第291掌 そもそも隠し通せるわけがないよね
ふぅ!
今回もギリギリだったぜ!
そんなわけで今回から新しい編である「ジョールズ共和国 ハイエルフの里編」が開始します。
よろしくお願いします!
流石にハイエルフの里まではサーラ姫とカレン姫を連れて行くのは危険だと判断したのでコッソリと時空魔法の転移で帰ってもらった。ちなみに樹里達、俺のことを知らない組には「護衛を引き連れて帰った」と適当に誤魔化しておいた。実力をある程度までは隠していないし、面倒だからだ。
「そういえば、あのまま王子を放置してきて大丈夫だったの?」
アメーシャを先頭に首都の外に出て歩いている最中に樹里が聞いてきた。
「ああ。結界を張っておいたから大丈夫だと思う」
「結界?」
樹里が首を傾げる。
ああ。樹里とミッキー先生は俺が何が出来るのか知らなかったな。ちなみにアメーシャはスルーだ。王子のことなどどうでもいいのかもしれない。しかし、そのキャラってどこまで続けるんだろうか。飽きたら化けの皮を剥がしてやるか。
「タカキさんが普段使っているっていう風の結界ですか?」
カリーナさんがリリアス達の誰かに聞いたのか、俺が普段最初に使う防御系統の風の結界のことを聞いてくる。
「いや、今回は別の結界」
「別の?」
「ああ。あの襲撃者を拘束しようとした時に植物魔法を使ったんだけど、何故か言うことを聞かなかったからな。でも、ハイエルフならそれも納得だし」
ハイエルフは風や植物が得意分野って印象があるからな。
「だから火魔法で結界張っておいた」
「エルフ相手に火魔法って・・・」
アメーシャが俺の張った結界の内容に食いついて来た。
「確かに・・・。エルフって火とかを忌み嫌うって聞いたことあるわ」
樹里も呆れた表情で俺を見てくる。
そんな俺はと言うと。
「・・・すっかり忘れてた」
だって!だってそうじゃん⁉言い訳にはなるけどさ、そもそも風魔法とか植物魔法が相手に効かないからハイエルフが苦手にしていそうな火魔法の結界を張っただけで。
「だ、大丈夫ですよ!命が危険に晒されなかったらその結界は発動しないんですよね?」
ミッキー先生が俺のフォローをしようとそんなことを言ってくれる。
「あ、ああ。そうだ」
俺もそのフォローに便乗する。まあ、それで自分の命を守ってくれるのが忌み嫌う火魔法であるっていうのも何たる皮肉かって感じだけど。
「と、とりあえず!その話はもういいじゃないか。それより、これってどこに向かっているんだ?」
俺は話の方向が俺への避難になる前に話を逸らす。
その俺の言葉にジト目を皆がしている。アメーシャも同じくジト目をしていたが、俺の言葉にため息を吐いた後に答えてくれる。
「そんなの、ハイエルフの里に決まっているじゃない」
「いや、それって歩いて行ける距離なのか?」
現在進行形で歩いているけど。
「俺が飛んで皆を運んだ方が速いんじゃないのか?」
絶対に歩いて行くよりは早く着くし、それに楽だ。
「ダメよ。里は簡単には入れないようになっているの。きちんとした手順を踏んで行かないと」
「そんなのがあるのか・・・」
確かにハイエルフの里が普通にあったら「ホントにハイエルフって凄いの?馬鹿じゃないの?」って思っただろうけど。
「当たり前よ。この徒歩での移動っていうのもその手順の一つよ。まあ、そんなに嫌な顔をしないでもいいわよ。そこまで遠くはないわ」
アメーシャが「この徒歩での移動っていうのもその手順の一つよ」って言った辺りで皆が「徒歩で里までって・・・。どこまで歩くんだよ・・・」って顔をしているのに気が付いて苦笑いをしながら補足で遠くないことを伝える。
その言葉でみんながホッとした表情をする。
「手順っていうのはどれくらいあるんだ?」
「んー。三十個ほど?」
あー。ダメだ。流石にそんなに長い工程を行うなんて。時間の余裕もないのにそんなにチマチマしてられるか。クラスメイト達も危ない状態のままなんだ。いくら俺の時空魔法で毒の侵食を止めているっていったって現状維持のままだからな。
「ダメ。待てない」
「待てないって言われても・・・。そもそもハイエルフでもどうにもならないのよ?これは遙か前、神代の時代のハイエルフが神により賜った伝説の空間魔法による超高度な結界なんだから。それをどうこう出来るわけがないでしょ」
アメーシャが呆れ顔でそう言ってくる。
樹里もミッキー先生もアメーシャの言葉を聞いて「そんな結界をどうにか出来るわけがない」って表情で俺を見てくる。
しかし、カリーナさんだけは苦笑いだ。俺が空間魔法よりも上位の魔法を持っていることを知っているからだな。そしてその空間魔法をどうにか出来るということも分かっているからこその苦笑いだ。
「いいから!もう隠すのも面倒になってし、話すつもりもないけど隠すのもやめる」
「「「え?」」」
そして俺は目の前に手をかざす。
ふむふむ。確かに規模は凄いな。ある地点を中心に首都がすっぽり覆えるくらいまでの結界を張っている。
「でも、これくらいならどうにでもなるな」
流石に本来の使い手である時空龍のクロノよりは上手く出来ないけど、それでもこれくらいなら俺でも簡単に突破出来る。流石に結界を破壊するのは止めておくけどな。可哀想だし。
ハイエルフ全員が嫌な奴らだったら話は別だけどな。
「そんなわけでホイッと」
俺は何もないところを掴み、引っ張る動作をする。
「え?」
「「ええっ⁉」」
最初にアメーシャが、そして樹里とミッキー先生が気付き、驚く。
何故なら俺の引っ張った手の先から目の前がまるで破られたかのような形で景色が違っていたからだ。
簡単に言うなら写真の真ん中だけ破って実際の景色が破った部分から見えている。そんな状態になっていたからだ。
「さあ。行こうか」
俺がそんな三人を尻目にカリーナさんと一緒にその破れた空間の中に入っていった。
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