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第285掌 王子への頼み事 その8



「aaA・・・」


 消え入りそうな声でこちらに手を伸ばしてくるノーライフクイーン。


「へぇ。そういうことか」


 俺は声だけでなく、今にも消えそうなノーライフクイーンを見ながら納得した。


「タカキさん!」


「おう。さっきの助言、助かったよ」


「そんな・・・私は全然。ただ新しい武器をいつ使うのかな~って思ってただけですから。それより、これって・・・」


「ああ。カリーナさんも分かるか」


「これだけ分かりやすかったら私でも分かります」


 そうして向けた視線の先にはノーライフクイーンだったもの。


「これって集合体だったんですね」


「ああ。核は本物だから偽物のノーライフクイーンだったってわけじゃないけどな」


 俺達の目の前には無数の霊が天に昇るようにして消えて行っている。


 つまりは、自分の体を持ったノーライフクイーンというわけではなく、怨霊である魂を大量に取り込むことで実体化した代物だったわけだ。勿論、いくらノーライフクイーンの核があろうとそんな無茶苦茶な方法では復活出来ない。それでも実現させたのは、王子の体という依り代があったからだ。


「だから霊が霧散することなくその場に留まり続け、実体を保っていたんですね」


「ああ。予想にはなるんだが、ここにはかなり大量の怨霊がいただろうと思われる。ま、こんだけこき使われて、しかも毎日のようにエルフから蔑まれていたらただの霊じゃなくて怨霊になるのも分かるけどな」


「私もここにずっといるのは嫌ですね」


 カリーナさんが言うんだから相当なんだとよく分かる。


「それはそれとして、カリーナさん。四人をそろそろ回収しないと」


「あっ!そうですね!」


「俺はここで王子を見てるから」


「はい!すぐに連れて来ますね!」


「ああ」


 そしてカリーナさんはそのまま走ってその場を離れて行った。


「さてと」


 俺は回復魔法を使って王子の傷をある程度治していく。


「これで少し時間を置けば起きるだろう。それより、今回のは・・・」


 あの王子がここまでの大惨事を起こすほどの度胸があるとは思えない。こんな真正面から大惨事を起こす度胸があるならサーラ姫とカレン姫にコソコソ暗殺者を雇って人攫いとかしないだろう。これは王子をそそのかした奴がいると見て間違いないだろう。それが誰かは分からないが。


「とにかく。一回地上に戻るか。ここにいたら面倒なことに巻き込まれそうな気がする」


 具体的には王子を襲った襲撃者だとか、この騒ぎを起こした犯人だとか。そんな罪を擦り付けられそうに思えて仕方ない。実際には逆なのにな。この騒ぎを解決したのは俺だし。むしろ命の恩人の俺にエルフ共は感謝しなさいって言いたい。言わないけど。


「ししょー!お疲れ様ですー!」


 そんなことを考えていると墓地にサーラ姫が走ってやって来た。


「サーラ姫。他の三人は?」


「私だけ先に走って来ました。ししょーの戦いを遠くからとはいえ、しっかりと見させていただきましたし!」


「興奮気味に捲くし立てるように言わないでくれ。女の子にそういう反応されるとたじろぐ」


「あっ!すみません!でも、ししょーの戦いを観るのは初めてでしたから」


 確かに。俺はサーラ姫とカレン姫の監督役として冒険者ギルドの依頼を受けた時もあくまでも監督役として行動したからな。ある程度はアドバイスしたり気付かれないようにフォローしたりはしたが、俺個人が戦っているところを見せたことはなかったかもしれない。


「今度一緒に依頼でも受けた時に近くで見せてやるさ」


「本当ですかっ⁉」


「ああ。ある程度までは強くなってもらうけどな」


「ししょーが鍛えてくれるならいくらでも頑張ります!」


 と、そんなことを話していると残りの三人を引き連れたカリーナさんが戻って来た。


「ご苦労様」


「はい。それで、どうしますか?」


 カリーナさんに労いの言葉を言うと、すぐにこれからどうするのかという問いが返って来た。


「王子を連れてここから逃げる」


「王子を連れて・・・ですか?」


 サーラ姫が嫌そうな顔をする。


「サーラ姫の嫌な気持ちは理解している。けど、ここで恩を売っておくのは後々交渉を有利に進められる。しらばっくれるなら今度こそ実力で全部ねじ伏せるし」


 流石にここまでの騒ぎを起こしておいてまだ俺達に対して何かしようと思ったり、騒ぎを起こそうとするならもう容赦する必要もないだろう。これが最終。これ以上は許さない。


「さあ。いくぞ」


 俺は魔法を発動させて王子を含める全員の姿を見えなくする。


「タカキ。王子はどうするの?」


 アメーシャが見えない王子を探すような素振りをしながら聞いてくる。


「俺が背負って、もしくは女性陣に任せて移動していて起きたら何するか分からないから危険だし、騒がれそうだからな。だから最初から宙に浮かせている。勿論、王子にだけ防音魔法を使った上でな」


「そう」


 えらくあっさりしているな。そこで俺は今まで心のどこかで疑問にはなっていたが、聞かなくてもいいかとスルーしてきたことを聞く。


「しかし、アメーシャにとっては自分の国の王子だろ?こんな感じで人間の俺達にいいようにされているのを見て何とも思わないのか?」


 明らかにエルフを舐めた発言とかしているしな。


「私は変わり者だからね。自分の種族の王族が何かされているからってどうとも思わないわ」


 本気で言っているようだな。目が本気だ。


「それなら俺から言うことはない」


 アメーシャにも秘密ってのがありそうだな。俺が今では所持しているブレスレットのことや、考え方。色々とズレているような気がする。


 俺はその違和感を感じながらもそこまでで思考が続かず、結局は考えを後回しにするのであった。




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