第295掌 ゲームのイメージって凄い浸透率だよね
「ようこそ、私の家に」
中に通されると中々に良い家だという感想を持つ。
この里にあるウッドハウスって感じで珍しそうな部分は特にない。確かに一人でこんな一軒家に住んでいるのはいいご身分だとは思うけどな。だが、俺は日本でコンクリートとかその他諸々の作り方で作られる一軒家でしか暮らしたことないからな。これ以上の建物の感想を持たれても困るというものだ。
「いいわー。こんな家、将来住んでみたいわー」
樹里がそんなことを言いながらうっとりしている。
「そんな玄関にいつまでも立っていないでこっちに来なさいよ」
すでにキャラも崩壊しているのか、取り繕うこともしないアメーシャ。そんなアメーシャに促されて俺達は家の奥に入っていく。
そして通されたのはリビング。いや、この世界で地球の部屋の定義と同じだとは思わないけど、とりあえず分かりやすいからそういうことにしておいてくれ。
「さあさあ。座って。お茶を出すわ」
そう言ってリビングと一緒になっているキッチンに入っていくアメーシャ。なんか妙にテキパキしているっていうか、なんか嬉しそうだな。何がそんなに嬉しいんだ?
「どうしてそんなに嬉しそうにしているんですか?」
あ、俺が気になっていることを普通にミッキー先生が聞いた。
「え?そんなに嬉しそうにしてた?」
お茶の準備をしている最中だったアメーシャは自分の顔を両手で触りながらもみもみしている。自分の表情に気が付いていなかったんだろう。
「してたしてた」
俺もミッキー先生に同意する。
「そ、そうなんだ・・・」
顔を真っ赤にしながら顔のもみもみを続ける。
「しかし、俺達にとっては今までの世界での生活とはかけ離れていると言ってもいい環境だな」
「そうね」
「はい」
地球組が俺の言葉に同意する。
そもそも森の中で暮らすなんてすることがまずないし、しようとも思わなかった。しかし、こうして実際に森の中にあるウッドハウスに入って寛いでいるとなんだか安心するし、ホッと一息つけるこの環境を心底いいなと思ってしまう。・・・疲れてんのかな、俺?
「何の話をしてるの?」
そんな俺達にアメーシャは問いかけながらキッチンから俺達の座っているリビングに淹れたてのお茶を持ってやって来た。
「いや、ちょっと故郷の話をな」
「へぇ。あなた達の故郷の話ね。どんな場所か気になるわね」
そう言いながら各自にお茶を配っていく。そして全員に配り終わったアメーシャは空いている席に着いた。
「聞かせてくれない?」
「悪いけど、故郷については俺達にとってのトップシークレットの一つだからな。話すことは出来ない」
「そう。残念ね」
俺達の故郷の地球はハイエルフの里よりもこの世界では現実離れしていてまずありえないと思ってしまうだろうし、実際に神にでも介入されないと実現しない邂逅だからな。
「それより、これからどうするんだ?」
「そうね。私のお世話役ってことで今、ミクスが話を通してくれている最中だろうから、まずは基本知識を覚えてもらうわ」
「基本知識?」
「いや、言い方がダメね。基本知識というより、あなた達にとって必要な知識よ」
何だろうか?
「霊薬のことについてよ」
そのアメーシャの言葉に全員が真面目な表情になる。特に樹里とミッキー先生は。
「そもそもあなた達は仲間達に使う適量を知っているの?」
「適量?」
「一人一つとかじゃないんですか?」
樹里とミッキー先生は適量と聞いて頭の上に疑問符を浮かべている。
「樹里とミッキー先生、もしかしてゲームの知識で考えている?そもそも現実で薬を使うなら適量で飲ませたりするだろ?特に液体系統ならな」
いや、まだ霊薬が液体か分かんないけど。俺も霊薬と聞いてゲームのイメージだけで言ってるな。
「タカキの言う通りよ。霊薬は液体。それを何かの容器に入れてそれを丸々一つ一人に飲ませればいいというわけではないわ。霊薬は劇薬でもあるの。一つ間違えれば違う状態異常になりかねないわ」
「そう、なんですね・・・」
イメージだけで考えていたミッキー先生は恥ずかしそうに俯く。先生としては恥ずかしいのだろう。師匠をしたことがある俺には分かるぞ。生徒の前でやらかすことの恥ずかしさがな。
「だから報酬の霊薬はその仲間達の毒によって判断されるわ」
「じゃあ、大丈夫ね。アメーシャはすでに毒の状態を見ているんだから」
「悪いけど、毒の種類とかは分かるけど霊薬の適量までは分からないわ。そういうのは作っている人に聞くしかない」
「じゃ、じゃあその人に聞きに行きましょう!」
「い、いいけどちょっと待ちなさい」
立ち上がったミッキー先生を慌てて止めに入るアメーシャ。
「どうして止めるんですか⁉」
「まだミクスが説明し終わっていないわ!説明が終わればこちらに報告してくるはずだし、それまでは待ちなさい」
確かに。説明も碌に終わっていない状況でノコノコと霊薬を下さいとか言ってその人の元を訪れたらどんなことになるかは想像出来る。
まず間違いなく霊薬は渡してくれないし、何かを教えてすらくれないだろうことは簡単に想像できる。
「お茶でも飲んで落ち着きなさい」
アメーシャの言葉に頷きミッキー先生は席に再び着くのだった。
読んでくれて感謝です。
感想・評価・ブックマークをしてくれると嬉しいです。
よろしくお願いします!




