第302掌 第一依頼②、③開始 その2
聞こえてきた悲鳴を頼りに、走ってその悲鳴を上げた人物の元へと向かう。
「まあ、悲鳴が樹里達のものだったらそんなに心配はいらないんだけどね」
「え?」
しかし、俺の一言に驚いた様子のカリーナさん。ビックリしたといった表情をしている。
「いや、驚くようなことじゃないだろ?」
「た、確かに私達なら倒せるレベルのモンスターではありましたけど、アレはキリさんやキミさんには無理なんじゃ!」
「それくらいは分かっている。けど忘れてるぞ。キチンと護衛を付けていることを」
そもそもまだまだ弱いだろう樹里達を護衛も無しにこの里に放置するわけがない。こんなしっかりと何百、何千年と継続して維持し続けている結界に入ってくるようなモンスターだ。一定ライン以上の強さはあるだろう。
一つの目安としてはレベルが100を超えているとかかな?あとは空間系の結界と相性が良かったらこの里を覆っている結界を破って入ってこれるかも。まあ、空間系の結界と相性が良い能力なんて思い付くのは同じ空間系の能力しかパッとは出て来ないけど。
話がズレたな。話題を戻そう。
「あっ!リアちゃんですか?」
「そうそう。うちのパーティーでナンバー2の実力者だぞ」
「えっ⁉私、ダンガさんだとばかり思ってました・・・」
「気持ちは分かるぞ。あのムキムキな見た目だからな」
あんなガタイの良い男よりも可愛らしい猫の方が強いなんて普通は思わないよな。気持ちは分かるぞ。そんな猫より強い自分のことは棚に上げるけどな。
「おっ!」
「どうしたんですか?」
「把握スキルに反応があった。そろそろ樹里達のいる場所に着くぞ」
それから数分で開けた場所に出た。
そこでは木の陰に隠れている樹里とミッキー先生。それと俺がさっき倒したモンスターと同種のモンスターと戦いを繰り広げるリア。さっきから中々に立体的な動きをしながらの戦闘をしている。なんだろうか。普通なら気持ち悪いという感想しか持たないモンスターもリアとの戦闘という括りで見たらちょっとカッコいいと思ってしまうかもしれない。
「ギギギッ!クシャシャシャシャ!」
リアにぶっ飛ばされて木に衝突するモンスターは怒りを露わにしている。警戒音のようなものを出す音が気持ち悪い。やっぱりカッコいいと思ってしまったっていう発言は取り消すわ。
「にゃにゃ!にゃぶるす!」
リアがモンスターが警戒音を出す際に止まったのを見逃さなかった。闇魔法で影で作り出した杭を地面から発生させる。それをあっけなく食らってしまうモンスター。そして少しの抵抗の後にモンスターは息絶えた。
「にゃふぅ」
終わったー!って感じでにこやかな雰囲気を出すリア。表情なんて普通は猫に動かせないはずなのだが、動いている気がしてならない。どういう原理なのだろうか?
「・・・凄いですね」
カリーナさんはリアの戦闘力にビックリしているようだ。まあ、さっきの戦闘の様子を見た限り、戦闘も最後も最後。終盤ってところか。
「さて。俺はアレの後処理をするか」
串刺し状態のモンスターをMP操作スキルを使って宙に浮かせる。そして火魔法できれいさっぱり消し炭だ。
「す、凄かった・・・」
「正直半信半疑でしたけど、凄い子なんですね、リアちゃんは」
木の陰から出て来てリアの元に駆け寄る二人。二人によるなでなでが止まらない。
「にゃにゃにゃふぁす!」
嬉しそうではあるが、流石に鬱陶しそうでもある。
「二人とも大丈夫そうだな」
そんな様子の二人と一匹に話しかける。リアを現状から助け出すための助け舟でもある。
「にゃ~にゃ!」
俺の肩に飛び乗り、感謝の意を表現して俺の顔にスリスリしてくるリア。
「こらこら。くすぐったいからやめなさい」
「にゃ!」
「「「う、うらやましい・・・」」」
「うん?」
仲間になったのも元は俺について来たってとこから始まったからな。一番懐いていてもおかしいことはないだろう。一番一緒にいるのは召喚獣ってこともあってリリアスだけど。
「それより、なんで襲われてたんだ?」
「知らないわよ。ここら辺が採集ポイントって聞いて探していたら急に現れて襲って来たんだから」
「あれは流石に私もダメです・・・。生理的に受け付けません」
ミッキー先生は顔が真っ青である。
「先生も苦手でしたっけ?前に教室に入って来た蜘蛛を素手で捕まえて外にリリースしていたじゃないですか」
「孝希君。勉強不足ですよ?蜘蛛は虫ではなく、節足動物というれっきとした動物なんです。だから虫ではないのです」
確かにテレビとかで聞いたことがあるな。しかし、見た目が虫と大差ないだろう。学術的な意味合いで判断しているっていうのもある意味凄いけど。
「まあいいや。それで?あのモンスターは俺が何とかするから。それより採集は上手くいっているのか?」
「ええ。もうほとんど集まったわ」
「そうか。それじゃあ俺はあと少しここら辺を見てモンスター討伐の続きをするから。カリーナさんももう樹里達に合流してそっちを手伝ってくれたらいいよ。依頼④の方のこともあるし、先に帰ってくれたらいいから」
「そうですか?」
カリーナさんは申し訳なさそうにしながらも俺について行くとは言わない。どうやら相当あのモンスターが嫌なのだろう。
そんなわけで周囲に把握スキルの反応があるモンスターを片っ端から片付けていった。
SAN値が下がったけどな。
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