第281掌 王子への頼み事 その4
活動報告にも書きましたが、ブクマが1000件を突破しました!(本当はもっと前に突破してたけど、減るのが怖くて報告出来なかっただけ)
皆さん、ありがとうございます!
「こ、これは一体・・・っ⁉」
自分に起こっていることが理解出来ない様子の王子。
「立つことも出来ないだろ?どうだ?自分よりも地位が低い相手に頭を垂れる気分は?」
ついでに嫌味も言ってやる。
「タカキさん・・・」
「あの・・・。ししょーって神の使徒様なんですよね?だったらこの場の誰よりも偉いんじゃ・・・」
「サーラ姫、しー!私もさっき思っちゃいましたけど」
なんてことを後ろでコソコソと話しているカリーナさんとサーラ姫。君達、小声だから他の人には聞かれていないけど、気をつけてくれよ。
「貴様ごとき下等種族にっ!」
悔しそうに俺を睨んでくる王子。
「ししょーの種族って人間じゃないですよね?」
「はい。この前見せてもらったんですけど、普通に神の使徒っていう種族になっていました」
「これって比較したらどちらが下等種族になるんですかね?」
「それは言わぬが花ですよ」
だからそういうこと言うのやめなさい。聞こえてないからいいものの、他の誰かに聞こえただけで大惨事ですよ?
「それじゃいつまでもこのままって訳にはいかないし、終わらせようか」
俺は水魔法を発動。魔法って言っても単純なものだ。ただ火竜達に上から大量の水を落とし、体をずぶ濡れにしただけ。ただ魔力を水に変換しただけとも言える。ちなみに王子には水を掛けていない。っていうか、これからする魔法を直撃させたら普通に死んじゃうし。
「ずどん」
俺は風雷魔法で雷を火竜達に落とす。
『『『『『GUGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAA?!?!???!!』』』』』
壮絶な断末魔の叫びを上げる火竜達。そして叫び声が止む頃には全て絶命していた。
「はい。これで勝利」
「ば、馬鹿な・・・。最強と言われる竜種だぞ?どうしてこんなに簡単に負ける?こいつが強かったから?そんなわけない!火竜に勝てるヒューマンがいるわけがない!じゃあ、どうして負けた?そうだ。この竜達が弱かったからだ!情けない!せっかく上位種の俺に使われる名誉を得たというのに。こんなに無様に負けるなど」
ブツブツとそんなことを言い出す王子。どうやら精神が自己防衛を行っているらしい。しかし、自身を守るためにとはいえ、内容が酷い。酷いというか、クズだな。
「なら、火竜よりも上位種というお前もさっきと同じものを喰らってみるか?」
俺は王子の目の前に小さな雷を落とす。
「ひぃっ⁉」
全く。どっちが無様なんだか。
「今は話せる状態じゃないみたいだし、一旦俺達は帰る。けど、勝敗は決したんだ。これ以上ふざけたマネは許さないぞ」
聞いているかは分からないが、言うだけ言っておく。言っておかないと正当防衛が成立しないからな。この世界にしっかりとした正当防衛というものがあるのかは甚だ疑問だけどな。
「皆、戻るぞ」
俺は五人を連れて王城を出た。
宿への帰り道に樹里が聞いてきた。
「あれだけの数のドラゴン相手に簡単に勝っちゃうなんて、どういうことなの?」
「ん?まあ、それだけ俺が強いってことで納得しておいてくれ」
「答えになってないんだけど?」
「答えは仲間しか知らないことだからな。他の奴に教えるつもりはない」
「でも、サーラ姫様は知ってるっぽかったですよね?」
樹里との会話にミッキー先生が入って来た。
「それは俺の弟子だから」
本当は協力者だからだけど。それ言ったら何の協力者?ってことになるから言わない。
「まあ、言いたくないならいいわ。でも、いつか教えてよ?」
「いつか・・・な」
少なくとも今ではない。
「でも、あの状態の王子、弱々しかったわよね。惜しいことしたかも?」
「え?アレのこと、気になるの?」
アメーシャが心底嫌そうな顔をする。
「ち、違うわよ!霊薬の件、頼めばよかったなって思って」
「あー。確かに」
樹里の言葉に納得するアメーシャ。
「ま、いいんじゃない?それも含めて明日にでもタカキが何とかしてくれるでしょ?」
最終的には俺に全部投げるんですね。
「とにかく。今日はまだ時間余ってるし、変装したら観光でもしようか」
「タカキさんと一緒なら・・・」
「私もししょーと一緒がいいです!」
「皆には悪いけど、賛成!お土産用意しておかなくちゃ」
「いいですね!」
「私的にはタカキにはあんまり動き回って欲しくないんだけど・・・」
全員賛成っぽいな。あ、アメーシャの意見は総スルーです。
よし!観光開始だ!
・・・
「くそっ!くそぉ‼」
王城の敷地内のどこか。薄暗く、窓もない。そんな場所に王子は一人でいた。
「こうなったら、アレを・・・」
「面白いことを考えているな」
「!」
王子は驚いて振り返る。一人しかいないはずの場所に他の誰かの声がしたのだ。驚きもするだろう。
「この声は・・・まさか!」
「うむ。声だけで分かるとは大分に信心深いようで何よりだ」
「気付かないわけがありません!あなたの天啓で地下世界はここまで発展したのですから!」
「ふっ。知識は我が眷属の者からの借り物だがな」
「教えて頂いた知識の数々は素晴らしいものばかりでした!いずれ、この国が世界で最も栄えた国になること間違いないでしょう!」
「ああ。それは何よりだ。それで、話は戻るが」
「はい。私には是が非にでも殺したい相手が出来ました。封印を解こうと思いまして」
「ハハッ!いいな!よし!この俺が補助やろう!存分にやるといい」
「本当ですか⁉」
「ああ。ただし、やるからには全力でな」
「勿論、心得ています!」
タカキがのんびりと観光している間、そんな会話が繰り広げられていた。
そして、王子は準備に取り掛かるのだった。
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