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第323掌 仲が悪いことは薄々気が付いてた



 アメーシャについて行き、太陽の光が木々の隙間から零れる里の奥へとやって来た俺達。周囲の風景を見渡しながら歩いて目的へと向かっていた。


「ここら辺は流石に人が住んでいる場所とは雰囲気が違うな」


 俺は周囲を見渡しながらそんな感想を抱く。


 魔の森とはまた違った雰囲気で、周囲に陰りを生んでいる。魔の森は邪悪な感じがビシバシと伝わって来ていたんだが、ここは神聖な雰囲気を感じる。


「この先に聖域はあるわ」


「でも、世界樹がある場所が聖域って呼ばれているわけじゃないんですね」


 カリーナさんは疑問に思ったことをアメーシャに聞く。


「ええ。世界樹はこの里の信仰であると共に守りの象徴でもあるの。でも、そんな象徴とこれから行く場所の意味合いを考えたらちょっとね」


「何か理由があるの?」


 樹里が言い淀むアメーシャを不思議に思いながら聞いた。


「ええ。この先にある聖域って言うのは簡単に言うとお墓なの。ハイエルフって永遠とも言える時を生きる長寿の種族でしょ?だから寿命で死んだら誇りになるの」


「誇り?なんで死んだら誇りになるんだ?」


「長寿ってだけあって死には一番遠い種族でしょ?事故や殺されでもしない限りは気が遠くなるほどの時間を生きるの。そんな時間を私達は耐えられないの。結局は自殺とかしちゃうってわけ」


「なんか・・・悲しいですね」


 カリーナさんは俯き、暗い表情になる。まあ、精神がすり減って生きているのに耐えられなくなって自殺するってわけだからな。聞いているだけでも悲しくなるんは分かる。もしも里の外の世界で生きていたらかなりキツいだろう。自分達よりも寿命が圧倒的に短い種族ばかりだからな。


「だからこそ、寿命で死んだっていうのはそれだけ凄いことなの。そんな辛い状況を乗り越えて生き抜いたってことだからね」


「だから聖域って場所を作ってそこに供養してあるわけか」


「そういうこと。実際に何百、何千年。下手したら何万年を生きていたハイエルフの遺体っていうのはそれだけで凄い魔力を内包しているの。使わなかった魔力を体内に蓄積していったからね。だから聖域っていうのもあながち間違っているわけじゃないの」


「なるほど。凄い場所だってことは分かります。あまり魔力とかに敏感ではない私でもこの先からビシビシと魔力を感じますから」


 ミッキー先生が緊張しながら自分達が向かう先を見据える。


「でも、おかしいな。俺は魔力とかには敏感な方なのに最初に里に入った時にはこんな魔力が凄い場所、感知出来なかったぞ?」


 把握スキルで感知しようとしていたわけじゃないから精度は落ちるけど、それでも俺は内包している魔力量が半端ないから他の人より魔力がある場所っていうのは気付きやすい。でも、それが気付かないっていうのは・・・。


「それはそうよ。この聖域っていうのは大昔、里全体に結界を張ってこの里を今も守り続けているハイエルフが別で結界を張っているの」


「え?でも、結界を通って来たって感覚はしなかったわよ?」


 樹里は驚く。


「ここは緊急用の結界が張ってあるの。いざという時以外は基本的に誰でも出入り出来るわ。常時発動しているのは神聖な魔力が溜まっていることを分からなくさせるための認識障害の超強力な魔法だけ」


「それで気が付かなかったのか」


「そういうこと。そしていざという時には巫女と長達の権限で最も堅牢な最強の防御結界になる」


「え?じゃあアメーシャさんがその防御結界を発動出来るんですか?」


「いえ、私だけでは無理よ。長と私。双方の同意がなければ結界は発動出来ないの。双方が危険だと判断しないとね、どちらかが悪用する可能性もあるから。だから巫女は長とあまり仲良くしては意味がないの」


「でも、今回の巫女と長達の仲の悪さは今までで一番かもしれない」


 エリトゥナがそんな新情報を漏らす。


「確かに仲が悪いんだろうな~って思ってはいたけど、そんなに?」


 樹里は興味本位でエリトゥナに聞く。


「ええ。いつもいがみ合っていたし、巫女が里にいる間はいつも対立していた」


 どうやら筋金入りの仲の悪さらしい。


「だって!自分本位な奴らばっかりなんだもん!権力持って調子に乗る典型的な奴らよ!外の世界も見て来たから分かるわ!」


 どうやら旅の行く先々で色んな奴に出会って来たらしい。まあ権力云々を言っているから見て来たっていう連中は村の村長や、貴族とかそういう奴らなんだろう。俺も地方とか町には顔を出していないからそこまで細部のことは知らないけど。


「そういう奴らは見てるだけでも嫌になるもの。だから私は向こうの考えに従う気は一切ないわ」


 言い切ったなー。まあそれでいいとは思うけど。だってその権力に酔う長が良いように何百、何千年も里を治めるなんて一般市民からしても嫌だろう。あ、この場合は一般里民?


「っと。話していたら着いたわね」


 アメーシャはどや顔で宣言した後、何かに気付いてその歩を止める。


「?何もありませんよ?」


 ミッキー先生は不思議そうにその先を見る。


「ここからは巫女か長がいないと入れないの」


「本当に厳重に管理している場所なんですね」


「そうよ。そんなわけでちょっと下がってて。今開けるから」


 そう言ってアメーシャがいそいそと準備を始める。


 近くにあった二本の木にそれぞれ一本のヒモを括り付ける。


「これで良し」


 そしてそのヒモを持ち、二本のヒモに自分の魔力を流し込む。


 すると、そのヒモを括り付けている木と木の間に変化が起こった。


「空間が歪み出したな」


 そしてそれは姿を現した。


「さあ。門が開いたわ。行きましょう」


 聖域が門の奥に現れたのだ。




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