」
そんなわけで俺と樹里とミッキー先生の三人はハイエルフの里にラフな姿で転移するのだった。
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