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第346掌 眷属との戦い テラコス編 その3



「くそっ」


 俺は今、テラコスとの魔法戦においてかなり押されている。


「ハハハッ。楽しいな!」


 さっきから最初の魔法の打ち合いのようにずっとお互いの攻撃魔法を撃ち落とし合っている。


 見た目は派手だが、やっていることは相性が悪い組み合わせを避けた単純な攻防だ。しかし、この単純な攻防にはかなり高度で精神的にキツい戦いが見え隠れしている。


 まず、確実に自分の所に向かって来る魔法が確実に撃ち落とすために角度調整や威力調整などをしながら自分の迎撃用魔法を放つ。そしてその隙を突いてテラコスに自分の魔法を放つ。しかし、それをテラコスは俺と同じように魔法で撃ち落とす。そんなことの繰り返し。


 これでは精神的にクるのも当たり前だ。一歩間違えれば一撃で大ダメージだし、死んでしまうかもしれない。慎重に、神経質にならざるを得ないのだ。


「ほらほら!もっとガンガン撃ち合おうぜ!」


 テラコスが撃って来る魔法の数が増える。


「マジかっ」


「マジだっ」


 さっきから余裕なのか、ふざけた態度で合いの手を挟んでくるテラコス。


「タカキさん!」


 そんな苦戦中の俺に後ろからカリーナさんが声を掛けてくる。


「なんだカリーナさん!悪いけど、話しながら戦う余裕は今の俺にはないぞ!」


『違うわよ!あんた、さっきから魔法ばっかりで戦ってるじゃない!』


「なんで最初から不利な状況なのに相手の土俵で戦っているんですか!」


「い、いや。これまでの戦いの中で一番使って来たのが魔法だったし・・・」


 撃ち合っている中、カリーナさんに怒られるという・・・。なんだこの状況は。


「相手は魔法を司っているとまで自分で豪語している相手なんですよ?しかも、その豪語している言葉は限りなく嘘ではないと分かる実力をすでに見せている。なのになんでまだ魔法だけで戦っているんですか!」


「うっ」


 確かにその通りだ。最近は魔法ばっかり使っていたし、それに慣れてしまっていたからうっかりしていた。


 それに相手の土俵で戦うなんてことは今まで自分より格下の相手とばかり戦っていたからつい癖のようなものがついてしまっていたのだ。これは反省して改めなければならない。こんな自分より格上との戦闘で

出てきてしまうようなものだからな。早いうちに治しておかないと。


「なんだなんだ?作戦か?なら俺は聞かないでおこうか?」


「うるせぇ!ちょっと黙ってろ!」


 俺は自分が発動出来る魔法の中でも最も扱いやすく、規模がデカい『聖焔の暴雷風』を発動する。


「おおっ?これは結構キツいな!」


 複合魔法だからか、結構真面目に俺の放った魔法に対処し出すテラコス。


「さて。今の内に少し落ち着いて話をしよう」


 俺はカリーナさんと神獣のいる場所に行く。


「すまん。戦闘中にちょっと油断することが、っていうか傲慢になっていることが癖みたいになっていたみたいだ」


『分かればいいのよ。分かれば』


「良かったです」


「そういえば最初、テラコスと戦う前に神獣が何かを言いかけていたよな?あれって何だったんだ?」


『ああ!そうだったわ!いい?気をつけなさい。あいつは魔法に対して絶対的な優位に立てる特権みたいな能力を持っているの。だから無闇矢鱈と魔法に頼った戦い方は止めなさい!』


「あ、ああ。それはカリーナさんにも言われたし、そうするつもりだけど・・・そもそもお前が気にしているアイツの能力って何なんだ?」


『それは魔法のむ―――』


「おっと。だからそれは言われたら面白くないだろ?そういうのは戦闘の最後の方でネタばらしをやらないと」


 神獣がもうちょっとでテラコスの能力を言うっていうタイミングでテラコスは俺の『聖焔の暴雷風』を完全に全て処理してから俺と神獣の間に入って来た。


「『っ!』」「きゃっ」


 俺と神獣は焦ってお互いにその場から距離を取る。カリーナさんは俺が抱えている。


「おいおい。凄い嫌われようじゃないか。俺が何かしたか?」


 相変わらずな余裕の表情で問いかけてくる。


「いや、普通は敵と接近したら攻撃するか、距離を取るかのどっちかだろう」


 俺はちょっと飽きれながらそう答える。


「まあ、雑談はそれくらいにしてっと。さあ、ここから第二ラウンドだ」


 俺は構えながらそう言い放つ。


「ほう?それじゃあさっきよりもっと俺を楽しませてくれるってことか?」


「ああ。さっきまでとはまたちょっと違った戦いをするぜ」


『馬鹿!なんでわざわざそんなヒントを与えるのよ!ノーヒントでいきなり襲い掛かりなさいよ!』


 神獣よ。お前、言い分は完全に悪者側なんだが、それでいいのか・・・。


「戦闘の質の向上に関する口出しならともかく、そういう茶々を入れるのは止めろ」


 テラコスが威圧スキルの域を超えた何かで神獣に圧を掛ける。


『うぐっ』


 神獣はその圧に当てられて黙り込んでしまう。多分、喋ろうにも喋れなくなっているのだろう。


「神獣。いいから見ていてくれ。もう大丈夫だから」


『―――っ』


 何とか頷く神獣。


「ふむ?なんか反省しているみたいだし、これくらいで止めておいてやるか」


 そうテラコスが言うとその圧が消える。


「それじゃあ見せてくれよ?」


「ああ。ここからは本当の意味での俺個人が持っている力を全部出し切って戦ってやる」


 そして俺はテラコスに重力操作・自己スキルで体重を軽くし、高速移動スキルで一瞬でテラコスに肉薄する。そして火炎魔法を纏った拳でテラコスを思いっきり殴りつけた。




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