第318掌 結構前の話って忘れることあるよね
「次の日の朝」
「何を急に朝から言ってんのよ」
樹里に呆れられながらもリビングに顔を出す。まだ俺と樹里以外は寝ているようだ。仕方ないけどな。
「いや。本とかでよくあるじゃん?次の日まで時間を飛ばすときに使用する謌い文句」
「兄を訳の分からないことを言ってるのよ。まだ寝ぼけているんじゃない?顔でも洗って来なさいよ」
樹里に諭されてしまった。
「それより、ミクス。あの後どこに行ったんだろうな」
「そうね。まさかあの後いきなり行方不明になるなんて思いもしなかったわ」
実はあの後、普通に俺達は寝たのだが、次の日の朝になるとある情報が飛び込んできた。
「でも、ハイエルフっていうのは自分のことを至高の存在とかそういうものとかだと思っているし、そんなにミクスのことを気にしていないよな」
「まあ、そのミクス行方不明事件の後に行方不明だった子供の親が訪ねて来た時には流石に皆ビビっていたみたいだけど」
「子供をあなた達が保護して家に帰したなんてことになったからあの親が来たんじゃない。お礼とついでにハイエルフの子供を助けた件と関係があるかどうかを聞きに」
「何もわざわざあんな夜中に来なくてもいいのにな」
そう。早朝に訪ねてきたわけではなく、夜中に訪ねて来たのだ。まあ、ミクスが行方不明になったんだから当たり前なのかもしれないが。ちなみにミロンの親は里の警察的組織に所属しているらしい。
「おかげで皆寝不足よ。事情聴取までされるなんて思いもしなかったわ」
「ミロンを助けたって言うのに疑うとはな。ちょっと「はぁ?なんでこんなことされなきゃならないんだ?」ってイラつきと眠たい気持ちを隠しながら事情聴取されていた気がする。最早記憶も曖昧だけど」
「で、眠たい気持ちを抑えて私達は現在起きているってわけね」
「誰が依頼についてミクスの代わりにやってくるか分からないからな」
それでとりあえずは交代で寝ようということになった。事情聴取は朝方まで順番に行われたからな。それで俺と樹里がペアになったのだ。そして俺と樹里は仮眠だけ最初に取って早朝に起きているわけだ。残りの三人は現在爆睡の真っ最中だろう。
「私は早く寝たいと思っているんだけど・・・ちょうどいいからこの機会に聞いておきたいわ」
「ん?何をだ?」
「あなた達が何をしているのかを」
「え?どういうことだ?」
「この世界に来てからの目的よ」
「ああ。それなら前にも話したような気がするけど?」
散々隠してはきたが、神の依頼についてはこの樹里とミッキー先生には話しているからな。まあ話したのはそこまでだけど。っていうか俺、樹里達に事情話していたのすっかり忘れて知らないと思って対応してたわ。今までの地味な苦労は一体・・・。
「凄い人からの依頼っていうのは聞いたわ。でも、それだけであんな危険な依頼をする必要があるの?」
樹里の気を遣ったのか、神の名前は出していない。
「ああ、それか。それについてはあるとだけ言っておく。報酬も出ることだし」
「報酬?」
「ああ。可能な限りは何でも望みを叶えてくれるそうだ」
「望みっていうのは決まっているの?」
「ああ。もう決めている」
「それって?」
「悪いけど、まだ秘密だ」
これは可能かどうかの判断が際どいからな。その望みもヤームロ帝国で女性陣の皆の気持ちを聞いてから決めたことだし。
「まあ、俺達の依頼が完了したら樹里達にもいいことがあるよ」
「・・・今は教えてくれないのね」
「ああ。樹里達は俺の協力者(仮)ではあるけど、まだ仮採用だ。っていうか協力者だったらまだ話せないな」
「どうすれば話してくれるようになるの?」
「仲間になったら・・・かな?」
「・・・そっか」
仲間の基準は色々とあるけど、基本的にクラスメイト達を俺の依頼に巻き込むつもりはない。だから今は少なくとも神の依頼が全て完了するまではクラスメイト達に全ては話すつもりもない。
「それじゃこれで話は終わりだ。とりあえず、朝食にしよう。朝って言ってもこの後俺達も爆睡するんだから軽めのものの方がいいだろう」
俺は胃に重たくないような食材を選んでサンドイッチにする。ついでに今はまだ爆睡中の三人の分も用意しておく。
「にゃ~」
「あ、リア。起きたのか?」
「にゃにゃあ」
「リアの分も作るから待っててくれ」
っていうかリアは事情聴取とかされなかったんだから十分寝ただろ?なんでちょっと疲れた顔してんの?
「にゃにゃー。にゃにゃにゃんにゃ」
リアはまず寝ているポーズを取っていたが、急にビックリしたかと思うと影を使って別の場所に移動。そして戦闘態勢になる。あ、ポーズだけな。
でも、ジェスチャーでなんとなく分かった。
「リリアスに喚び出されたのか」
「にゃ!」
どうやらこちらで気持ちよく寝ていたら召喚魔法でリリアスに喚び出されていきなり戦闘になったようだ。リアは喚び出したけど、俺には声を掛けないってことはそこまで緊急性があって危険な状況になっていたわけではないようだ。
「リアも大変だったな。ほら。ツナたっぷり乗せの猫まんまだ」
まあ、ツナって言ってもツナもどきだけどな。この世界にマグロがいるわけじゃないし。
「さて。出来た。樹里、食べるとしよう」
「はーい」
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