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第334掌 老害はどこも一緒なのかもね



 エリトゥナが長達の部屋へと入ってから数分が経ち、ふとアメーシャが呟いた。


「ねぇ。もしかして、報告が終わって呼ばれるまでずっと私達、廊下で立ちっぱなしなの?」


「あー。そう言えば特に何も考えてなかったな。報告とかもすぐに終わると思っていたし。だからすぐに俺達も呼ばれると思っていたわ」


 扉の向こうから聞こえてくる声には「それは本当なのだな?」「嘘など言っていないのだな?」みたいな問答が続いている。正直に言えば長い。サクッと報告ぐらい終わらせろや。


「しょうがない。終わるまでの話の流れとか分かるようにちょっと盗聴でもしますか」


「え?そんなの出来るの?」


「ああ。出来るぞ」


「じゃあ、中の話も気になるし早くお願い」


 アメーシャに促されながら俺は時空魔法を発動。中の目立たない場所の空間に穴を開けてそこから声がはっきりと聞こえるようにする。


「これで聞こえてくるはずだ」


「地味に所々聞こえてくるから逆に気になっていたのよ」


 まあ気持ちはわかる。自分のことを報告しているんだなって分かると気になってくるよな。


「それじゃ早速」


 そう言ってアメーシャは俺が開けた穴に顔を近づける。俺も聞くとしますか。


『で?本当に第三依頼をクリアしたと言うのか?』


『先程からそう報告しているじゃないですか!いい加減に信じてください!』


『・・・信じられない。それに証拠がないじゃないか』


『そうだ!証拠がない!』


『我々を納得させたければ証拠を持ってこい!今までの第一依頼と第二依頼でもそうして来たじゃないか!』


『それはさっきも言ったじゃないですか!証拠なんてそもそも持ってくるのが無理だって!こっちにも達成したっていう自信はありますから聖域にでも行って自分の目で確認して来てくださいよ!』


『我々はここを動くわけにはいかん』


『そうだ。我々はいざという時のために後ろにいなくてはならないのだ!』


『我々に何かあれば里の統治も滞ってしまうぞ!』


『危険はないって何度も言ってるじゃない!もういい加減にしてよ!』


『なんだその物言いは!』


『そうだぞ!里の長相手に不敬であろう!』


 あー。なんか大変面倒くさいってことだけは分かった。っていうか、エリトゥナも我慢の限界が来たのか、半ギレである。


「これってマズくない?このままじゃ私達が呼ばれる前にエリトゥナが拘束されて私も文句どころの話じゃなくなっちゃうんだけど」


「ああ。この会話の応酬を聞いているだけでも俺達に霊薬を渡すつもりはないって分かるからな。俺もここでアクションを起こしておかないと」


「どうするつもり?」


「もうちょっと聞いて、いい感じの場面でこっちから介入する。エリトゥナも頭に血が上っているのか、俺達のことを忘れている可能性もあるからな」


 いや、忘れてはないけど呼ぶタイミングがないって感じか。


「分かったわ。それじゃあタイミングはそっちに任せる。私はあなたの後に続く形で行くから」


「おう」


 そんなわけでもう一度だけ中に繋がっている穴に聞き耳を立てる。


『貴様は我らを貶す大罪人である!このまま拘束する!』


『待って!しょ、証拠!証拠ならあるわ!』


『ふん!今更そんなことを言ったところで遅いわ!どうせ嘘なのだろうしな』


『そうだ!』


 ここら辺が限界だな。ちょうど俺達のことを言おうとしてくれているみたいだしな。


「いくぞ」


 俺は横のアメーシャに声を掛ける。


「ええ」


 アメーシャからの返事を聞いてから俺は扉を思いっきり開け放った。


「その拘束、待った!!!!!」


 まさに『バ―――――――ンッッッッ!!!!』って効果音でも鳴っていそうな登場である。


「な、何事だ⁉」


「この部屋に許可なく入って来る者などこの里にいるはずが・・・」


「あれは人間ではないか?」


 なんかアタフタしているな。


 俺の視界に映ったのは九人の長達。大学の講義をする講堂の生徒とかが座る場所みたいな所だ。それが二段の席になっていて、下に五人。上に四人の長がいる。


「ここにいるじゃん。まあ、この里の人間じゃないけどな」


 そもそも里のハイエルフ達もお前達に絡まれるのが嫌だからここに近寄って来ないだけじゃないの?


「何用だ!人間!」


「ここはハイエルフでも選ばれた者のみに存在することが許された場所だぞ!」


「どこにいようと関係ない。そもそもここにいることに一体誰の許しが必要だって言うんだ?ここがどこだろうとそんなのはその場所にいる人間が勝手に決めているだけだろう?」


「我々が決めたことなのだ!下等種族である人間が出しゃばって来ることではない!」


「出しゃばるなって・・・おいおい。こっちはあんた達が言う証拠を持って来たって言うのに。なんて言い草だよ」


「証拠だと?どうせ聖域になど行っていないのだろう?」


「もしも本当にあの場所に行って来たのであればそのような無傷であるはずがない」


「少なくとも重症。もし無事でも何人かは死んでいるのではないか?」


 なんか無茶苦茶言ってるな。自分で自分が出した依頼が達成不可能だって言っているようなもんだって気が付いているのか?


「そうか。あんた達、元から霊薬を俺達に渡す気なんてなかったってわけだな?」


「ふんッ!何を言い出すかと思えば!この里に滞在する許可を出しただけでもおつりがくるだろうが。霊薬などただの人間に渡すわけがあるまい!」


 断言したな。


「そうか。分かった」


「ようやく自分の分を弁えたか」


「ああ。お前達に遠慮する意味がないってことがな。そんなわけで、それじゃ早速お前達が散々言って来た証拠を出してやろう」


「ふん。何を言い出すかと思えば」


「そんなも無理に決まっているだろう」


「ならその目でしかと見るんだな。それじゃ元に戻っていいぞ」


『了解』


 そして俺の言葉で神獣がその場で本当の姿に戻ったのだった。




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